二十話 鉈戟
二十話 鉈戟
フアンは投げた刀剣を回収すると、ナナミのところへ戻った。
「……生きていましたね」
「あぁ、鼓動が聞こえておったしな。じゃが、妾より先にお主が動くとは」
「負傷されていますし」
「なぜ妾を信じられた?そればっかりは疑問じゃ」
ユンカースは、黒頭巾を見つめる。
「貴公、フアン殿であったか……」
「お久しぶりです、ユンカースさん」
「かの行動隊の一員まで……よほどこの国は窮地に追いやられているようだな。いや、追い込んだのも我々イェレミアス人か」
「すみません、戦いたくはないのですが」
ユンカースは、長斧を振り回し、己を鼓舞するように、雄叫びを上げる。
「同感だ。だがこれも仕事であるなら、やらねばならん」
「そうですか」
「兵士とは、その時代に、真っ先に礎となるものだ。その性を、私も果たそう」
「……では、いきます!」
ユンカースは指笛でエッケハルトを操作し、フアンへ向かわせた。ナナミは傷口のある腹を握り拳で叩き、立ち上がる。
「妾を、忘れるでないぞ!」
ナナミがユンカースに突撃していった。フアンは低い姿勢から引きぎみで、腰を据えて半身で交わし、突撃してくるエッケハルトの側面を取った。
そのまま回転して斬り込むが、エッケハルトの後ろ足に弾かれる。
前足の数度の攻撃を剣で受け流しながら、地面に落とした刀剣を、足踏みの勢いだけで宙に浮かせた。手に取り二刀流に、下段と正面に構える。
エッケハルトの足払いを真正面から、正面に構えた鞘で受け流し、続く刀での打ち払いで深く切りつけた。怯んだエッケハルトのその傷口に、鞘を突き刺すと、飛び蹴りで深く食い込ませる。
それを土台に跳躍したフアンは、一挙にもう一本の刀剣を振り降ろす。エッケハルトは背骨と、側面の腹に大きな切き傷ができ、大量に出血し始める。金切り声を上げて、後退するエッケハルトを庇うように、ユンカースはフアンを見る。フアンはエッケハルトから抜け落ちた血まみれの刀剣を手に槍に変形、構える。
「ベストロよりは、弱いです」
「前線帰りは、違うということか……」
ユンカースは指笛を低い音で鳴らす。エッケハルトがユンカースを見た。もう一度指笛が鳴らされ、エッケハルトは後退を開始する。
(そうだ、エッケハルト。むざむざ、ここで死ぬ必要もない)
蹄の音をまばらに、エッケハルトは下がっていった。遠吠えと共に、ユンカースの周りに狼が集まる。フォッケ・ヴォルフはそれを横目に、自身の眼前に並ぶ狼と、敵を見た。
「……その剣、ヘンリックの」
「使えるのに違和感でも?」
威嚇するように、掠れさせた声でフォッケ・ヴォルフは叫ぶ。
狼は対になって四方を囲み、時間差で一斉に飛びかかる。イグナーツ一匹ずつ、飛んできた所を腹部へ、しゃがみこむようのして貫き、いくらか絶命させた。
一匹の狼が足元へ噛みつくと、フォッケ・ヴォルフが距離を詰めて、鋭い爪で首を引っ掻こうとする。
剣でそれを弾いたイグナーツは、逆袈裟に振り上げてまず殺し、フォッケ・ヴォルフが蹴りを入れようとそたところに上段から振り落とす。鉄の響く音と共に、剣は弾かれる。体勢が崩れたところに、狼が腹部に噛みついた。えぐるようにするそれをすぐに切り払う。出血は少ない。
(地道に削ってくる。そして、やつの服の固さだ。鎖で鎧を編んでいるって話だったか?)
