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五話 陸を喰らう筋骨

第5話 陸を喰らう筋骨


壁上では、10人ばかりの者らが、極めて太い縄を持ち待機している。やたら呼吸が浅く荒いが、逆に落ち着いたようで、整っていった。


「開門!!」


その縄を一斉に引っ張り出し、このデボンダーデの中で街の門を開けた。ベヒモスは真っ直ぐ門の先を見ながら進んでくる。巨体を跳ねさせる4足を支える筋肉はやはり毛に覆われている。進み、進み、門前へきた。


「今だ!!」


全員が一斉に力を抜き縄から離れる。門は、それを形成する尖った丸太の先を下の厄介な飛び込みの客に矛先を向けながら降下、背骨あたりに直撃させその重さ分の圧迫を行い、ベヒモスは動きを止められた。


ヴァルトが叫ぶ。


「ノイ、今だ!!」

「うりゃぁぁあ!!」


ノイは人1人分ある長さの大きな筒……大砲にすら見えるものを担ぎ上げ走り出した。手の位置には引き金があり、六角形のそれは両端が空洞に見える。


「カチッとやってぇぇ!!ッドォォンぇぇあああ!!??」


雷が落ちたかのような轟音が響き渡り、ノイは灼熱に包まれるように見えた。煙を発し、筒の前からも後ろからも吹き出る筒を担いだまま、ノイは跳躍で大きく後退した。


「なぁぁにこれぇ!?」


フアンは指示を出しながらも、驚いている。


「……これは、凄いですね!」

「お前は初見じゃないだろ」


壁上では、ハンナらが矢でベストロを抑えつけていた。


「今の音、凄かったな!!」

「何だ今、の武器の音か?大砲か?こりゃあいい!!負けらんえぇぜ!」


音に鼓舞された戦士らは、攻撃を鋭くしていった。


ノイは下がるとすぐ、ヴァルトに筒を渡した。全身がススだらけだ


「ヴァルト、これ、げっほ、何?」


ヴァルトは筒を半分に折り、手際良く火薬を再装填していく。


「要はなんどでも撃ち込める鉄杭の大砲、正確には釘に近いがな。筒の内部で釘が止まる仕組みだから、火薬を入れれば何度でも撃てる」

「何度も……?」

「ベヒモスみたいな奴ぁ、1発じゃ終わらねぇ。何度でも、どれだけでも撃ち込む必要があるんだよ」


大地に響く唸りがつんざいた。開門により自由になったベヒモスが、ひとしきり煙立つ中を闊歩しくぐり抜け、能天から血を垂れ流しながら、眼前のヴァルトらを睨み付ける。


「これで、目標は壁から俺らに切り替わったはずだ。知性があれば、この武器を覚えるはず……壁付近で暴れさせる訳にはいかねぇ、俺らで注意を引いて壁から離して、後は3人でやる……!」

「子供の頃の記憶、残ってますか?」

「どれの話だ?」

「3人伝説」

「あれか」

「最初の物語、決まりましたね!」

「確かにコイツやれりゃ伝説だなぁ!?フアン、ノイ、とにかく一旦っ」


ベヒモスがヴァルトらに突進してきた。


「おっしゃぁ、後ろに逃げろ!うおぉぉお!!」


既に中々距離を取っていたヴァルトらだが、ほんの一瞬でその距離は詰められた。大きな腕で横に薙ぎ払い、ヴァルトらを攻撃した。振り払う圧で砂塵が舞う中、ヴァルトらは各々で回避を行う。


「ノイ、正面から奴の気を引け!フアン、側面から脚を狙う、援護しろ!」


ノイは筒を背中に背負いながら、腰に下げていた戦棍を左手に持った。フアンは袖を振り、2つの剣を両手に持った。


ノイはベヒモスの正面に立つ、睨み付けられた次の飛びかかりを避け右脇の側に移動、腕の1ヶ所を2度殴りつけるが、剛毛と厚い皮膚と筋肉からなる3層の盾によって、降下が見られない様子だ。3度目の打撃とでようやく、その皮膚に多少だけ傷は付けられたが、ベヒモスは腕を振りノイを交代させる。


「いいですよ、ノイ!」

フアンは2つの剣で右側面に回り込み、ノイに意識が向けられているうちに急接近、腰上辺りに登場し、そこの肉を数回切りつけたのち、叩きつけるように2つを振り下ろし骨に衝撃を響かせる。


