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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第三章 信人累々 二幕

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十一話 自決祈祷

十一話 自決祈祷


馬車でかける行動隊は、着替えを済ませて門を出る。武装を整えていくなか、ヴァルトは箱の鍵を開けて、折り畳まれた、12丁もの銃を取り付け可能な銃架を組み上げる。

「はぇ~なるほど。取り付けて、擬似的に12発連射って具合か……」

「ヴァルト、さっき使ったおっきな銃どうする?」

「フアンに持たせろ。ノイとテランスで突撃、フアンは二人をを援護しろ。俺とフェリクスで馬車から銃を撃つ、ついでに付近にいる兵士に弾薬を渡してまわる。それでいいかフェリクス」

「あぁ。テランス、大砲の用意はできたか」

テランスは大砲に砲弾を詰め込んでいた。

「あぁ、旧式でかなり重たいが……大剣とさして変わらないさ」

「テランスさんの大剣は僕が運びます」

「分かった。砲弾が切れたら、フアンくんから大剣を貰う」

「はい、その間に僕は馬車へ戻って砲弾を運びます」

ヴァルトが創部の点検を終える。

「フアン。兵站は一番大切な部分だ。任せたぞ」

「はいっ!」

南門を出て西方に前身していくと、黒い波にまばらに輝く鎧が、多く動いているのが見える。

「うぉあぁぁあ!!!」

ジェルマンが、長めの直剣を担ぎながら振り下ろしてベストロを叩き斬る。兵士は負傷した側から後退させられていき、人海によって作られた前線の後ろで、負傷した兵士たちが溜まっている。

「負傷した側から、すぐに後ろに下がれ!!これを凌いだとて、ここでデボンダーデが終わるとも思えんぞ!!」

ジェルマンの指揮が兵士たちの、復讐の心すら封殺しているが。

「ジェルマン指揮官!犠牲者が多すぎます!」

「くっそ……左がわの絵付きはどうなった!?」

「オルトロスいまだ顕在!負傷は与えていますが、犠牲者が多すぎます!」

「下がったところで、教会から糾弾されるだけだ!残された家族の生活を、俺たちが約束するんだよ!」

ジェルマンは大弓を取り出して馬に乗りながら、ひたすら発射して次々に射止めていく。オルトロスが眼前に入る。

「あぁくっそ……いいか、見てろキサマらぁぁ!!これが、兵士というものだぁぁぁ!!!」

大弓でオルトロスに攻撃を放つ。頭部に着弾したと思えたところ、爆発が起こった。その威力は大砲のようでいて、2つある首の片方が吹き飛んだ。

「……!?」

オルトロスのもう片方の首が、再度の爆発で吹き飛ぶ。ジェルマンは、空中に舞い上がる煙から、二人の人間が落下するのが見えた。

「……いまの、アイツらか?」

ジェルマンの後方から、銃声が響き始める。

「受け取った者はすぐに射撃に入れ!補給、装填、射手で別れろ!分隊を再構成、足りない人員は周りから集めるのだ!この戦いで死ぬは、恥と思え!!」

フェリクスが銃を掲げながら、銃に弾丸のはいった小型の麻袋を巻き付けて配布していく。各々がそれを手解き、ベストロに向けて発射していく。次々に撃ち抜かれていくベストロに、兵士たちは歓喜していく。