体を回して、腕部で頭部を打たれ、瓦礫の上にイグナーツは転倒した。
(重い……なんだコイツの動き)
イグナーツは、フォッケ・ヴォルフが銃弾を防いだときの動きを思い出した。
(袖の中に、盾か鈍器でも仕込んでるかもしれねぇ。編み目を抜ける攻撃をはそれで防ぐ……)
フォッケ・ヴォルフの押し潰すような動きに対して、イグナーツは鞘の銃で攻撃、腕を固めて防がれた。
(弾丸で牽制はできるが)
立て直しながら、矢を放った。
(矢は意味ないな……)
弩を剣に変形させて、二刀流で攻撃する。フォッケ・ヴォルフの前身を4本の剣のようにして扱う動きは、全体を通して動きが見えにくい。イグナーツは息切れを始める。ヘンリックの倒れている位置に眼をやった。
(なんとか、突破しねぇと……そろそろ狼のが来る!くっそ、ヘンリック。気絶してんじゃねぇよなぁったく!)
フォッケ・ヴォルフは動きをやめて、イグナーツの視線の先にある瓦礫を持ち上げる。
「おい!」
イグナーツの構えに対して、狼が2頭群がる。フォッケ・ヴォルフは、喉元に少々の切り傷があるヘンリックを見つけた。胸ぐらを掴んで引っ張りあげると、イグナーツを見る。
「これはこれは……生きておいででしたか。真の弱者よ」
「ヘンリックをどうする気だ」
「無論、反逆罪で殺します」
「なぜだ!コイツは関係ない!」
「何者でもないにも関わらず、何も捨てた訳でもない。お前たちは、生まれ持った枷もなしに、ただ先代からの推薦で地位を維持する、いわば寄生虫です」
「人の価値はそれぞれだ。上に気に入られて役職を与えられることだって、力を持つものだろ」
「ですが、ことカイゼリヒ・メッツガー・トルッペンでは別です。ここは我々弱者にとっての最後の楽園。凡人など汚点でしかない、他の者を入れるべきだ、あの娘のような……」
「お前……俺たちが嫌いか」
「嫌いさ、枷を持たないクセして、一丁前に悲しみ、涙する。本当の悲しみを知らない、本当の涙を知らない。それは、我々には必要ない」
「なら、解雇すれば良かったじゃねぇか。俺が隊長だったから俺とコイツがいられたようなものだ。なぜ降ろさなかった?」
「……?」
「ドルニエとウーフー、ユンカースさんの士気の為か」
「えぇ、あの方々は彼を家族のように大切にしていました。彼の口からでる、現体勢への批判や、言葉を紡いだ書籍のような数々……繋ぎ止めるという点において、彼は必要」
「……もう必要はねぇってか」
「家族は傷です。繋がりは傷です。人間としての強度が下がります」
「……それで、お前の家族のは誰になる。お前のいう小さな自由ってのは、ナハトイェーガーの中で受け入れられて、迫害を受けない生活を送ることじゃないのか!?」
「……」
「答えろ」
「……言葉にできないですね。結局私は何を思っているのでしょうか」
「……」
フアンとナナミは耳を澄ませ、状況を把握する。
「フアン、援護してやれ」
「算段は?」
ナナミは鞘を見る。日々の割れた鞘から、竹の屑が落ちた。
「ある」
「……分かりました」
ナナミの攻撃によりユンカースは対応を求められ、そしてフアンが側面を抜けた。フォッケ・ヴォルフに接近し、イグナーツと挟み込む。
遠吠えで力みながら、ヘンリックの首を閉めて呼吸を封じるのに対して、フアンとイグナーツは距離を埋めようと腰を溜め走り出す。
狼がフォッケ・ヴォルフの周囲を取り囲み、幾つかは突撃を開始した。ヨダレを吐き出しながら、赤い歯肉を見せるそれらはフアンの腕と足に噛みつく。
フアンはそれらに対して、下の転がる木屑や砂利を投げ姿勢を崩し、一つ首を落とした。それを刀剣で突き刺し、槍に変形、大声を上げながら狼たちを威嚇し牽制、そのまま突撃を再開する。
フアンの相手に狼が削がれる。イグナーツは噛まれながらも振り払って装填を完了し、照準を定める。
あまりに簡素な、突起だけの照準器の先にいるフォッケ・ヴォルフ。構え、引き金を引き、撃鉄が落下し硝石が火花を散らそうとするとき、撃鉄ごと狼が食らいつき、火薬に点火するのを防いだ。火薬に点火できず、銃弾はただ時を待つほかなかった。
(コイツら、銃を知ってやがるのかよ!!!)
