十二話 何者かであるべき世界
第十二話 何者かであるべき世界
テランスは、最後の一瞬に、無限の自己を思っていた。
(何をして生きているか、どのような人生を送っているか。誰の元に産まれて育つのか。それら一切が関係無い、無作為性の原則。人間の才能に血統も育ちも関係無く、才覚や不幸を生まれながらに持たせる存在。僕は筋力において、オルテンシア内では並々ならぬ才覚を持っていた……ノイくんに抜かれたがな。兵士のみんなは過去を持っているのが多い、両親や家族・大切な人を失った、腕を目を失くした、そんな様々な過去を持った皆が死んでいくなかで……僕は何があった?兄さんのような大きな過去はない。僕の過去に、両親の死ぬは確かにあった、でもすぐに新しい家族が、兄さんや兄さんの親たちが救ってくれた。孤独も喪失も、簡単ではなかったが埋めることができた。僕はこの国で、誰よりも悲しみに暮れているわけじゃない。兄さんにような人間こそ、ジョルジュみたいな立派な地位に相応しい。どうして強いのか、なんで戦うのかなんて聞かれても答えられない。兄さんと家族を守る。みんなは復讐、仇、家族を守ること。だからいまある幸せを守ることって、それを答えていいのか分からなかった。僕はそれら悲しみを背負った彼ら彼女らの、憧れや理想、上に立つべき人間じゃない。深い人生を、悲しい人生を歩んでいない。強さの理由は筋力で優生を引けただけだ。戦う理由は、兄さんを守る、みんなの笑ってるのを守るだけだ。浅いと思われるかもしれない、そうか……僕、ずっとそう思ってたんだ。僕は浅いかもしれないって。幸せを人より多く感じた人生に、僕は劣等感、疎外感を覚えたんだ……これはきっと傲慢っていうんだろうな……でも、重要な立場にいる人間に、悲しい過去を求める人は少なくない。兄さんと一緒で、妙な方向に考え過ぎていたのかもな……ごめんね兄さん、ぼくこんな奴だったよ、そりゃこうやって命も投げ出すさ。マルセルとおばさん、うまくやってるかなぁ……兄さん、誰か結婚してあげてくれよなぁ……死に際に僕、頭働きすぎだろ……もう、いいや)
テランスが思考から抜け出して、ケルベロスを、見たはずだった。首がない、目の前にそれの断面がある。腕に噛みついていたオオカミのベストロもいなかった。
「……えっ?」
「ぃよぉ坊主!!」
テランスはシレーヌの死体の上で、ボロボロの外套と、鎖の付いた大剣を左手で持った男に、身長で負けながら、頭をポンッと叩かれた。
「お前その暴れっぷり、たぶんジョルジュ、だよな?つまりぁ俺の……後輩ってことか?なぁ、どんくらい時間たった?」
「……え?」
「えじゃねぇって、俺だよ俺、分かるかぁ?んあぁくっそ、最近の若いやつは俺のこともわかんねぇのか?あんだけ暴れてやったのによぉ…シレーヌはやりそこなっちまったが……」
「ケルベロスは……」
「あぁ、この犬っころか。首ぶっ飛ばしたら、倒れちまったぜ。お前大丈夫か、腕も噛まれてたしよ」
「……???」
「……血ぃ足りねぇみてぇだな坊主。お前ちゃんと飯食ってるか?」
「……???」
「まぁいい、俺に着いてきてくれ」
「えっ??」
「いや、だからついてき」
「後ろぁぁ!!」
ケルベロスの、真ん中の空いたケルベロスの両首が襲いかかる。外套はテランスを大剣ごと担いで飛び上がり、着地と同時に地面を蹴る。地面は粉砕され付近のベストロが吹き飛ばされた。テランスは下ろされ大剣が落ちる。
「っしょっと……あぁすまん。はぁ、意外としぶといよなぁ。ったく犬っころがよぉ」
ケルベロスの2つの目線が外套と合う。外套の中にいるのは壮齢な男、目は紫色で、髪は長めで無精髭、そしてニヤついていて、全く死を恐れていない様相であった。