ジェルマンのもとに、フェリクスとヴァルトが銃器を運び込む。

「ジェルマン、これらを即刻分配したまえ」

「あんた……」

「すべての責任は私で取ろう」

「……招致した」

フェリクスの乗る馬車の荷台に、ヴァルトは銃架を置く。12丁の銃を固定し、銃架を自重で固定しながら12連射する。発射速度は早くはないが、確実に命中していく。

「新人……」

「何ぼぉっとしてんだ。おっさんも戦え!」

「……お前にケツを叩かれる筋合いはない!!兵士よ、今一度立ち上がれ!行動隊の、まことの帰還だ!!」

兵士たちは雄叫びを上げながら、銃声や金属の擦れる音を撒き散らしながら進撃していく。フェリクスが割って入るように指令を出し始めた。

「射手は方陣を組め、横列で一斉掃射だ!!」

横列で並んだ兵士が一斉掃射し敵陣を破壊する。

「そこだ、一斉にかかれぇえ!」

敵陣の穴に、騎馬を中心として流れていくようにして突撃し、次々にベストロを葬っていく保安課の兵士たち、フアンはそれを見ていた。

「これは、流れが変わったという感じですね」

テランスが走りながら反応する。

「やっとまともに戦えるようになっただけだ。後ろにいる負傷者たちの数からして、もう少し遅れていたら壊滅だっただろう……次、来るぞ!!ノイくん!!」

「うん、行ってくる!」

ノイは大砲を担ぎ上げ、ベストロの波を飛び越えるようにして向かい、前方で大きく吠えながら突撃をするベヒモスに向かう。名無しのベストロを踏み、飛び上がった拍子で右手で突き出すように構え、左手で火種を持ち、砲耳を突き刺す勢いでベヒモスの無くなったような頭部にぶつける。刺さったことによる安定感がある間に砲尾に火種を近付けて点火。反動を受け止めて大きく後退し、ベストロ波を戻って着地する。ベヒモスが吹き飛ばされ血と硝煙にまみれながら絶命し倒れ混む。ノイの着地と同時にフアンは砲口から火薬と砲弾を入れる。ノイの側に寄る名付き、二足歩行の羊サテュロスの頭部を、ヴァルトから預かった大口径の銃で撃ち抜き、破壊した。引き金を引いてから時間を空けて発射されたので、フアンは少し体を後退させる。

「これ、とんでもないですね……!?」

「名付き1発じゃん……!?」

「それもそうですが、引き金を引いてから発射までの時間がけっこう長い。ヴァルト、さっきよく当てられましたね……」

「私たちも頑張ろう!」

ノイとフアンの動きを一般の兵士が見ていた。

「おい、飛んでって戻ってきやがったぞ」

「女の子じゃないか……!?」

「負けてらんねぇって!!」

視線が集まっていたのをノイは理解し、恥ずがりながらも次に備えた。テランスは、隊列が装填をしている間、とにかく大砲を担いでは放ち相手の動きを止める。接近と射撃と装填を1人で行い、次々に戦線に穴を空けた。砲弾をあらかた撃ったところでフアンから大剣を譲り受けると、空けた穴に単騎で突っ込んで敵を蹴散らし、名付きをもろとも爆裂する大剣で凪はらっていく。一見前に出過ぎに見えるそれも、後方からある程度飛んでくる矢によってしっかりと援護されており、それはテランスの保安課全隊員に対する信頼もある。

「みんな、撃つのをやめるなよ!?俺がヤバくなるぞ!?」

「了解!!」

テランスは落下してくる矢を避けながら、走り込んで、叩き付けて、赤熱した大剣を振り回し、青が基調の鎧は次第に赤く染まっていく。兵士たちはそれに続いて全身を続ける。空中で飛ぶベストロたちは、フェリクスとヴァルトの射撃によって、遠距離から撃ち落とされていき、兵士たちは空を気にせず、正面のベストロたちに射撃を集中させていく。ヴァルトは12発を連射したところで、フェリクスのに声をかける。

「弾薬、足りる訳がなくねぇか……!?」

「いや、しかと相手の量を見てみろ。冬季第二次デボンダーデよりも、かなり量は少ないように見える。地平に存在する残りの絵柄付きのベストロも、あと3体だ」

「ベヒモス、ケリュネイア、オルトロス……絵付きはまだ数種いるが、見えねぇな」

「我々が後ろから確認したときも、発見はできないでいた。残り数種は、アベランに匹敵するほどの力を有している……」

「そこはもういねぇのに賭けるしかねぇか……」

ヴァルトとフェリクスが奥を覗き、いてほしくないベストロを探すが、いない。

「……」

ノイとフアン、テランスで戦線を破壊して周り、兵士たちも続いてベストロは削られていくだけであった。

甲高く、しかしボヤけた大叫が、地平線ごと揺らす。

「……何、今の、シレーヌ?」

「あれは首を落としたはずだ。内部も、君の特殊な爆弾で、四方に空洞ができている。翼ももいで片翼のはずだ」

フェリクスの視界に、ほぼ亡骸と同然のようなのが、次第に大きく見え始めた。息を呑みながら、しかし冷静であった。

「……規格外【アベラン】、という訳か」

ジェルマンが寄ってくる。

「フェリクス、あんた討伐した……んだよな」

「あぁ、テランスがゲオルギウス像の大剣を利用して、首と胴を切り離した。翼も爆弾で、もいである。絶命したのをこの目で見た」

「……じゃあ、ありゃいったい?」

翼のない、首もない。ただ死体が残る翼の腕や脚の力を頼りに、這いずるようにして、しかし素早く接近してくる。少し前身しては血や内臓がばら蒔かれ、名無しのベストロに群がられて喰われながら、方向を隊列に向けて前身してくる。