狼を振り払い、唾液で濡れた火薬の上から炸薬を再装填。周囲の狼が再び噛みつこうとする。
(くっそ……!!)
イグナーツは袋から火薬を周囲に散布し、荒く導線のように引いて、その箇所で再び引き金を引く。四方が狼をごと爆発し狼の毛が燃え盛った。
慌てふためく狼たちは隊列をみだし、また幾匹かはフアンの方に走り出す。盛るのが狼たちを伝い、フアンはその隙に、刺していた狼の頭部を、槍を回しながらフォッケ・ヴォルフに投げる。
牽制を気にもとめず首を締めるフォッケ・ヴォルフを、照準器が捉えた。イグナーツは銃の引き金を引き、火花が散った。音を聞いたフォッケ・ヴォルフは力を抜き、音の方向にヘンリックを向ける。
「愚かな、人質を傷付けるとは……ん?」
音は空に響き渡るのみであった。
「アホ抜かせ、そんな早く装填できるかよ」
イグナーツは狼を払うための火薬の炸裂で引き金を引いたため、あらぬ方向に銃弾を発射していた。
(狼を払うのに、さっき一発使っちまったからな。その早さで装填できるやつは、行動隊にでもいってら)
フアンが側面から腕を打ち払い、ヘンリックを救出。そのままイグナーツの側に置いた。
「……行動隊、フアン・ランボー様。貴方も、我々に入るべきだった。貴方は何を背負っていますか?」
「命です」
「違います。貴方のその服装、肌の病ですか?仮面は……あるいは奇形に生まれましたか?」
「いいえ、僕はただ戦うのみなんです。産まだとか育ちだとか、そういうんじゃないんです。僕は……いいえ、貴方に話す必要はありません」
「残念です」
遠吠えをし、一気に隊列を整えた。空を切り裂くような声量で遠吠えをし、各々の狼も遠吠えをした。一挙に狼の集団は向かい、しかし急に方向を変えてフアンに全員が突撃した。フアンは瓦礫を飛び越えくぐり抜ける。イグナーツは、側に転がっている狼の死体を見る。
(やってみるか)
フォッケ・ヴォルフは剣の音を聞いて、一瞬イグナーツを見る。剣を弩に変形しているのを見る。
(矢を撃つ気か……錯乱したか?それで射抜けないのは分かっているはず)
フアンとフォッケ・ヴォルフが視線を合わせた。
(今はこれに集中する)
フアンはイグナーツを見ると、狼の死体に手を伸ばし、逆手に剣を持っていた。フアンは視線を集めるように、フォッケ・ヴォルフに接近した。
えぐられる肉の音、カリカリという木の音。弾薬は装填され、銃と弩が前方に構えられた。フォッケ・ヴォルフはイグナーツに向く。
「視線誘導の動きは分かっています」
銃口の向きに合わせ腕を組んで低い姿勢で防御。腕の中心に弾丸が命中し、火花が散る。
(……!?)
フォッケ・ヴォルフの肩にが命中していた。
(矢が、鎖の間を……なぜ!?)