「坊主、お前はここにいろ」
「回りにはベストロが」
「もうやってある」
周囲のベストロは全滅していた。
「しばらくは大丈夫だ」
振り向いて、自分の顔に指差した。
「で俺の名前、マジで分からない感じ?ホントに悲しいんだけど?」
「エヴァリスト・ラブレー。オルテンシア、歴代最強のジョルジュ……」
ケルベロスが、シレーヌの死骸を吹き飛ばして襲いかかってくる。
「おぉ良かった良かった、よぉぉし、おじさんにぃぃ……!!!」
エヴァリストは特大剣を振り鎖で繋がれた分銅を投げ飛ばし、斬った断面にぶつける。ケルベロスの突撃を止めると、鎖を振り回して、浮き上がった分銅を動かし、振りかざして叩きつけて再度動きを止める。出血量が大砲を食らったようになっていて、しかしすぐに体制を整える。
「任しとぇけぇい!!いや、俺ってもうおじさん通り越してるか……?いや、まぁ」
エヴァリストは分銅を回収することなく、体勢を直したケルベロスの太い腕や足に飛びかかる。
「どうでもいいか!」
踏みつけや体当たりなどのすべて回避しながら、ひたすら筋や肉を叩いて叩いて斬り刻んでいった。それらはテランスが瞬くこと3度程度で完了してしまう。
(何をやってるんだ……??)
足の下に回り、流れるシレーヌとケルベロスの血にまみれながら、鎖をほどきながら2つの首のうちの左首あたりに視線を向け始めた。体を走り回り、鬱陶しくなったケルベロスは左首を回転させて背中ごと食べる勢いで食らいつく。飛び上がって、左首がまっすぐに視線をエヴァリストに向けた瞬間。
「おいっしょと」
鎖をに見えるよう投げ、首輪のように巻き付けた。ケルベロスの足元に分銅が転がる。
「頭数、減らすぜぇ!」
特大剣を大きく振りかぶって、とくに回す様子もなく腕力のみで後方に投擲し、回転しながらベストロたちの死体の山を崩して地面に突き刺さる。突き刺さった瞬間に、その石突と繋がった鎖がピンと張る。そして巻いた。鎖でケルベロスの全身は張力で強く拘束され、左首はより強く縛られた。
エヴァリストは特大剣とケルベロスの間で張った鎖を思い切り引っ張る。傷付けた手の裂傷に鎖が食い込んで身動きを減らし四肢を圧迫しへし折っていく。左首は苦しそうに、圧迫で次第に舌が出てくる。
「いよっ!」
腰を入れてさらに強く引っ張り、そうして左首を引きちぎった。すぐさま鎖を引き戻し、落下する左首に向かって、ムチ打ち波打たせるようにして再度鎖を投げ飛ばし、落下する首を拘束して引っ張った。、頭骨や皮膚に食い込み目が浮き出る。そうして左首を捕まえると、大きく引っ張って少々の遠心力を付けると、エヴァリストは大きく跳躍した。
「おおぉぉるああぁぁぁぁぁぁ!!」
エヴァリストは、鎖で捕まえた左首を、引きちぎられた拍子で姿勢の崩れたケルベロスの右首に、空中で引っ張るようにして振りかぶって、勢いよく叩きつけた。牙や骨ごと突き刺さっていき、ひしゃげて炸裂し血は舞い上がる。エヴァリストはケルベロスを背に着地した。張力のなくなった鎖はたらっと一気に落ちる。テランスは光景に唖然とそていた。
「いよっし……」
血煙の中からケルベロスが、高速で這い出てエヴァリストに噛みつこうとする。
「おらぁ!!」
振り向き様の回し蹴りでケルベロスの首をはねのける。
「どんだけアホでも……」
鎖を巻き付けた特大剣を肩で担ぎ、余った右手んl人差し指でこめかみを指差す。
「痛いとすぐガクシュウすんだぜぇ?俺はそれでもできねぇねけどよぉ……いつだったか、キョウコウ?に蹴り入れられちまって、たしか名前はアンブロ」