「気色わりぃ……あれがアベランか?」

「生きることにただ執着した残滓、といえよう。生きるという行為は、元来ああいった、醜さを内包するのだろうな……」

「野生は生命力の尽きるまで生きるのを諦めない。ベストロもそうだってことか?」

「あるいは、我々への怒りのみを喰らって進む、なんらかの亡霊だ。気を付けろ、あれは音による砲撃を行うぞ」

「あれじゃ喉がねぇ。警戒するだけ意味はねぇだろ」

「しかし、では先ほどの鳴き声はいったい……?」

「他のベストロのじゃねぇってことか?」

フェリクスは、シレーヌがヴァルトによって獣竜と呼ばれたことを思い出す。

(シレーヌ、怪鳥と呼ばれた存在……あれが鳥である所以など分からないでいるが……聖典は只でさえ古い内容が多い。内容の詳細はもはや推測により導くしかなかった。シレーヌが怪鳥と呼ばれる所以は、ベストロが哺乳類に近似する怪物であるということ、飛翔するということ。しかし何より、明確に鳥であるという文言が記載されている点にある。太古の者らは、何を持って、竜などではなく、鳥であると判断したのか……)

フェリクスは、喉という所に違和感を持った。

(鳥……喉……喉??)

フェリクスは、断面の見える喉に目を向ける。肺に空気を溜めるようにそこが萎縮するのを見て、ハッとして指示を出した。

「全体、耳を塞げぇぇぇぇ!!!!」

瞬く間に、瀕死のシレーヌは膨らませた胸から空気を吐き出し、かつてそれは一つの刃として記録された大砲のような音が拡散され、防ぎようのない、音の幕のような散弾として発射される。生臭さすら帯びた広範囲の、鼓膜を破壊するような叫びによって、ほとんどの兵士が耳を塞ぐ。

フェリクスは耳を塞ぎながら、シレーヌが何をもって鳥として記載されていたのかを理解した。

(喉、つまり声帯無しでのあの声量が実現可能……そうか、やつは鳥類のみに備わる発声器官、鳴管を持っているのか、であれば説明はつく。喉を切り落としたとて、肺付近の呼吸器官ごと切り落とした訳ではない。鳴管は呼吸器官にほど近い器官……首を跳ねても残るわけか……!)

最前線の兵士はベストロとの戦闘に集中していたため耳を塞ぐ余裕がなく、耳から血を流して膝から崩れる。そうして無防備になったところにベストロは、耳の悪いのから順に動き出して、兵士を喰らっていった。名前も知らない誰かは首をもがれ、鎧ごと踏みつけにされごと破裂する。泣き叫ぶ中で引きちぎられていき、叩き潰された破片が誰かに刺さり、そうして崩れていった。事切れながら血液を吹き出して倒れる100人以上は、その遺言たる断末魔は、決して声では伝わらず。

行動隊の面々は、一名を除いて被害はなかった。フアンは昏倒し、ふらついて倒れた。うめき声を上げ、ノイが駆け寄る。

「フアン、大丈夫!?」

明らかな異常でノイは担ぎ上げると、前線を突破した名付きのオオカミ、ライラプスが3体も突撃してくる。脚でそれらを蹴り飛ばしながら後ろに下がると、フアンは大口径の銃を構える。発射された弾丸は、いまにも倒れた兵士を仕留めんとする幾体のベストロを貫通し、血のかかった兵士はそれに気付いて、すぐに立ち上がり下がる。

「僕より……僕より皆さんを!!」

「……分かった、頑張って!」

ノイは駆け出して、戦棍を構えてひた走った。一撃にすべてを込めながら、一体一体を凪いで、斬撃のように叩いて、ぶった斬るように叩いていった。ベストロらの頭骨は飛散し、臓物は飛び散り、喰われた人の指も舞い散っていく。テランスはヴァルトを援護するように立ち回り、余裕ができた瞬間に、大砲を撃って空けた穴にまたも単騎で突撃し、大剣を振り回した。炸裂と断裂の連鎖は、名付きもろとも一掃していく。奥からケリュネイアが一体だけ見える。大型であり、しかし取り巻きが見当たらない。

「その角、使わせてもらうぞぉぉぉ!!!」

テランスは装填を済ませた大砲を自身の足元に設置した。ケリュネイアの、土を掘るような突進を、大剣の火薬が染みでる方の刀身を前に、ケリュネイアを受け止めるように構える。

