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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第三章 信人累々

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八話 空を根喰みて、怒りを打ち出さん。濁音の刃は黒き鳥に、恐れを与えるを教える

八話 空を根喰みて、怒りを打ち出さん。濁音の刃は黒き鳥に、恐れを与えるを教える


行動隊は、ひたすら走り続ける。西へ、とにかく西へ向かった。道中あるのは骸骨や、首を吊るされた尻尾の骨を有した白骨化した死体など。全て亜人・獣人であると思われる。バラバラなものが多く、それは風化というより捕食後で、時間が経ったためか、別に臭いがあった訳ではなかったが、ノイはその多いのに怖くなった。

「骨、多いね」

カルメがノイの頭を撫でる。

「怖いかい?全部ベストリアンだから気にしないで良いよ?」

マルセルはカルメを見るも、何も言わなかった。フアンが話す。

「村落跡……とは?」

フェリクスが地図を出して、説明し始める。

「エトワール城は、オルテンシア西部における最西端の、現存するこの国最古の城。当時は枢軸議会が多数の使用人を雇い、お偉いさん方のいこいの場でもあった。その付近の村落は、それを支えるために設立された比較的新しい場所で、住宅が例え残っていなくとも土壌などは固く、シレーヌ討伐の仮拠点を設営するのに、おそらくは現在も適している。エトワール城から南下した場所にあるため、禁足地から直線上でない関係上、確率論的にベストロの通り道にはなりにくいのもあって、ここを仮拠点とすることに決定した」

ヴァルトは聞く。

「んじゃ、シレーヌ討伐前に、そこに補給部隊を丸々置いていく感じか?」

フェリクスは首を縦に振るう。

「シレーヌに関しては、いまだに謎の多い存在ともいえる。私も、見たことそれ自体はない。だが防壁上からの目撃証言などからは、ほぼ特徴は聖典に記載されているとおりである」

各員は聖典を持ち出し、絵を確認した。ノイは周囲に首を振り、とりあえずカルメの聖典を覗く。ヴァルトとフアンは溜め息をしながら聖典を持ち出す。ヴァルトは、自身の荷物から二冊取り出しノイに渡した。

「案の定だな」

「あ、ありがと」

フアンが袖を振って聖典を持ち出したので、行動隊の面々は驚いた。テランスが口を開く。

「君の袖は、鞄か何かだろうか?」

「あぁ、確かにそうかもですね?」

「剣もそこから出すが、一緒に出てきたりはしないのか?」

「……いえ?」

ヴァルトが見る聖典の頁には、黒い羽毛が、まるで風にふかれるボロ布のようになっており、またなびく浮浪者の、整わない髪の毛にも見えた。そうした体毛は、剥離か腐乱で削ぎ落ち、残り少ない皮膚や肉を隠しながら、骨にそれは生えているようにも見える。姿勢は前傾姿勢、翼を腕のようにして地面に立てている。毛は羽毛にみえるのでたしかに怪鳥といえばそうである。しかし全体として、トカゲにみえなくもなかった。


挿絵(By みてみん)


ノイはついぼやいてしまった。

「ねぇ、本当にこれベストロ……?」

カルメは話し始めた。

「怪しいってのも……まぁ分かるよ。おばさんも初めてみたときは驚いた。この作戦のために私、エトワール城とかの偵察やったんだよ。あのとき見たのもこういう感じだった。見た目に相違は無し」

フアンがぼやく。

「相違があるときもあるのですか?」

テランスは聞いた。

「名付きはとくに、みんなが思ってるよりずっと怖い見た目してたらしいぞ。しんかだったっけ、すごいよな」

ヴァルトは首を傾げた。

「相手はアベランだ、もっと情報は……」

ヴァルトが聖典を読むと、よく分からない文言が記載されている。

―空を根喰みて、怒りを打ち出さん。濁音の刃は黒き鳥に、恐れを与えるを教える―

「キショイなぁこの文……」

カルメが笑った。

「分かるよ、おも苦しいよねぇいちいち。アベランに分類されるベストロも絵付き同様こうやって、絵と一緒に色々と文言が記載されてる。でも大概は意味不明だね。昔の聖会では一応、生態を表すんじゃとか言われてたけど、具体性にかけるために意味を調査中ってのが、イノヴァドールの見解」

「シレーヌの体は、その表皮が頑丈な鳥ということにしておきますか?」

マルセルが溜め息を出す。

「ところが、鳥にしてはやけに尻尾が長く、しっかりとその骨というのも見えるんです。顔も形も、形状はどことなくトカゲのようで、しかし羽毛に見えなくもない体毛、そして肉と骨が、およそ陸の生き物とは異なる。怪鳥というあだ名は、奇っ怪過ぎる鳥という意味合いです。ヴァルトさんは確かに獣竜と言ったそうですね?」

「おぅ、だからまぁ、竜退治にいく気分だ」

カルメはノイの頭を撫でる。ノイは理解が追い付かず困惑していたのを、少し落ち着いたよう。

「竜って、東陸とかミルワードにある伝承でしょ?おばさん小さい頃に本で読んだよそれ」

テランスは、体が震えた。

「なんかカッコいいな!!!」

マルセルはテランスをなだめる。

「まぁ、分かっていることは実はこれだけで……ですが、それらをなんとヵ踏まえてヴァルトさんと兵士を開発しました。弩に装填し射撃し、翼を備えた肩の骨などを、内側から破壊します」

フェリクスは手をたたく。

「作戦の詳細は村落跡で、ではしばらく休憩だ」

馬は走り、そして車体は震えながら、きしむ。おそらく対シレーヌ用意の兵器、全員が持つ特科礼装……それら部品と部品がぶつかり、金音を響かせる。風は走っているせいでか、西から吹いていた。そして寒い。


2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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