「フアン、そのまま背中も頼む!」

「分かりました!」


フアンは2つの剣の柄頭を合わせ、捻った。手を離した瞬間に柄はバネのように延びながら1本の長柄になり、2つの剣は、人1人ほどの大きさを持った双頭の槍に変形した。


「行きます!」


腰を曲げ低い姿勢で槍を振り回しながら背骨へ渡り肉を抉っていき、体を捻りながら跳躍、振り回した遠心力と跳躍の自由落下で加算された運動を、背骨に直に叩きつけた穂先は、ただ一点にそこへ伝える。

ベヒモスは叫びながら悶え、フアンを振り落とすが、拍子で体勢を崩した。


ノイとヴァルトが近寄るも、ベヒモスはノイに狙いを定めて、倒れざまに腕を振り牽制した。フアンがそれを見る。


(やっぱり、ノイの筒を警戒している。武器を覚えた、知性があるのは本当だった。ノイが脅威であると、分かっている。でもそのおかげで、ヴァルトから意識が逸れた……)


フアンは叫んだ。


「今ですヴァルト!」


ヴァルトは左足の、倒れて曲がった膝の間接に狙いを定めた。


(丁度良すぎるくらい、良い角度で倒れてくれたなぁおい……靭帯と腱、曲がった間接はスッ立てるときより、物理的にバッチリ刃が入るんだよ……!)


ヴァルトは、左腰に装備した刀剣の柄を握りながら、鞘の火蓋を開け、鞘の引き金を引く。連動するように、引き金の上部……鞘の側面に取り付けられた鋼鉄の輪が回転、その運動により装薬を火打石で点火、発破により放たれる刀剣を握りしめ、しかし運動を抑えることなく流麗に振り抜き、ベヒモスの左膝を貫き、卸すように切断した。


(鍛造回数28試作3番。鋼輪刀【ラファル・ド・ソレイユ】)


赤熱した刀身で、振り抜きを折り返しながら、付近の箇所を数度切りつける。痛みで暴れるベヒモスの身体をヴァルトは避けるが、切断された自らの左足を押し飛ばしヴァルトに飛来した。


「危ない!!」


ノイがヴァルトに突進し、そのまま抱えて大きく翻しながら跳躍、フアンの元に届けた。


「凄いねその武器」


ヴァルトは鞘を中折れさせ、火薬を詰めていく。


「ラファル・ド・ソレイユ(太陽の突風)……まさにその通りですね」

「これ付けたのエミルだ。ご丁寧に鞘なんかに彫りやがって。なんか恥ずかしいぞこれ」


火薬を詰め終わり、納刀する。


一方防壁の上では、少し押され始めた。


「兄さん達が押してる、私達が負ける訳、いかない!」


一頭ずつ確実に仕留めていくが、それでも名付きの壁への到着は防げなかった。

異様な跳躍によって防壁には次々とライラプスがへばり付く。剣に持ちかえ前足を切断などして奮闘するも、ついに一頭、完全に登りきったベストロがいた。ライラプスは付近の戦士を睨み付け標的を絞り、すぐさまその牙を首に突き立て、瞬く間に数人を餌食にした。


「ダメぇ!」


現場に走り込んできたハンナが放った矢がそのライラプスの眼球を抉り、怯んだ隙に付近の全員で滅多刺しにした。壁が揺れる。


「サテュロスが壁を攻撃し始めたわ!!」

「名無しもまだ結構いるぞ!?」

「とにかく名付きから片付けていくぞ!!」

「ここを抜かれてたまるかぁ!」


次々とライラプスが登り続ける中ライラプスが2頭、ハンナに迫る。挟み込むような攻撃を半分は下を滑るように回避し、手に持った数本の矢を継ぎ早く撃ち出し、残る一本を握り締め飛び込み、突き刺して片方を絶命させる。

もう一頭を仕留めようとした時、再度壁が揺れ、ハンナが体勢を崩した。周囲がそれに対応しようとした所に鳥の名無しが集まってくる。


「まずい、これ私……」


壁が一部崩落し、穴が開いた。ハンナと数人がそれに巻き込まれる。舞い上がる砂塵の中、落下の衝撃で昏倒に近い状態のハンナを、亜人の男が起こそうとする。


「おい、大丈夫か!?おい、しっか」


亜人はサテュロスに、頭部を1飲みされた。力の抜けた、5体引く1のそれが、その内部から勢いよく血を吹き出しながら、ハンナに向かって倒れた。朦朧とした意識で砂塵の中、他の数人も続々と死んでいっているのだと、ハンナは感じた。


