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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第四章 傾城帝政

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三話 サムライ・ニンジャ

第三話 サムライ・ニンジャ


「なんだニンジャって」

「東陸にいるという、武術の達人です。闇夜に乗じて奇襲をかけて敵将を討ち取るのに特化しているとか……ナーセナルにあった本で読みました」

「そんなヤバいのが実在するとして、なんでここにいる……西陸と東陸、どんだけ離れてると思ってんだ」

「……ニンジャならできるのでは?」

「意味わかんねぇよ……」

「エヴァリストみたく、奈落にいた人物だっているんです」

「……ありえなくはない、か」

「その人、凄く痩せてない?」

「たぶん……空腹でほやいていたんでしょうね」

「……他国のこと聞ける良い機会じゃねぇか?」

「あっ、確かにそうですね。ですが……」

フアンは、ニンジャが握っていた、等身と同じくらい長い杖を見ていた。

(この杖、倒れたときの音が変だった……)

フアンが、とりあえず袋の中から、一斤の主食を取り出して近寄る。

「……あっ、あの~~」

ニンジャは鼻で嗅いで、服装の所々に付いた鈴を鳴らす。

「サンニン?ハッ、シマッタ!クダモノノカオリニサソワレタ……」

「……あの~」

「……ヌシラダレジャ」

倒れたまま声を発するのに、フアンは近寄る。

「est-ce que tu te sens bien ?」

「……タイチョウハダイジョウ、ブ?」

「Avez-vous besoin de nourriture ?」

「……ソウカ、オトコカ、ヨイコエシテオルノォ、オヌシナラヨイカモナ」

「……???」

ニンジャは腕で伏せるように顔を上げてフアンの方へ向く。視線が会うように顔を向けた。

「Combien de fois?」

「……あなた、アドリエンヌの言葉が分かるんですか?」

「分かるぞ、音を聞くのが妾の得手じゃ。して殿方よ、何度すれば良い、みすぼらしい傷だらけの体じゃが、姉上曰く目から下は整っておるらしいからの……」

「……はい?」

「?」

「……何か、誤解があるような?」

「ん、なんじゃ、てっきり体目当てかと……」

「はぁ!?違いますって!」

「そうかそうか」

「とりあえず、これどうぞ」

フアンが出したのを聞いて、ニンジャはスズを鳴らした。

「……リンゴか」

「西陸以外のこと、僕らに聞かせてくれませんか?」

「それっぽっちで良いのか?後ろの……男か、女か?」

「男女ですかね」

「お主、邪魔しとるのぉ」

「そうなんですよねぇ」

「んじゃ、飯はよ」

「いきなりなんですか……!?」

「んぁ、もう妾を襲う気がないのは分かっておる。飯、はよ」

「……!?」

「はよぉ」

フアンはしぶしぶと袋から食べ物を出すと、口を大きく開けて平らげ始めた。焚き火に4人が座りこむ。ニンジャの隣にはフアンがいた。

「なんじゃこれ……全部旨いぞ……!!」

フアンは、目の包帯を見ていた。

「そうなんですか?」

「おぉ~、なんじゃこの……か、固い……じゃが、噛めば噛むほど甘い。ん、お野菜も旨い……肉はないのか?魚は?」

ノイが身構えてしまいフアンがニンジャの口をふさいで耳元で話す。

「肉という言葉、そこの女性の前では言わないで下さい」

「承知した」

フアンが寄るのをやめる。

「しかし良い声しておるのお主。響くようでいて体に染み込む。春風のようじゃ」

「……えっ、そうなんですか?」

ヴァルトがフアンを見ていた。

「まぁ、確かに抜きん出てるのはあるな」

「えぇ~……?」

「やい、誉めたんじゃ、もっと飯を頼むぞ」

「何ですって……!?」

「遊郭じゃ誉めれば物が貰えるらしいらしいがおかしいの……よし、食べたら元気になってきおった。さて、外のことについて、じゃな」

「……まず、お名前からでしょう」

「名前、いっぱいあるんじゃ」

「……それは、ニンジャだから?」

「ニンジャ……おぉ、お主日輪を知っておるのか。そうじゃな。一番短いのだと……ナナミ、じゃ」

「ナナミ?」

「七つの海と書くぞ、でっかいじゃろ?そのくらい妾も胸と尻が大きければ、食いっぱぐれることもなかったんじゃがのぉ」

「で、外は……」

「それを言うてしまった瞬間に、妾の価値はなくなるじゃろ。たしか……オーテンチじゃったか?そこへ連れていけ、話はそっからじゃ」

「えっ?」

「ここで言うたら、お主らをが妾を生かす理由がなくなるじゃろうて。都へつれていけということじゃ」

「確かに、そうですね……たぶんオルテンシアのことですかね?」

「今晩の見張り、たぶんお主じゃろ?妾が変わるし、なんなら全員でやっても良い、かならずお主らを街まで届ける。じゃから、話は後にさせてくれ。馬もいないようじゃからな?」

「……」

「ここで刀は抜かんか、悪いな。日輪よかここは、生殺与奪が少ないかもしれぬ」

「いえ、あります」

「……急に声色が変わったなお主、ん?」

ナナミはフアンに寄る。

「……???」

ナナミは突然フアンを腕で掴んで寄せて、心臓のあたりに耳を付ける。

「……ちょ!!」

フアンがそれを引き剥がす。

「なっ、なんですか急に!!」

「いや、ちょいと気になったのでな」

「なんなんですかもう……!」

ナナミは顎に手を当てる。

(コヤツ、なぁんでこんなに鼓動が早いんじゃ?本当に人か?手繰り寄せたときならまだしも、常に妾の3倍はある……小動物とかと同じ鼓動じゃの)

ナナミはフアンに寄る。

「お主、噂の獣人か」

「……はい?」

「あぁ~、ん?なんていえば良い……あぁ、犬とか猫っぽい人間」

「……ベストリアン?」

「なんじゃぁその仰々しい……あっ、そうかお主ら嫌いなんじゃっけ?」

「……えっと、一応亜人や獣人という言い方もあります」

「おぉ、その言い方だいぶマシじゃ。してお主は……」

ナナミは突然北西に先を下段で、肩に乗せながら杖を構えしゃがむ。ヴァルトはフアンも北西に向いているので、向きを変えてしゃがみ、ノイもそうする。

「馬のない理由はこれじゃな?随分な数に追われておるのぉ。ヒィフゥミィヨォ……九つ。妾たちかけることの2つ以上か……これは中々にしんどそうじゃ……ん~ここでお主らを置いておくと、おじじにあの世でしばかれそうじゃのぉ。よし考えがある。シノビの技を披露しよう、お主らは寝て、火は自然に消すんじゃ」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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