イグナーツの手元には、狼の牙があった。
「矢じりを……狼の牙に差し替えたか!?」
フアンが後ろから、剣の一本を全力で叩きつけ、矢での衝撃と共に、姿勢が崩れ転倒した。二刀を槍に変形し、できる限り上に飛び上がり、体重を乗せて鎖の鎧ごと、腹部を貫いた。
―他方―
ユンカースとナナミは、互いに力を抜いて、視線を合わせていた。
「こちらも時間差がないのでな、手短に、一撃でいかせてもらう」
深く呼吸をするとナナミはひび割れた鞘に剣を当てる。一度背を向けるほどに腕を伸ばし、体を回転させながら、腰に差すように納刀した。
「抜刀術……いや、仕掛けがあるな?サムライ」
「来い、騎士よ」
ユンカースは、傷を一切気にせず、長斧を構える。上向きに下段で、覆い被さるように構えた、ナナミは腰から、刀幅を見せつけるように腰を曲げ、中腰で、半身のように構える。心のなかで、唱えた。
(我流戦技、一番)
ユンカースは、ナナミに向かって大きく踏み込み、突撃した。向かってくる大男に対して、その長斧の回しながらの振り下ろしが襲い掛かる。半身でそれを交わし、懐に潜り込んで、担ぐように抜刀していない長刀を構える。ナナミは一瞬、過去を思い出した。
深緑のなか、水の滴る草木に、麻の服を着た老人と、髪で目が隠れた少女がいる。抜き身で担ぐように持たれた日輪の片刃の剣が、血を滴らせている。
「おじじや、なぜ我らは抜き身で刀を持つのじゃ?」
「いつ何時、敵を殺せるか分からんからの。抜刀の一瞬で、剣なら二度、槍なら三度は攻撃ができよう。火縄銃に装填もでき、煙幕も使える。抜き身とは攻防一体なんじゃ」
「錆び付いてしまうぞ」
「知らぬわ。武具とはその一戦さえ生き残れればそれで良い。たまに己の使う物に愛を注ぐ阿呆もおるがの。刀をしまいこんだのは、殺してくれと言っておるようなものなんじゃ。良いか?」
「……じゃあな、おじじや」
「どうした」
「そのまま抜刀すれば良いんじゃないか?こう、バチンと相手に当てて……」
「はっはっはっ、面白いことを言うのぉ。今日は蛸でも買うてくか」
「わはぁ、では酢も買うてくれ!!」
「お主、通じゃな」
ナナミは、縦に勢いよく振り下ろし、鞘ごとユンカースに叩きつけた。
鞘に入ったヒビが全体に渡り、鞘が破裂。刀剣は抜き身に様変わりし、刀剣に掘られた名前が露になった。
そのまま振り下ろし続け、鎧ごと胴体を斜めに切り裂き、すり抜け様にもう一度、横に凪払い、胸を頂点に十字にユンカースは出血した。ナナミは背筋を伸ばす少し内股で、血を振るって何もない腰に納刀した。
(鞘挫十文佳月)
ナナミは心にそう刻み、呼吸を整えた。
「お主、何を患った?」
「……体だ、サムライ。体が大きすぎて、人から嫌われた。ベストロ、ベストリアン、何だって言われた」
「そんなことでか?」
「サムライ、どう思う?世界は、私の死で、少しは涙は減るか?」
「お先が見えるほど、妾は賢くはない。じゃが……涙を減らすのは、息する者の定めじゃ。今宵眠るお主の責務ではない」
「……そうか」
「貴公は戦いをなんと考える?」
「……何ごとかを為すための道具じゃ。そこに意味があるとすれば、あるいは言の葉と大差ない」
「戦争は政とは、よく言ったものだ……」
血を吐いて、呼吸に瑞々しさが表れる。
「肺に血か……私はもう、長くはないな。」
「フアンの方も終わったそうじゃな」
「……」
「あとな、ドルニエとヘンリックは生きておるぞ」
「そうか……それは良かった」
「お主、戦いに向いておらんな」
「だろうな。私は……木でも切って生きるべきだった」
「木でなく、首を切る仕事だったな」
「丸太ほど硬くはない。だが……切りたくはなかった」
「ナハトイェーガーになぜ入ったんじゃ」