ハンナの頭に、思い出が過った。幼いころの、酸いが甘くなった頃の記憶。


「はじめまして、僕はピーター。名前は?ハンナだよね。宜しくね、所で……なんでそんなに距離取るの?」

「やめて……」

「何で……?」

「やめて!!!」

「えっ、あ……ごめん。でも、何でかな……あ、臭い気になるとか?全然そんなことないよ?気になるなら、水浴びる?桶とか用意しようか?」

「はっ……!!はっ……!!」

ハンナが過呼吸になる。ピーターは慌てだす。

ハルトヴィンが、そこにやってきた。

「ハンナ、落ち着くんじゃ」

「おじいさん、ハンナが自分の臭いが気になるみたいなんだ」

「良いから……ほら、下で皆のこと見ててくれんか?」

「えっ、あ、はい!」

ピーターは部屋を出た。

「すまんの、ズケズケと……」

「……」

「あんなことされて、怖かったじゃろう……全く……もう大丈夫じゃ」

「おじいさんも……はっ……はっ……」

「心配するな、ワシをあの大人達とは違う。ピーターもじゃ、優し過ぎるくらいじゃ」

「おじいさんも、あのお兄さんも……」

「違うぞ?」

「私、欲しいの……?」

「違う、お主を怖がらせんようにな」

「怖いよ、怖いよ」

ピーターはハルトヴィンの部屋に入った。書籍の散らばる部屋には、学術の宝箱のよう。ピーターは、何か彼女を元気付ける本を探しにきた。

「絵本か……いやぁでもそんな年じゃない……僕の少しの下……だよなぁたぶん」

ハルトヴィンの机を見ると、一冊の書籍があった。閉じられているからこそありありと分かるそれは、医学書であった。

「こんな凄そうなものまで……いったいおじいさん何者なんだろう……」

ピーターは机の上に報告書のようなものを見る。

1時間もしないうちにピーターは、自らの罪を完全に理解した。血相を変えてピーターは、ハンナがいた部屋に向かった。ハルトヴィンがいまだにハンナの相手をしようとしている。

「ハンナ、ごめん!知らなかったんだ!」

「……」

「えっと、俺、凄い考え……てもいないけど……」

「……」

「俺はまぁその、もうすぐ大人だ、だから大人なりに、将来の大人なりに考えた!!」

「……??」

「ピーター、お主何を言って……」

「僕は……!!」

ピーターはドスドスと、ハンナに近寄る。

「え、おい、ちょ……ピー」

「僕は、君を傷付けた人間の1人として、君を幸せにする!」

「……えっ??」

「どうして欲しいかは……君に全部任せる!!」

「えっ……えっ??」

ハルトヴィンはピーターを引きはがす。

「ピーター、圧が強い、まず声を抑えろ!」

「え、あ……あの、これで良いですか……?でも、遠いから聞こえ……ねぇ、近寄るのはダメ、かな?」

「ダメ……」

「大丈夫……!」


私はたぶんもっと怖がるべきだった、だって普通こんな甘い言葉、聞く方がおかしかった。でも子供だったから、甘いと怖いが一緒にならなかった。盗みで親がオルテンシアを追い出されて、外で私が親と同じようでもない、もっと怖い人に、水と引き換えで渡されて……初めて優しくされた思い出が甘い言葉と結び付いて、知識が付いて、年齢も相まって彼を求めるようになった。触って良いよ?とか言っちゃったりして……どうせそんなことって思ってたら、本気だったみたいで、嬉しかった。じいさんに言われてから、ピーターは声を抑えるようになったけど……素のピーター、久しぶりだったな……。


言い残すように涙を流したその時、上から誰かが降ってきた。


「おい、誰か降りたぞ!?」


それは屈強な、人の男ではあるが、明らかにこのナーセナルにいる者には見えない健康な体をしており、肌の色艶はとても良く、そして何より、その荘厳な装飾の格好と、強く露出した肌は、西陸の文化では見られないものであった。