一瞬のびたかと思えたケルベロスが再び食らいつこうとし、寝そべったままで首を動かし、口を左右で開いて閉じた。ケルベロスの口は、エヴァリストの特大剣がはさまってとまる。
「そうそう、コイツをいじったときだったな。あん時は兄弟たちにこっぴどく叱られたもっおぅぇ……お前さん、だいぶ口臭ぇな。そんなんじゃ女の一人もよってこねぇぜぇ?まぁ、俺もそうだがよぉ」
息を止め、拳を構えて牙の群れを連打で破壊。上顎を強打して口を開けさせると、特大剣を携えて大きく飛び上がる。ケルベロスが首を持ち上げようとするのを、回収した分銅を、鎖で遠心力を付けて投げつけ目を潰す。衝撃で持ち上げた首が地面に叩きつけられる。特大剣の使い古され決して美しくなくなった刀身が、曇った空に溶け込みながら残った首をえぐり、まっすぐ上から切断されるように叩き潰された。脈の潰れたので、崩れた配管から出る高圧なそれをを思う量が流れ出て、青さの少しだけ見えた鎧の布地部分を赤に染め上げる。
「時間かけちまった……坊主、大丈夫だな??」
テランスは呆気にとられて周囲を見渡す。ベストロは回りにはいない。
「あなたは……いったい……」
テランスは握力で止めていた利き腕の出血が止まらず、失血状態で倒れる。
「コイツはヤバいな……だがオルテンシアに戻したところで、あのアホ共がまともにコイツを治せるか……」
エヴァリストはテランスの持っていた大き剣を見て、液体の何かが付いているのを見る。
「……油、ちょうど良いじゃねぇか!」
エヴァリストは手にそれを右手に着けると、左手で小石を2つ握って全力で握り摩擦で熱を発生させ油を着火。
「あっつ!!あぁいや当たり前か……」
火薬混じりで激しく燃えたそれを、傷口に押し当てた。
「汚ねぇ手ですまねぇ、だがまぁ焼けば血は止まるんだぜ。ジョルジュならそんくらいできんだろ?ふぅ、あちい!!大丈夫、ちょっと一回離れるぞ。まぁ飯くらいなんとかしてやっから、一回寝ろ」
「オルテンシア……」
「後ろの感じ、かなり善戦してるなありゃ。だかたこそ、今はお前が大事だ、そうだろ?兄貴だったか、さっきも言ったが柔わ訳ねぇだろ。むしろ後で、俺に感謝すんじゃねぇか?」
「……」
「まさか死んで帰らなきゃジョルジュの名が廃れるとでも?兄貴に嫌われるとでも?兄貴なら、弟が生きてるだけでありがてぇんだよ。それに、胸はって生きるにゃ、まずぁはる胸を生かすってさ。分かるか?つってもこれ言ったの兄弟だけどな、はっはっはっ、元気してっかなぁ……テオ」
テランスを武器ごと担いで、ささっと西南へ移動していった。フェリクスがそれをぼやっと見るも、前方からのベストロによって視界が塞がる。前線から、騒ぎが聞こえてきた。
「絵付きを、銃火器無しに一人で……?」
「いまの、テランスさんだったか!?」
「いや、テランスが倒したのはシレーヌだったはずよ!」
「すげぇ、すげぇけど……いまのもヤバいな!」
「私たちもいくわよ!!」
戦線は徐々に安定していき、そうして昼もすぎ、夕方になり、すべてのベストロが倒された。夕日に照らされてる人の鎧ごと噛み砕かれた様、口から手だけが出ている様、踏みつけにされた十字光を型どる飾り、そして聖典の数々。
ジェルマンが大の字で倒れこんでいるなか、誰かが呟く。
「俺たちは、何を信じていたんだ?」
兵士たちが、誰が言ったか分からないそれに耳を傾ける。
「俺たちは、なんで聖典を信じていた?」
「……正しいと思えるからだ」
誰と誰が会話しているのか、兵士たちは分からないからこそ、遠慮なく会話を始める。
「どこがだ……俺たちは結果、こんな目に」
「俺たちは同時に守られている。主のあらせられる限り世界を、我々は信じることができる。団結を、理想を、希望を、人類の反映、栄光、愛を信じていられる」