「ここしかなかったと言える。迫害、侮蔑、差別、その眼差しが聖典教の傘下のなかでない場所は少ない」
「そうか、なるほど。ナハトイェーガー、あるいは妾のいた夜修羅と同じかもしれんな。追い込まれて、すり寄って、結果できたような……」
ナナミは、フアンの方向を見る。フォッケ・ヴォルフから槍を引き抜き、しゃがみこんだ。
「ナハトイェーガー……諜報活動をしていたとは、本当ですか?」
「だとして、貴方が知ってどうすると?」
「確認したかっただけです。それから、市民を扇動したというのも……」
「私の父の世代に起きた出来事だ……カイゼリヒ・メッツガー・トルッペンに、民衆を扇動し、ベストリアンの虐殺を促すよう指示が下ったらしい。エトワール城の悲劇は、人間による圧政でなく、ベストリアンによる虐殺として報道され、恐怖に踊らされた民衆は、当時まだ奴隷としての身分があったベストリアンたちを殺しまわった。私の父の家宅にもその狂った人間が押し寄せる。そこで私の父は、他のベストリアンの位置を探すから、俺を殺すのは後で良いんじゃないかと持ちかけた。犬型の嗅覚の有用性を知っていた父は、同じく追い込む側としての才能のある種から、つまり犬や狼の型を優先に徐々に壊滅させ、同業者が出るのを防ぎながら、そうして生き残ったそうだ」
「指示が出た?」
「2度の指示が出た。まず一に、扇動。もう一つは、虐殺の停止。もうかなり遅かったのですがね」
「……」
「父はその2度目の指示により生きながらえた。当時はカイゼリヒ・メッツガー・トルッペンも虐殺に参加していた。そこで、父は取り入ったのだ。ここに……」
「……貴方の目的は、少し分かる気がします」
「何でしょう……ただ、ただ」
「守りたかったんじゃないですかね、ここを……世界からの疎外感を受けない、その環境を」
「そうか……そうか……私がメッサーシュミットに対して向けていた感情は、そういうことだったのか」
「自分たちのような、何か枷を産まれもっている人々で、あなたはナハトイェーガーを固めたかったんじゃないですか?」
「……かも、しれま、せん」
「メッサーシュミットの二人は、人間で、いうなればただ弱者であるだけだった。嫉妬も、あったと思います」
「貴方は、言葉を使うの、が……上手ですね」
「よく言われます」
「ユンカースさんも、ウーフーだって、全員があの人たちを、大切にしていた。我らでなくとも、あの二人は優しくされる、愛される……だというのに。そうか、そういうことだったのか。私は……」
「自分と同じ境遇を持つ人間に、特別に優しくしたかった……二人は他でも生きていけると感じ、小さな自由の間口を埋めていたことが、不快だった……ということかも、しれませんね」
「……生き、るというのは、大変で、す」
「知ってます」
「貴方は、枷はない、のですか?」
「……あります」
「……頑張れ、などとは、いいません。ですが、その心の空白は、誰も埋めてはくれない。孤独とは、独特なのですから……」
息を引き取るフォッケ・ヴォルフの目を閉じるフアン。満月が血を照らし、ユンカースはしゃがみこむ姿勢で首を下に、また血を吐いて、フォッケ・ヴォルフの声を聞いていた。
「あの阿呆は、そんなことを……背負い込みすぎたな」
「最後に、皇帝のありか、教えてくれぬか」
ユンカースは、手持ちの地図を投げる。
「……ここだ、だが殺す必要もない」
「ここまで国を傾けた本人じゃろ」
「きっと驚くぞ……」
ユンカースは。倒れ込み。息を引き取った。風に少しは煽られ、鉄の匂いが月夜に飛ぶ。
ナナミは、腰を抜かした残党に刀剣を向ける。
「さぁ、新時代の始まりじゃな……そういえば」
ナナミは耳を澄ます。
「楽器の一つも音がせん……音楽祭はどうなっておる?」




