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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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二十話 彼思う、故にいずれもあり

二十話 彼思う、故にいずれもあり


「アマデアの計画した後天計画の裏では、全生命体の殲滅が巡らされていた。有機物・無機物問わず彼女は、すべての存在を神との恋愛を否定し遠ざける敵として認識するようになった。異性愛を成立させうる全ての動物種、同性愛を成立させうる全ての動物種を殲滅することを目的にした彼女は、手近な妹や長年の付き合いのある者すら全員敵に回すことを決意し、しかし悟られずに殲滅する必要に駈られた。とりわけ天使の殲滅は簡単だった、戦いの経験のある兵士と市民の間で摩擦を生めば、簡単に殲滅できたからだ」

「カエルムの殺し合いの話か」

「アマデアは摩擦を生ませるためにある計画を練った。天使の階級・区分について覚えているか?」

「市民【オクルス】、戦士【ミーレス】、統括者【ミーレス】」

「オクルスとミーレスを対立されるために、オクルスとミーレスで労働量に差を付けることにした。第一次べストロ進行後、その土地や文明の総合的戦力をオクルスは図ること、ミーレスは神が乱造してしまった奈落のべストロを討伐することで仕事を割り振った。オクルスの比較的楽な作業難易度・作業量に対して、ミーレスは命をかけて戦闘を行うことになった。結果は……奈落で見ただろう?」

「奈落はかなり広かったが、そんだけデカイところに詰め込まれてたべストロがヤバくないわけないわな」

「ミーレスとオクルスは同時に作業を終えるようアマデアが調節し、負傷した兵士たちがオクルスを見られるようにもした。また待遇や実績評価をオクルス優遇のすることで、怒りを助長した。すると、ミーレスの中から不満が溢れだし、しかしレガトゥスに何かできるワケでもない……オミーレスは怒りを向ける矛先を意図的に間違えさせられ、ミーレスはオクルスを殺しにかかった。数の有利こそオクルスにあったが、ミーレスは実力があった、数もそこそこ……お互いがお互いをすりつぶし、壊滅となった」

「全部野郎の計画だったって話か」

「べストロ・アベランなどの存在は全て、アマデアが言い出した策略でもあった。べストロよりジンルイが強くなる可能性を考慮した最終兵器という立ち位置にして神に実装そたが、実際のところは一斉にドミニを使って暴走させジンルイを撃滅する目的があった」

「……リヴァイアサンも、シュエンウーもか?」

「そうだな」

「じゃあ、もっと死神とかモルモーンとか量産したら一瞬で俺ら殺せただろうが」

「強すぎる敵の実装は、神自身が受け付けなかったのだろう。例えば睡眠や飢餓を誘発するべストロもいた、あるいは繁殖など……サキュバスやインキュバスなどを出せば、早々とジンルイは全滅していただろう」

「……それもそうだな」

「強すぎず弱すぎず、滅びない程度を越えてはいけない。その範疇のなかで、アマデアは配備するべストロの種別の選定も行うと同時に、強敵の選定も行っていた」

「……俺が、のしたがな」

「素晴らしい威力だったな」

「……2つ、確認したい」

「何だ?」


超越者は元の漂いになり、光景は水面の上に戻った。


「……ノイは、メイデントールの家系なんだな?」

「……ノイはメイデントールと、天使の血筋だ」

「……は?」

「1人忘れていないか、天使を」

「……誰だ?」

「エルヴェ・シラク。あれは天使だ、イェレミアス皇帝の妃をたった一目で寝取った怪物だよ」

「頭混乱してきた……だが段々とわかってきたな、俺のことも」

「もう1つとは?」

「フアンのことだ」

「……つまり、なぜべストロとベストリアンが繁殖できたかということか?それは思いを転写するという特性が原因だ」

「意思を転写するっていうな」

「……べストロがもし、ベストリアンに発情したとしたら?」

「……いや、は?」

「……情動とは、対象との間に子孫を残せるという認識を得た上で、性的に興味を持。故に対象は対象と個体が残せることに繋がった」

「……認識の上では繁殖可能だから、事実として繁殖可能になったって話か……」

「そうだ、あくまで認識のものを、自己完結するあいだ全てを事実に昇華させる」

「……じゃあ、それで俺の能力もリンデのことも説明付けられるか?」

「リンデはヴァルヴァラの予想通りのことになる。リンデはヴァルトという人格を形成する要素が抜けたヴァルトだ」

「俺の要素って?」

「……2つある。1つは、幼少のころの経験による、心的外傷後の健忘症だ」

「魔天教の強襲……思いを転写するだったか、じゃあ俺ってのは……」

「幼少のころ少女、ジークリンデであった記憶を失い、ハルトヴィンが君から聞いたジークという名前から、ジークヴァルトとして育てられ、男としての自認が産まれ、男になった」

「親父は」

「……実際に、オフェロスだ。母親はマリー。どちらもすでに失っている」

「……そうだな」

「なぜ彼はあの状態から、蘇生という出力ができたか、それは君の能力の開花と関係する。全ては、思いの転写が関係している。そして、ヴァルト・ライプニッツの要素ともな」

「もう1つの、俺の要素?」

「要素については君が思い当たった方がいいだろう」

「そうか……」

「……だが、能力の開花のついては答えは渡せる。自己肯定の転写だ」

「自分を肯定することが、力をそれごと強化していったってことか」

「……そうだ、そしてその理由こそ、君の要素と言える」

「……そうだな」

「知りたいことは、他にはないか?」

「……あの後、どうなった?みんな大丈夫か?」

「あぁ、無事だ」

「……じゃあ、もういい。さすがに疲れた」


ヴァルトは超越者に背を向ける。


「……私は思う。生きるとは非効率ではないだろうか。眠る、食らう、増えるの循環を維持するのは、生命体として辛くはないだろうか?増えることの辛さは、アマデアや君で十分に見てきた……1つ答えがあるとしたら、それはこれだ。生き物は自然が好き勝手自由に淘汰するだろう、だが生き物として完璧になった場合、自然淘汰はなくなる。そこで、同種間で淘汰が産まれる必要性が生じる……その必要性に、生物元来の欲求を合わせたんのじゃないかと、私は思う」

「そんなけったいなもんじゃねぇよ……まぁ、面倒ではあるかもしれないが……そういう小さな壁を越えていけないと、先がないのが自然なんだ。そういう残酷さを早々に分からせるためのものでもあるんだろうな。まぁ、十分俺にも関係ある話だったよ」

「君の未来はもう決まっているだろう?」

「いいや、アイツの思い次第だ」

「そうか、主導権は持たないのだな」

「……じゃ」

「……もう一度言わせてくれないか、ありがとう……ありがとう」

「勝手に言ってろ」

「……1つ贈り物をやろう」

「はぁ?」


ただ静かに、少し時間がたった。


「……何かあったら、力を使ってみるといい。自分が好きになるだろう」


ヴァルトは視界が雲がかっていった。

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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