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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第四章 傾城帝政

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五話 お邪魔します、バックハウス家

五話 お邪魔します、バックハウス家


明け方、朝日に刺されながら平野を歩き、隠された馬車に乗ってイェレミアス帝国、レルヒェンフェルトの南門に向かっていた。フアンが操縦し、隣にはナナミがいる。

「……フアンとやら、すまんかった。1人取り逃がしておったようじゃ」

「……いえ」

「……初めてか?」

「……はい」

「そうか……慣れんでもよい」

「九人相手に負傷無し、さすがですね」

「血糊が効果あるとは思わんかったがな。日輪は長く、戦国という時代じゃった。妾は、自分を守るためにもこうなるしかなかったのでな。あぁ……すまん、暗い話をしてしまったな」

「いえいえ」

「……ところで、フアンという名前は確かか?」

「……はい?」

「いや、日輪の言葉に同じようなのがあるんじゃ。昨日初めて聞いたときは、少し面白く思えてな」

「そうなんですか」

「カモン、トカ……ナンテイウンジャ……あぁ、苗字はなんじゃ?」

「ランボーです」

「ぷっ」

「何か?」

「いや何、それも意味があるぞ」

「どんな?」

「かなり愉快じゃよ。日輪ではダジャレとかジグチとかというてな、まぁこれが面白いのは酒の入ったうちの民くらいじゃ。フアン・ランボー、不安・乱暴……はっはっはっ、オジジなら腹がよじれるじゃろうて」

「おじじ……?」

「他国の情報は後じゃ、して」

操縦席から立ち上がって、奥を覗く。

「あれがレルヒェンフェルトか?」

ナナミから明らかに遠く、石材の壁が見え始める。ナナミにお耳飾りの鈴がなった。

「おぉおぉ、なるほど。弓兵が構えやすい凹凸のある回廊、所々穴が空いているのは、そこから銃でも使うという具合か?いやぁ面白い、じゃが素材、古いのぉ。100年くらい前の石じゃなぁか?返しも無し、ありゃあ入りやすいのぉ」

「ここから分かるんですか!?」

「そら日輪は戦争だらけじゃったし、妾は城に入っていくの仕事じゃったし」

「いえ、城壁の構造がなぜ分かるのかと」

「秘密じゃ」

「ニンジャ……カタナですよねそれ。サムライ、つまり剣士ですか?」

「サムライは、社会的な立場とかを示すものでもある。刀を持てるのは普通サムライ以上の権力者だけじゃ、誰かを守れる力を戦場で証明した者の称号、まぁ妾は黙って持っておるがの」