どこか聖職者にも見えるそれは、いつの間にか取り上げていたハンナの矢を握り締め投擲、数体いたはずの名付きは、全て頭骨を貫通、絶命していた。


「だ……れ……」

「面目無い」

「えっ……?」

「君が殺した……分かったか?」

「…………?」


ハンナが目を覚ますように意識を回復させた。


「すごいぞ嬢ちゃん!」


壁上から称賛の声がハンナに届いた。ハンナは記憶と違うのか、同じなのか、目の前のベストロらの死骸に驚いた。


「あの中で、よく倒せたね!」

「えっ?あっ……」

「とりあえず、動けるなら登れ、また来るぞ!」


1枚の白い羽根が、ハンナの側に落ちた。

壁の崩落を見たヴァルトらは、さすがに冷静ではなかった。


「壁いっちまったか!?」

「早めに仕留めきらない……ヴァルト、何かしてきます!」


ベヒモスは地面を掴み、大量の土砂を持ち上げていく、速度はそこまでない。


「投石って、そりゃそうか、地形で変わるか!」

「土、小石、枝、範囲が広いですよ!」

「どう交わすの!?」


ヴァルトは刀剣を構え、柄の親指で付近の機構を動かした。柄と刀身が離れたたそれは柄の内部と刀身の茎とも言える所とが金属の細い糸で繋がっている。


「そもそも、やらせなきゃいいんだろうが!!」


走り出したヴァルトはそのまま腕を真っ直ぐ伸ばして、鞘の先にベヒモスの眼球を捉えた。


「おらぁ!!」

ヴァルトは鞘の引き金を引き、刀身でそのまま射撃を行った。鞘の重さで安定が崩れ縦に回転しながらそれは、ベヒモスの眼球に直撃。拍子でベヒモスはその土砂を地面に落とし、砂塵が舞う。再度ベヒモスは土砂を持ち投擲を行おうとする。


「行け!ノイ、援護!!」


フアンが筒を担いで走り込み、砂塵に入っていこうとする。ヴァルトは再装填を開始しながらも、並列で思考し始めた。


(フアンの仮面は防塵の性能が高い、あの中で唯一、視界が確保できる。ハッキリいって、このままアイツで仕留めきれるはずだ。だが何だろう……何か見落としてる気が……)


フアンは砂塵に紛れながら、音で相手の体の位置を把握し、少し回り込みながらも近付いていく。引き金に手をかけながら、前傾で構えながら走る。


(武器を覚える……俺は、その認識で動いた。動いていた。見せたものを意識して……手を変え品を見せて)

ヴァルトは、ほんの単純な事実を見落とした。


(やべぇ……これ、アイツだけ誘い込まれた!?)


ヴァルトは、一気に表情を変える。


「フアン、逃げろ!!」


フアンは砂塵の中、ノイは外今だいる。


(これ、入れない。私はフアンくらい耳がよくない、相手の位置が分からない。この中で動けるの、フアンだけじゃない!何もできないって!)


フアンの正面に、拳が付き出された。戦慄と緊張の中、フアンは思考する。


(これ、僕嵌められましたね……僕だけがここに来ることを予測した……僕のこの仮面の効果を予測した、あるいはその経験があったのか……!?何もこのベストロにとって、戦いが初めてって訳ない、ですよね。通用していたのは、経験の外、新しい攻撃手段だっただけだったと……)


眼前に近寄る拳を観察するフアン。


(焦りで僕は咄嗟に理由も話さず行動した。ヴァルトも興奮状態だし、壁が崩壊した焦りもあって、僕に一任した。焦りすら、コイツは利用したって!?いや、そんな訳がない……無駄なことは考えるな……どうする、どうする!?避ける、避ける、そう避ける……どっちへ……)


更に観察するフアン、自身より大きな拳を見る。


(ここでやられる訳にはいかない……でも間に合わない、何か僕を移動させる……!!)


フアンは腕に持っていた鉄杭の大砲と、ヴァルトの行動や、ノイへの説明を重ね合わせた。


(しっかり踏ん張れよ、じゃねぇと効かねぇ!)