「この惨状のどこに、そんなのがあるのよ!」
「私たちは、聖典に育てられてきた!皆知らないの知らないの、世界は欺瞞で溢れている、私たちは信じているからこそ互いを本当に信じられるの。私たちは、主が見ているからこそ、どんなときも平静に、正しく生きていられる。悪さをすればかならず罰が当たるから」
「じゃあなんだ、これはその罰か!?」
「違う、これは試練だ!!主は我々を常に見ている。これは主が我々を鍛えるために!」
「そんなこと言ったら、じゃあ何!?ベストロは、主の手勢みたいになるじゃない!!そんな訳ない!!」
「そうだ、そんな訳がない!太古の昔、ベストロは現れた。そしてサン・ゲオルギウス様の活躍と初代教皇様による祈祷が、あれらに天罰をお与えになった!!」
「それも嘘に決まっているだろう!!」
「誰だ、主を愚弄したのは!!」
「ベストロが手先なら、さっきの雷って、なんだったの!?」
「そうだ、あれこそ天罰だ!!」
兵士たちの視線が、後方で倒れているヴァルトに向く。ヴァルトの倒れているところに、兵士たちが向かい始めるとノイはヴァルトを守るように、前方で一人で手を広げて構えた。
「な、何……ちょっと、近寄らないで、何?」
「あんた、その人の知り合いか?」
「違う、この人は行動隊の人だ。大砲で駆け付けてくれただろう?」
「なぁ、さっきのはいったいなんだったんだ?」
「何か知ってることはない?私たち、どうすれば良い?」
ノイは、麻のしかれたのに横たえるヴァルトの側で正座して、うつむいた。
「「わかんないよ。でも今は、ちょっ、あの……休ませてあげて、静かに、お願い。起きるか、わかんないの……」
兵士たちが、ノイのその表情から関係性を容易に想像する。
「ヴァルト、また寝るの?嫌だよ私、前だって頭おかしくなったんだから……」
全員が黙った。ノイはヴァルトとアマデアが対峙してから、気絶したのを思い出す。
フェリクスが馬に乗って下がってきた。ジェルマンを乗せている。
「ジェルマン指揮官の救護を頼む。戦闘での興奮状態が収まり、脱水の症状を自覚し始めた。全員、各々でまず何か食事を取れ。その後遺体をできる限り回収してオルテンシアに帰還する」
「フェリクス様、さっきのはいったい……」
フェリクスは馬から降りて、兵士たちに説明しはじめる。
「……彼は、聖そのものと言えよう」
「ひじり?ひじりって……」
兵士たちは聖典を取り出しはじめ、誰かが読んだ。
「聖典、第二章……降り立つ翼のとどまる所。義は獣を外に見る、理は獣を内に見る。すべての時にかなって獣は。この世の態より見棄てられる。天にまします使いの如く。御光を投じ。律する者こそ聖である」
フェリクスが話し始める。
「聖とは、現在の我々の解釈として主に近しき、まとこ貴ぶべき存在という意味を持つ。聖なる物品、それ自体に神聖さを帯びたほどの知性や存在価値を比喩する最上級の言葉として、みなもよく使う言葉であろう。しかし、今日ここに新たな聖が誕生した。聖とは御光と比喩された現象を、投じると比喩された発動ができる。なんらかの特殊な力を持った存在であると、私は解釈した」
兵士たちが、驚愕を隠すことをしないでいた。
「じゃあ、あの人が急に投げ飛ばされたと思ったら光り始めたのって……」
「彼は、その力を発動する際、雷を伴って力を発動する」
「雷……それって」
「あぁ、雷とは天罰の象徴そのもの。彼は主に選ばれた、天罰の代行者である!!」
兵士たちは歓喜で溢れた。
「じゃあ、俺たちは!!」
「主は我々に、生きよと命じている!諦めるなと命じている!親が子を叱るように、我々はいま苦境に立たされているのだと、立たせておるのだと、私は彼を、その暗喩として解釈する!!」