「じゃああなたは……」

「まぁ名誉も配慮も無しに言えば、サムライ・ニンジャじゃな。分かりやすい方からが良いじゃろ?」

「……まぁ、そうですかね」

ノイとヴァルトは、会話を聞いていた。

「フアン、大丈夫かな」

「自分の心配しろ」

「でも……」

レルヒェンフェルト防壁、南門に到着した一行は兵士と顔を合わせる。兵士たちは警戒していた。

「貴様ら、何者だ!」

「あれ、馬車が通行証代わりになるって……」

ヴァルトが奥から声を上げた。

「たぶん知ってるやつと知らないやつがいるはずだ。偉い人呼ばせろ」

すると兵士の奥から、腕章を着けた兵士が走ってきた。

「お待ちしておりました~!全体、ここは私が受け持つ!」

「しかし……」

「この馬車に描かれた紋様が見えないのか、バックハウス家の馬車だぞ!抵抗すると、どうなるか知らないぞ!」

「……了解、です」

「ちゃんと考えて行動したまえ!」

「報告なかったので、つい!」

「偉い、じゃ続きお願い!」

「はいっ!」

兵士は書類を少し番兵たちに渡して、すぐに馬車の運転を変わる。ニンジャに驚いた。

「……ニンジャ、えっ、えぇ?」

「一人くらい増えても問題なかろう?」

「……あぁ、まぁいいでしょう」

ヴァルトがあきれる。

「テキトーだなオイ……」

「はい、それくらいで生きて良いというのが、お医者様の結論でした。あぁえっと、シレーヌ討伐お疲れ様です」

「医者?」

「皆さんも、診断を受けに来たのでは?」

「……あぁ、心療内科ってやつな」

「兵士は心も大切らしいですよ」

馬車で街を見ると、オルテンシアとは容貌が変わり、全体的に木材は黒く、様式も多様であると見える。中央には、巨大な城と宮殿の塊が見える。

「か。なんとなく感じておったが、オーテンチじゃないのか?」


「ここが、イェレミアス帝国首都レルヒェンフェルトです。奥に見えますのはえっと……エクメーネ城といいます。真っ直ぐいった先に」


「疑いもしないで着いてきたのはそっちですよ」

「まぁ着いていくしかないのは確かじゃな……れう、る……ん?ひどく発音が難しい、オーテンチの隣じゃったか?」

「隣はオルテンシアです、そしてここはレルヒェンフェルト」

「いやオーテンチじゃろ、おじじが言うておった」


「バックハウス家の舘が…………あの、聞いてます?」


会話になんとか説明を入れようと案内役の者がひどく困っており、ヴァルトが中から手を上げた。

「俺は聞いてるぞぉ~」

話を聞きながら一行はバックハウス家の紋章のある舘にたどり着いた。落ち着いていて優雅な庭園がきっとあった所の全てが農地になっており、掘り返されて空の畑の先にやっと舘がある。土の香りが漂う平たい所を歩く。ナナミが竹棒で地面をたまに叩きながら、鈴を鳴らして歩く。

「……ヴァルト様、それで、そのお方はいったい?」

「わかんねぇ」

視界に入れるように七海が振り向いた。

「どうも、ニンジャじゃ」

「……はい?」

「あぁめんどくさいのぉ、なんかこう偉い人おらんか。一度そやつに言うて……」


挿絵(By みてみん)


「はぁい偉い人来たよ」

一行が後ろを振り向くと、目の細く、メガネをかけた青年がいた。小綺麗な格好に金属類の細工を多数身に付けている。

「成り金……お前」

「うん、人のこと成り金っていうのやめようね?」

「おまえ納期短すぎんだよ、この前弓剣で何徹したと思ってんだ」

「いいじゃん、楽しそうだったし」

「やりがいで繋ぐにも限度があるぞ、くそ」

「ごめんって、こっちいる間は工房好きに使って良いからさぁ~……てか、1人多くない?」

ナナミに向きが男に向けらえる。

「なんじゃ、お主が長か?」

「ニンジャじゃん……へぇ、何?どうやって来たの?」

「徒歩じゃ。5年かけた」

「えぇ!?イェレミアスと日輪を……いや、間に球凰とか色々と……」

「それについては後じゃ」

「……あぁ、なるほど。それが君の商材か」

「あないせい。妾の持つ情報がどれほどの値打ちがあるか、この国で確かめる」

「よし来た」

「疑わんのか」

「いや、とりあえずヴァルトくんが一瞬にいるなら、危険じゃないよ」

「ほぉ」

歩きながら事情を説明していき、互いの自己紹介を終える。

「ヤシュラ……タマヌキ……日輪の言葉、訳しにくいんだよなぁ。ところで、目は見えるの?」

「あぁ、これはサラシという……まぁほぼ包帯じゃな。これで暗さに備えるんじゃ」

「いつもは隠してる感じ?」

「音だけでも、見てると変わらんよ。変な気は起こさんことじゃ」

「凄いね、夜中に物失くすと困るし、僕もそれやろうかな?」

ノイはユリウスの話し方が気になった。

「なんだか元気だね、ユリウスさん」

「当たり前さ。お金、権力、良いお嫁さん……この3つがあれば、誰だってそうさ」

「ほぉ?」

「マルティナも待ってるよ、ささ早く早く」

ユリウスに着いて舘の前に到着すると、扉が開けられ8人の給仕の男女が迎える。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

8人の揃った出迎えに一行は驚く。ユリウスが一番驚いていた。

「ただいま皆、今日も頑張ってるねぇ。なぁんで毎回揃ってお帰り言えるか分かんないよ、監視してるの?お客様4名、飯とか色々もてなしちゃって、皆でコイツらの着替えとか服の洗濯とか、仕事増やしちゃうけど諸々頼む!今日で執事の二人も復帰するから、仕事終わったらすぐ帰っていいよ~」

「かしこまりました」

揃って声を発するので、やはり一行は驚く。

「スッゴい、何この人たち……」

「金持ちってこうだよなぁ……」

「……というか、着替え?洗濯?」

ユリウスが廊下を走って、振り返って大声を出す。

「フアンくんは着替えとかなしでお願ーーい。すぐ食堂通しちゃって!」

「かしこまりました」

また揃った声を発して、ナナミは笑う。

「ははっ、こりゃもう大道芸じゃな」

給仕の2人がナナミに近寄る。

「あぁ、妾は先に……フロって分かるか、こう温かい水を、固める、溜める?」

「バーデンですね、かしこまりました」

「バルデーン……ほぉ、それがフロに通づつ単語か」

「……はい?」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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