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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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十九話 神話の世界

十九話 神話の世界


超越者はノンナになり、光景は機関車の入った格納庫だった。


「神は天使に黙って、次元を超越した場合の座標を知るためジンルイを厳選する計画を進めた。これは、ジンルイに友好的な天使をがいることもあったからだ。思想の分裂が闘争を生み出すことを、神は危惧した」

「……だが、実際カエルムでは殺し合いが起きたと」

「そこまではまだ長い。知っての通り神はやろ過ぎた。しかし何より隠密に計画を進めた影響で、神は天使から結果として行方を眩ませるに至る。すると、天使、いや、アマデアはどうなったかだ。神が行方不明だった期間はたった1ヶ月程度、だがアマデアにとってそれは永遠に等しかった」

「なんでそれがあの悪意に繋がるんだよ」

「アマデアはその一ヶ月の期間の最後の日、自殺を図ったんだ。カエルムから適当に飛び去り、降り立ち、そこで死のうと決意した」

「どこだよ」

「フェリス川上流だ」

「そこって……」

「そうだ、ノイ・メイデントールの家系がいたあの小屋がある場所だ。水死体になる手前でアマデアはそこに住んでいる住人に、アリス・メイデントールに救われた。救われてしまった。その日の夜、アマデアが目覚めるより早く奴等が来たんだ」

「……イェレミアスの兵士、小屋で死体になってたな」

「メイデントール家を滅ぼしたいアドリエンヌの意向を汲んでの情報収集と派兵が、アマデアの自殺と重なったのだ。メイデントール家は確かに強い、だが戦闘は数で勝てる。拳は武器には勝てない……そうしてメイデントール家は子を残して全滅した。子は戦利品として持ち帰ることにしたから、全滅とは言えないが」

「アマデアは……それに巻き込まれた?」

「アマデアを守るために、瀕死になってもメイデントール家は戦った。地下室に安置しておるアマデアの身体に触れさせまいと戦い散っていったアリス・メイデントールは、神がいれば自分の無実を証明できると信じて、メイデントール家ながら聖典教を信仰していたからだ。しかし力及ばず、アマデアのもっとも近くにいて死亡した……ここからは、ややこしい話になる」

「ご自由に」

「……アリス・メイデントールが死亡する数秒前に、アマデアの肉体が死亡した」

「肉体?いま、わざわざ修飾したよな?」

「そうだ、溺れて脳と心臓が止まり、延命措置こそしていたがイェレミアスの兵士たちにより中断を余儀なくされ、そして死んだ……そこまでは私も理解できるところだ。そして何故か……アリス・メイデントールの身体は、アマデアになったのだ」

「それ俺と……じゃあ、アマデアの身体って」

「アリス・メイデントールの身体だ。君とオフェロスのような状態になり、そして身体の主導権が移り変わるように、そうなった……ここで投げ掛けよう。アマデアは、美しいか?」

「……はたから見たら、そうなんじゃねぇの?」

「そうだ、彼女は美しかった。それは神を愛しているからこそ、自分で美しさを学ぶ過程で、心も美しくなっていき、身体に転写されていたからだ」

「神の創造物も、神と同じ状態なのか……?」

「そうとも言えるし、そうでないとも言える。アマデアのこの状況、どう思う?」

「……胸くそも別に悪くはねぇが、答えは1つだろ。兵士はイェレミアス人だったならな」

「オルテンシアでもそうだったように、兵士というのは誰でもなれる職業である。死にやすく、特権などもないことから女性からの人気が低かった。イェレミアスではそれが顕著であり、そして何よりもイェレミアス人は性欲の溢れていた」

「身体を何らかの形で入れ替わったアマデアは、起き上がるその手前で、イェレミアス兵士にもて遊ばれたワケだ?」

「その最中に、アマデアは目覚めた。目の前で恍惚と自身の純潔が奪われ、そして叫び鏖殺した。そうしてアマデアは絶望を抱いたまま、神と再開し、自分の穢れに絶望した。2000年の片思いは、強姦という形で終焉を迎えた」

「それでも、神の計画を利用してヒトを滅ぼす理由になったのかは謎だな」

「アマデアはイェレミアス兵士から学んだのだ。自分の欲求の満たし方を……夢を叶えるのに手段は選べないことを」

「アマデアの不死はいつから始まった?」

「天使自体に、生死の概念は神の意向によりあまり教えられていない。アマデアの場合、強い意思や執着が、生命力を結果として身体に定着させていたのだ」

「野郎は力のことを知っていたのか?」

「知る機会が与えられたのだ。彼女は錯乱のあまり出来事を忘れるという状態に陥った。そのとき、自らの純潔を、何故か身体は取り戻していたのだよ」

「……はぁ??」

「失った正気と狂気が、あるはずもない自分の膜を確認するに至らせた。だが経験で膜がないにも関わらず、記憶を失った状態での確認が、膜の再生を実現したのだ。理解はできんだろうが、追い込まれた生き物とは理解が不可能になることが多々ある。豚が猪を越えることだってあるように、アマデアはそうしたのだ。記憶の喪失を自覚した時点で膜の破損を再び確認し、そうしてついに彼女は【意識の転写】という力と【意識の転送】という能力を自覚したのだ。前者はほとんど、思い込みだったがな」

「転送ったって……」

「質量保存の法則だよ。神は創造の際、生き物の仕組みを意識と肉体で、別々で創造していた。肉体を持つアイオーンだからこその発想だ。肉体が死ねば意識はどうなる?どこかへ移らねばならない、それは墜落する飛行機から脱した操縦士と同じようにだ。そうして死後もっとも近い肉体に意識がうつった」

「オフェロスを追って、ナーセナルに来たのってよ……」

「あぁ、自身と同じ状態になることを危惧したんだろう。彼女自身、どこか理解していたのかもしれない、自身の持つ不確かさにな。そして君は、有効な能力の運用方法に行き着いたというわけだ」

「そこまでして天使を殺す理由なんてないだろでも……」


場所はミルワードの大橋前に来る。超越者はシャノンになる。皿を左手、紅茶を右手に持っている。


「アマデアの目的は……この世界から生き物を消し去り、近親や趣味嗜好を理由に想えない、想われないという現実を全て消し去り、神と交わることにあった」

「……はぁ?」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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