兵士たちは、その言葉を聞き入った。
「……みなの不安を、私に預けてはくれないだろうか?私はとある罪で今後、最高指揮官の座を降りる。だが、私はこの国の問題を解決してみせよう!我々を苦しめているのは、主ではないと証明しよう!」
「そこの人に聞いた方がはやいんじゃないですか!?」
「彼は、直近で執行された新制度、イェレミアス帝国義勇部隊の人員である。よって、我々で執拗に迫れば国際問題に発展しかねない。私ならそれら問題を回避することができる!みなの涙を、私で汲み取らせて欲しい!!だから今は、彼を休ませてあげてくれないか!!」
兵士たちは、フェリクスに質問しはじめる。
「我々はどうすれば良いのでしょうか?このまま帰れば良いのでしょうか?」
「ジェルマンの次席は誰になる?」
手を上げる男が一人。
「私です!!」
「君に現場を任せる、私は彼らを、旧イェレミアス大使館に預けにいく!初めて者もいるだろうが、みなはいつものように、主への尊敬を忘れず、勝利を持って帰って欲しい!」
全員が各々の武器を掲げて整列する。靴の音が揃った。
「了解!!」
「では君、後は任せる!!」
フェリクスは馬車を容易してヴァルトのところに行くと、フアンとノイによって麻袋でグルグルにされていた。
「な、何をやっているのか!?」
「す、すみません!ヴァルト、狭いところが好きなんです!!」
「……??」
「えっと、フェリクスさん!?た、タイシカンって何っかなぁ!?」
「現バックハウス家の資材保管庫だ。あそこには、君らの上司であるバックハウス家の関係者が常に待機している。旧イェレミアス大使館と同様、一定の治外法権が許されており、ヴァルトくんの人権保護という名目ならば上層でも、表立っての手出しは難しいだろう。西陸でただ一つの後方陣地との揉め事は、とくにバックハウス家のような私有財産の大きなところとを相手には起こしたくないだろう」
「……一刻も早く、お願いします!」
ノイが麻袋を担ぐ、フェリクスが待ったをかけた。
「さすがにそれは、ヴァルトくんを休ませたいのではないのか!?」
「これが一番良いんです……」
「しかし……」
「私はヴァルトの幼馴染みです!」
「だがそれは……」
「あなたにヴァルトの何が分かりますか……!?」
「……分かった、ではそのままいこう。しかし理解しがたい趣味だな」
ノイとフアンは、ヴァルトは一瞬だけ雷に突如包まれたのを見て、敷かれていた麻で咄嗟にくるんで、その光を隠していた。
フェリクスの馬に繋がれて、ノイとフアンは馬車に乗って、そうして南門に向かっていった。
ノイとフアンは小声で話す。
「……ねぇ、あの光って」
「ナーセナルであった変身……その兆候だと思います」
「だよね、たぶん……だからいま、この中にいるのって……」
「……ヴァルトではないでしょう」
フェリクスが振り返る。
「君ら、小声で何を?」
「いえ、先ほどの兵士たちへの説得は、見事だったなと」
「……テランスは、どうなった」
「エヴァリスト、ですね。連れていかれた、と思います」
「……行動隊は、いっきに空席が増えたな」
「空席、ですか」
「私にできる指揮官としての仕事は、さきほどの説得で最後だ。動ける範囲も少なくなるだろう。大きな動きは……君らを頼ることもあるかもしれない……二人とも、少し休むんだ」
「……」
フェリクスが正面を向いた。
「支えてあげるんだ、君らにはその力がある」
フアンは、人形を掘りたまえという言葉を思い出していた。
2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。