「反応大剣の強さは、守ってこそ強く輝く!!」

ケリュネイアの角の衝突の摩擦で引火して爆発。反射されるようにして角のテッペンにヒビが入り、そして姿勢を崩れたので大き剣を振りかざしケリュネイアの枝分かれした角の一本の根元を大きく損傷させる。大剣から手を離して角の根元につかみかかり、蹴り飛ばしてへし折る。折ったのをよそにテランスは目に接近して、手甲の着いた拳で目を殴打し破壊する。首を下げて、痛みで震えるケリュネイアは全身を動かして無差別に攻撃を開始した。テランスは後ろに下がって大砲を点火、ケリュネイアの胴体を撃ち抜き絶命させると、破壊して折れ、落ちた角に大剣を持って接近する。横たわった角を大剣の爆発で加速させ、平地を、さながら坂を落ちる枝付きの丸太のように転がっていき、道中のベストロで生赤い絨毯を形成した。

再度シレーヌは大叫し、またも全員の動きを封じ始める。フェリクスはヴァルトとジェルマンで会話をした。

「フェリクスっ、このままでは……全滅だ!!」

「しかしっ、シレーヌとの距離はかなりっだ。あそこへ攻撃など……!」

シレーヌは呼吸を始める。

「大砲じゃダメなのか!?」

「ダメだ!旧式にこの距離を抜ける精度はない!!」

「じゃあもう、全員で突っ込むか!?」

「それではあまりに無謀すぎる!」

「ならどうする!?」

テランスはヴァルトの元に駆け寄り、話し始めた。

「ヴァルト、頼む!!あのビリビリのでなんとならないか!?」

「遠くて正確に力を発動できるか怪しい!正確にシレーヌを攻撃したところで、あいつは首無しで生きてるくそ野郎だ!」

「あれを粉微塵に吹っ飛ばせないか!?」

ヴァルトは、雷を落としたときの記憶を思い出した。アマデアに命中して、燃え盛る火の粉のように、雷が落ちた模様を描きながら炸裂し、肉の破片に化けたことを。

「おもいっきり雷でもぶち落とせばなんとか……だが、あのときは至近距離で、しっかりとどこに、誰に落とすかを想像できた……」

「あのときが何かは知らないが、あれがしっかり見える位置まで君を持っていけば良いんだな!?」

「姿自体は見えてる。高いところにいけばあるいは……だが、いまから防壁に向かってる余裕もねぇ……!」

「君が上にいければ、オルテンシアは救われるんだな……!?」

テランスはいきなりヴァルトの武装を取り外すと、両手を縛るようにして、手を強すぎるほどに握る。ヴァルトは困惑し始めた。

「おっ、おい!!なにしてんだ!!」

「君に案があるなら、オルテンシアに希望があるなら。僕は、そのために力を尽くす!」

「はぁ!?」

テランスはヴァルトを掴んで離さず、一瞬浮かび上がらせてから回していく。

「着地は気にするな!!!!」

テランスがヴァルトを、後方に向かって、できるだけ高く放り投げた。その辺りの屋敷や、砦など平気で飛び越えられそうなほどの高さに投げられたヴァルトは、投げ出されら体を安定させ、シレーヌの位置を特定する。

ヴァルトの中で、時間の流れが遅くなるような瞬間があった。

(距離、120……全長、40……身体の中心、確認……頭から体に指示を流せ、明確に、構築しろ……俺を削って、現象を起こせ!)

ヴァルトの体に波打つ光が纏われていく。蛍が集うような、しかし恐ろしく弾けるそれは雷の球体であり、それがヴァルト自身から溢れるようの輝きを放っていく。

(標的、獣竜シレーヌ……現象、雷撃による爆散!!)

シレーヌの喉奥にある殺意とヴァルトは目を合わせた。ヴァルトの視界に入る腕は、だんだんと細くなっていく。

(落雷箇所、背甲……あらん限り最大威力!!)

