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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第四章 傾城帝政 二幕

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九話 不安・乱暴

九話 不安・乱暴


「……また、屋根上ですか?」

「体感が鍛わるじゃろう?」

「何か、話でも?」

「いや、ここ数日お主が妾に何を教わっておるか。ちょいと確認せねばなと」

「??」

「教えたことを覚えて、お主はどうなっていく」

「……」

「着実に、人殺しの道へ向かっておるということじゃ。それで、お主は良いのか?」

「はい、これは必要なことです」

「お主がそうである必要はないのが事実じゃ、妾がいれば正味、戦力は足る」

「適任がいますか?」

「……いや、お主は筋が良い。あの羽根の生えたわっぱと剣を交えたとき、妾の危惧するところをお主は見抜き、そうして剣の根元を狙って打ち払った」

「だったら」

「なぜ、求める?」

「求める?」

「そう、求めておる、やはり、無自覚じゃと思うとったよ。友を守るために殺しをするとそして、なぜ求めるのじゃ?何か、心あたりはないか?」

「どうでしょう、そんな覚えはないですけど」

「殺めた数にはまだ少ない。まだ、戻れるぞ」

「命の価値に差異はないと思います。僕が殺した人たちにだって、笑顔だったときがあったんです……戻れは、しません」

「命の価値に差異はある。価値とは、他者の集団によって採点される、人物の過去の点数じゃ」

「命とはなんですか」

「ただの状態じゃ、それ自体に価値などない」

「生き物にとって、生きているか死んでいるかは重要では?」

「それらしいことをツラツラと……まぁ良い。お主がそれで良いならな」

「そう、ですか」


ナナミは、鈴を鳴らして足場を確認する。


「では、今日も今日とてやるとしよう」

「……お願いします」


ナナミはフアンの視界から外れる。


(……もう、それは見切っていますよ!)

フアンは下段から来る蹴りを拳を重ねて防ぐ。


「おしえてもおらんのに見切るか……才能はあるんじゃよなぁ」


上向きに少し浮きながらも、重ねたのを解除するように拳を振り抜くと同時に二刀を袖から取り出した。二刀は木製であった。足裏を屋根に着け、腰を落として二刀で凪払うように攻撃する。ナナミは竹棒で執拗に手首や間接を狙う。


「そうじゃ、足場が悪いときは腰を落として重心を低く、体幹を崩されぬようにしろ。踏み外せば終わりじゃ、故に凪ぐか突いてやれ!」


フアンは片手の木刀を片付けると、突き出された竹棒を見切って握りしめ引っ張る。ナナミの手元が引っ張られ、フアンはそこに中段で蹴りを入れ、ナナミは衝撃で竹棒を手放す。そのままフアンは接近すると、ナナミに飛びかかって押し倒し、喉元に剣を向ける。ナナミは竹棒をいまだ、片手で握っていた。


(そこですぐに喉元に突き立てい、わざわざやられてやったというに……まったく、筋はあるが、いま一歩じゃな。ここに来て、訓練で、ためらいとは)


ナナミは倒れ込むときに腕に溜めを作っており、そのまま勢い付くフアンの動きに合わせて、さし違えるように喉を突いた。


(……うむ)


二度目に喉を狙ったそこをフアンは上体を起こして避けると、みぞおちを拳で抉る。


フアンは完全に体勢を崩され、ナナミは体をフアンの拘束から脱すると、立ち上がろうとするフアンを竹棒で凪ぐ。

フアンは飛び上がりそれを避けると、すぐ下向かってナナミが突っ込み、下段から上に向かって飛び蹴りを食らわした。フアンの身体が回転しながら宙に浮かぶ。竹棒を使って高く飛ぶナナミは、そのままフアンを屋根の上から弾き飛ばし、落下するのを眺めた。


(さぁ、どうする?体勢の整っていない中で落下……骨が折れれば再起は難しい。まぁあの様子では、むしろその方が良いかも)


フアンは腹筋で身体を動かし足を先に着地させると、足を曲げるようにして衝撃を吸収しながら、後回を三度繰り返し、無傷で着地した。


(……ほぉ)

ナナミは鈴を鳴らし、竹棒を握り締めると屋根から飛び降りる。フアンの息遣いは荒かった。

ナナミは竹棒で地面を突き、手と脇などで力を込め身体の速度を落としながら着地した。

「ためらうな、一切を。例え仲間であろうとも、獲るときは、獲るのだ」

「……すみません」

「はーでんげるぎあに向かったときは、確かな緊張感があった。しかしどうしたものか……まさか、妾が女人だからか?」

「……」

「はっ、お主、敵が女人であることも普通にあろう。それで殺める役は務まらんぞ」

「……」

「じゃが着地は見事じゃった。良い良い」

「……」

「聞いておるかフアン」

「はいっ!」

「返事と立ち回りが大きいんじゃ、もっと小さくせんか」

「なるほど……」

「それからさっきの槍を掴むとき、刀剣を片付けるまでもなく掴み取れ。逆手にして刃が邪魔にならんようにするだけでも良い。そして剣は一撃に頼るな、小さく、刻む、宜しいな?」

「はい……」

「それから、あのはっ倒すやつな。もっとがっしり行かんか、こう……もうっとグッと」

「……グイっ?」

「どうせ殺す命じゃ、一回くらい抱いてやる気持ちでいかんか、ためらうな」

「……」

「返事」

「……はい」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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