フアンは引き金にかけた指を引き、筒を起動した。筒から発射された釘というより先の尖った柱といえるものは、地面に向かって突進。フアンはほんの僅かに跳躍し脚を地面と切り離す、地面に激突した反動がフアンに伝わり、その貫徹力をまさに今跳躍力に変えながら、フアンが後方へ吹き飛んだ。

フアンの着地の隙を狙おうとベヒモスが、全身の力を持って飛ぶように這いずり接近。拳を突き上げ振り下ろす。


「くっそぉ!」


フアンは前方に身を投げ回避したが、あせって体勢を崩し筒と共に腕で上半身を支え這いずるベヒモスの腹下に転がり込んでしまった前には第二の口が赤いよだれを滴している。体勢を立て直そうとするも、腕の力を抜いたベヒモス。その口はフアンに近寄る。


「っ!!」


フアンは自分ではなく、筒をそこから逃がした。


(ごめんなさい、ヴァルト……ノイ……でもこれで……)


ヴァルトが全力で走り込み、フアンとほぼ同じように転がり込むように腹下に入り、地面を滑りながら抜刀し、鞘の引き金を引いて火薬を炸裂、発生した炎の熱を口内に直に送り込んだ。怯んだがそれでも押し食らい潰そうとするベヒモス。


ノイが腹下にとんでもない勢いで滑り込みながら入り、ヴァルトとフアンを蹴っ飛ばし救出。ノイが押し潰されそうになる。

ノイが徐々に口に入っていく中、ノイに蹴り飛ばされたフアンは、横転しながら袖から二刀を取り出し、左手のそれを地面に突き刺し回転。抜かりなく踏み込み、ベヒモスの方向へ体を吹っ飛ばした。

勢いで地面を滑りながら二刀を構えノイの元へ滑り込みノイが抑えることを信じて口の中を切り刻み始めた。

ヴァルトが刀剣と筒の装填を終わらせる所を見たフアンは、二刀を合体し槍にして喉奥に押し込み、低い姿勢から片足で鍔を蹴り飛ばし喉奥へ突き刺した。

ベヒモスは腕で自分を支え、勢いよく起き上がり、そしてフアンの槍は持っていかれた。


「フアン!!」


フアンの足元に筒が転がり込む。フアンは咄嗟にそれを広い、残る右足を狙う。


「ノイ、合わせろ!!」


困憊の中ノイがしゃがみこみながら振り向くと、ヴァルトが走り込んできた。


「俺を、蹴り飛ばせぇ!!」


ヴァルトはノイを飛び越えるように跳躍し、脚を折り畳んで次の地面を探すように、した。それを見ながらノイは、半分だけ後転し頭の後ろに腕を持ってくる。曲げて作った全身の溜めを一気に解放し、腕で自身を持ち上げながら足裏をヴァルトに合わせ、筋骨の飛び台となった。彼女の人ならざる筋力により射出されたヴァルトはベヒモスの首を捉え、引き金を引いて抜刀、首を落とすまではいかなかったが、深く斬り付け、振り抜き、ベヒモスの後ろに飛んでいった。足で踏ん張り着地しながら、ヴァルトは叫ぶ。


「おらいけえぇ!フアン!!」


フアン右足間接に筒を突き立てこれを発破、破壊した。


腕のみとなったベヒモスはいっそう暴れだし、ヴァルトとフアンがほんの少し躊躇った瞬間、ノイが走り込んだ。ノイよりは暴れるベヒモスの攻撃を全て瞬手で避けながら、戦棍で次々と打撃を与えていく。ヴァルトは装填した筒をノイに届けるため、ノイのすぐ後ろ向かって、体ごと回しながらそれを投げた。


「ノイっ!!使え!!」


ノイは拳を避けたのち、左腕のみで装備したそれを抱えたまま、再度ベヒモスへ突撃した。ベヒモスは土砂を掴み取り、驚異的な速度でそれを投げつける。石や枝の混合物は、速度により全て殺傷力を確かに帯びていた。


「やべぇぇ!」


ノイは石と枝の雨に呑まれる。


「痛くないわよぉ!!」

片腕で顔面を守りながら、御構い無しに突貫し接近した。ヴァルトに降りかかるそれを、フアンが捨て身で庇う。全身でまとものそれを食らい倒れるフアン。


「おい、大丈夫か!?」


振り抜かれた腕を、地面を抉るように滑って回避しながらノイは懐に潜り込む。

勢いよく跳躍し、ベヒモスの頭へ向かう。飛び込んだノイは残った右目に狙いを定め、衝突と同時に引き金を引いた。

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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