ヴァルトは、深く息を吸った。

「落ぉちろぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ヴァルトの輝きが放出されるように失われ、落下していく。シレーヌの上空は黒く、そして黄色い光が溢れ始める。

ヴァルトをテランスが空中で受け止める。テランスの着地点にはノイがおり、すぐにヴァルトを預けた。

シレーヌの上空は、一筋に切り裂かれた。テランスは目を輝かせる。

(ヴァルト、君が何者なのかは分からない……けど、きっと君なら、この世界の全てを解き明かせるかもしれない……)

黒い雲から降り立ち、膨大な運動を持った怒りの化身たるが如く空を駆け抜けたその一閃は大地を砕き、打ち滅ぼし、倒れた木々や草木は瞬く間に、火にかけた水のように消える。そうしてシを喪った者の、固い甲殻を打ち破り、黒い体をより黒く、朱色の熱で化粧を施した。宿る熱がやがて内を滅ぼし、倒れて焼けただれていく。

「神……?」

テランスの呟きが、ヴァルトに聞こえる。

「んなわけ、ねぇだろ……それに、体を吹っ飛ばせた訳じゃねぇ。警戒しとけ……」

ヴァルトの頬は明らかに細くなり、声はかすれ、手に力が入っていない。フアンがかけより、状態を見ていく。

「フアン、ヴァルトは……」

「ノイは引き続き、周囲をのベストロを討伐して下さい!!デボンダーデはまだ終わっていません!!ヴァルトはしばらく動けない、いいですね!?」

「……!?」

「さぁいって!一体でも、倒して下さい!」

「……分かった!」

ノイはかけていき、再び戦い始めた。フアンはヴァルトを後方へ下げる。

フェリクスが遠方を覗くと、ベストロたちがシレーヌの燃える死体に寄っていく。

「……」

倒れた肉は、残っている片翼で、炎ごとあたりのベストロを振り払い、浅い呼吸で叫び始める。その怒号は浅く、シレーヌの周囲のベストロのみに放たれた。そうしてそのまま凪ぎはらい隙を作ると、シレーヌは炎ごと喉のみで吸い込んでいき、胸部を膨らませていった。フェリクスが見ているのにテランスが気付いて、シレーヌが立ち上がってくるのを見ると、大砲で前方のベストロの戦線に、少し遠めで穴を開けると、大き剣をひねって火薬を散布し叩きつけて爆発。それに乗って、なりふりの一切を構わずベストロの前線に突貫し、単騎前身を開始した。

「次は、ない……」

名付きの数体が遅いかかるのを、勢いのままに首を狙って凪ぎはらい、振りかざして叩きつけ、半分に引き裂いて、流れるように回して討伐しながら、垂れる血液を雨の溜まりのように踏みしめ、跳ねたのがかかる前に走り出す。右手で握りしめたそれの背に向けて、テランスは大きく吸って叫んだ。

「援護頼むぁぁぁ!!」

テランスの声はフェリクスに伝わり、フェリクスの指示が戦場を包んだ。

「弓兵は曲射にて援護、銃兵は狙える限りでジョルジュの傍のベストロを討伐!大砲も使え、なんとしてもジョルジュを、あそこに届ける!!!」

大楯を中心に横列で、弓兵や銃を兵を背に防備を固めた兵士たちは、槍、剣、槌、大剣や直と剣で、かかる敵を仕留めていく。騎兵は視界の高さを生かして、受け取った銃で狙いを定める。弓兵は弓を斜め上に一斉に構える。フェリクスは肺を大きくした。

「撃てぇぇぇぇぇぇ!!!!」

矢は雨となり、弾丸は面となり、2発の砲弾も飛んでいく。テランスは前方にかけながら音でそれに気付き、振り向きながら走り込む。

(大丈夫、大丈夫さ!!みんなの強さは、僕も知ってるさ!!)

矢の雨はテランスを避けるかのように、ちょうどテランスの周囲や直線上に降り注ぎ、直線上に火力が集中する。弾丸は側面にいるベストロたちや、少し先のを討伐し、大砲の弾着で多くのベストロが吹き飛ばされた。

テランスは開けられた直線をテランスが走り込み、絶えず遅いかかられるのを斬っていくと、第二の支援が届いた。矢の雨と弾幕、そしておよそ二門とは思えない量の砲弾が、間隔をあまり空けないで降ってくる。

「よいっ、しょおぁぁあ!!」

ノイは遠心力を生かして砲弾を投げつけ続けている。狙える間にフェリクスは取り付けられた、12丁の銃で砲弾を射撃し榴弾の弾道を制御。弾着の位置をずらしてテランスの周囲を一掃していく。大砲の爆発で一掃され吹き飛ぶ障害物の間を、撒かれた臓器などの滑りやすいのを避けながら前進。滑り、飛び上がり、角や爪の飛来を体をひるがえして回避しながらシレーヌに寄っていき、大剣を握り込むんで捻る。ひねって火薬で片面を潤す。そうして一瞬だけ上を見ると、ちょうど砲弾が射撃によって弾道を調整された瞬間だった。

(一番早く、一番強く……!)

