表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第四章 傾城帝政 二幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/190

十一話 作戦情報

十一話 作戦情報


イグナーツ、フアン、ナナミはユリウスと、隠し階段を下りた場所で作戦を練っていた。


「ヴァルトは僕が強引に寝かせておるので、お気になさらず」


イグナーツはほっとした様子になった。


「そっか、そいつぁありがたい。なんか寝てないってきいてたからよ。で、フアンくん……君は、結局戦えるのか?」

「……はい」


イグナーツが机に資料を置いていく。


「じゃあ、さっそくだが情報だ。ユリウスさんの調査で、当日存在する脅威が判明した。今年は特に厳重な体制で、しかも奴らが配置されるらしい」

「もったいぶるでない」

「カイゼリヒ・メッツガー・トルッペンだ」

「……あの長いの名前のか」

「またの名を、ナハトイェーガー」

「そっちの方が、まだマシかもな」

「もっと略して、ナハト」

「おぉ、良いではないか」

「当日は、ナハトも護衛に参加する情報が出てきた。ナハトは周辺区域を警戒する任務と、要人警護が基本だったが、シレーヌ討伐で外周の警戒度を下げたんだろうな」

「シレーヌ?」

「西陸の災害、デボンダーデを引き起こすとされていた現況だ」


ユリウスが、さらに資料を机に置いた。


「あと、これね。まぁ、とりあえず事前情報はこんだけ。説明はイグナーツから」


イグナーツは、ユリウスを見る。ユリウスは首を横に振った。


「そうだな、俺は隊長だ。こういうときに示しをつけないと」

「そういうこっと」

「まずナハトは合計……五人で構成された部隊だ。部隊長、ユンカース。副隊長、フォッケ・ヴォルフ。隊員のドルニエ、ウーフー、メッサーシュミット」


資料が五部、机に置かれる。フアンはユンカースの容貌が浮かんだ。


「ユンカース……あの大きな?」

「ユンカースは、おそらく西陸でもっとも大きな男だ。使うのは超大型の槍と大口径の銃、片手づつで使う。庭園を警備している予定だ。軍馬のエッケハルトに乗馬しながらの攻撃が主流だと思ってくれ。次、フォッケ・ヴォルフ。オオカミの真似が上手く、数匹のオオカミを従えている。爪みたいに刀剣を扱う。ウーフー、射撃担当、遠距離から射撃、建物のなかで遭遇したら終わりだと思え、コイツは弾丸を壁に跳弾させて狙撃してくる。メッサーシュミット……銃を鞘に付けた剣を使ってくる。順当に剣がうまいが、爪のような武器を隠し持ってる。フォッケ・ウルフがいる以上は発見される覚悟をしとけ。オオカミの嗅覚は凄まじい」


フアンは、フォッケ・ウルフが気になった。


「オオカミの、真似?」

「あおーんって感じだ。言語でもあるのか、精度の高い指示を出す」


ユリウスはフアンの肩を叩いた。


「言いたいことは分かるよ、でも事実さ」

「……了解です」


ナナミは、まず資料で3つを手に取った。


「発見し次第殺しておくべきは、この3名じゃな。ドルニエ、ウーフー、メッサーシュミット」

「そうなんですか?」

「質はもっともじゃが、基本的に戦いは数じゃ。やれそうな奴を先に倒す方が良い。孤立を狙いたいが……どうにかならんかのぉ。それに、距離を開けて戦えるのとすばしっこいの、こういう戦闘の磐石さを担うのを先に仕留められれば、敵の強者どもの得手を押し付けられて、一瞬で壊滅することもない」

「当日までにさらに情報を集めておく。コイツらにだって、家の一つや二つはあるものだ」


フアンが手を上げる。


「事前に仕留めるということですか?危険だと思います」


ユリウスが腕を組んでフアンを見る。


「当日に全員を相手取る可能性だってあるんだ。名のある奴は、仕留めておいたほうが良いんじゃないかな?」

「逆に警戒度を引き上げる結果になるかもしれません。これは勝手な考えなんですが、大事の前に起きる事件って単純に、過度に警戒しちゃいませんか?」

「あぁ~、下手に刺激するよりは、しっかり気を抜いてもらってたほうが良いよってことね。イェレミアスはベストリアンの目撃、まぁ街の有り様と同じくらいみんなが殺し回ったから、極端に低い……逆らうよりも従順に生きてるほうが、金も男女も寄ってくる。憲兵、近衛兵、どの兵士もオルテンシアと比べて極端に弱い……うん、一理あるね」

「ん?その場合当日、城の中は私兵だらけなのでは?貴族なんですから、色々と警戒もするでしょうし」

「まさか。私兵を入れるってことは、この国を信用してないっていう証だよ?どんだけ死ぬのが怖くても、そんなことはしないよ」

「……では、当日警戒するべき敵は」


イグナーツが、見取り図に点を書いていった。ナナミは耳飾りを鳴らす。


「守衛の数は多い。だが少数部隊で散発的に展開してる。兵士の質では勝ってるから、見つかったら各個撃破。影から仕留めておくのが手だ。交代の時間の入れ替わりの瞬間なら、一番効果的に狙えることも考慮だな……一応侵入する時間帯で、交代が一度起こる。ほい、今分かってる限りの当日の敵の配置だ。音楽祭の会場である会館付近はまだ不明だが、俺たちが潜入する場所あたりは調査完了。城内くまなく、当日までに調べ上げる。待ってろよ」

「まるで、お主がやっておるみたいじゃな」

「諜報できなきゃ、革命なんざ夢のまた夢だ」

「まて、我らは食料の箱に入ると言うたな」

「あぁ」

「兵士に供給される糧食に、なんぞ毒でも仕込むのが良いじゃろう。殺傷ではまく、体調不良にする。三日三晩起きっぱなしの生肉とかの。虫の寄った魚でも良い」

ユリウスが手を上げた。

「それ、全部僕に任せてもらっていいかな?丁度それっぽいの用意してるんだ。明日には結果が出ると思うよ?」

「何をなさるんですか?」

「ちょっと便所を混ませてやろうとね」


ナナミは笑った。


「……ふふ、なるほどそういう手筈か」

「やるだけやってみるさ」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