握り、背負うように担ぎ上げるとすぐに、砲弾の着弾地点に飛び込んで移動。

(背中で爆発を受ける、叩きつける動作無しで、速攻で……直線に吹っ飛ぶ!)

砲弾の爆発で背負った大剣の、外側に向けたのを爆発させる。爆発の直前で浅めに飛び上がり脚を畳み、大剣の速度を背中で受けて加速する。ほんの少し上向きで飛ぶテランスは噛みつこうとするベストロたちを振り切って、喉の内側が見えるシレーヌの、いまだ燃え続ける体との距離を詰めきる。無い首の向きがテランスと合う。

(爆発に巻き込まれるからやるなって言われてたけど、爆破より早く抜けられればいいよな、マルセル!!!)

飛びながら、柄をひねって火薬を出して潤すが、捻る力を極限まで入れることで、過剰なまでに火薬を添付し、もはや滴るほどになる。剣を持った手で、柄を軸に一瞬だけくるっと回転させ、遠心力で大剣の刀身全体に火薬を散布した。

「終わりだぁぁぁ!!」

立ち上がるようにして膨らんだ胸部から散弾を解放しようとするところにテランスは真正面より、砲弾から火を受け取った影響で少し斜めから突っ込んで、大剣の刃を入れた。火薬が燃焼し、爆破までいきそうになる直前で刃の食い込む摩擦で刃から離れ、一閃していく体の、いま斬り裂かれていく傷痕が赤熱に塗られていく。刃が入れられてシレーヌが苦しみを覚えた瞬間、テランスはすでに背後に抜けていや。斬られたと気付いたかのように、水平に7割ほどシレーヌの胴体の上半身と下半身は切り裂かれる。その裂傷跡は激しく、緋色に輝き炸裂。特科礼装とテランスの腕力によるその二連撃の居合いは、シレーヌの肺中の空気の破裂により拡大され、いまだ空中にいるテランスの背で、巨大な爆発を生んだ。爆風で持ち上がった上半身が引きちぎられるようにして下半身と分離され、倒れた上半身に下半身が重なって積み上がる。着地したテランスは、過度の呼吸を引き起こし、ふらついた状態でその死骸に昇る。名無しや名付きのベストロたちは、テランスに驚くようにして警戒し、攻撃を行っていなかった。

「……やったぞ、みんな」

テランスはシレーヌの死骸を上り、頂点に立って、剣を打ち立てた。

「やったぞ……兄さん……やったぞ」

テランスは、シレーヌの死骸の下にいるいまだ多いベストロに視線を向ける。シレーヌの死骸をベストロらが上り始め、テランスに狙いを定め始めた。

テランスは遠方を望むと、フェリクスが血相を恐ろしくし、何か大きく口を開けていた。

「なんだい兄さん、ここからじゃ聞こえないよ……」

「テランス、テランスぁぁぁぁ!!!逃げろ、逃げるんだ!!」

テランスの右腕に、名前無しのベストロが噛みついた。大砲の弾は、シレーヌの傍にいるベストロに届いていなかった。

(ここまで走るだけで、ほぼ全部体力使っちゃったよ……大砲の弾で加速した拍子で、何本か骨もいってる……)

腕から血を滴らせながら、両手で柄を握って捻る。火薬は出なかった。

(火薬はきれた、飛んで逃げるのもできない……利き手はいまやられた。兄さん、俺はそれっぽくできたかな?)

「テランスぁぁ、テランスぁぁぁぁ!!!!」

(怒ってるのかな、あの感じ……)

ゴロゴロと震える音で、ふと後ろを見てみる。

「逃げろ、ケルベロスだぁぁ!!!」

フェリクスが何を叫んでいるのかが、テランスには分かった。すぐ真後で、真ん中の頭が口を開けていた。両脇には周囲を警戒する2つの頭。大きさでいえばオルトロスより2回りは大きく、相応に全ての身体的特徴も巨大な3つ首のイヌのベストロ、ケルベロスがいた。

(絵付き、ケルベロス……そっか、僕はいまから、そうか……)

テランスは兄を見た。ここから頑張れば聞こえそうなほどに奇声をあげるように叫んでいるのが伺える。

(僕らやび僕のことを、フレデリックは何者かであるように見ていた、ありがとう……でも、実際僕は何者でもないって思う。こうして死ぬのが分かって、全てに荷が降りて、最後に分かったのは2つ。僕は、以外と考えられる人間だ。そして、僕は意外と、なんでもないんだって思ってたんだな)

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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