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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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十七話 接吻

十七話 接吻


アマデアの肉塊がひくりとうごめく。肉塊から少し距離を取って、ヨダレを垂らした神が地面に座らされている。神はまったくの反抗を見せず、何も待ってなどもいない。ヴァルトが腰から刀剣を引き抜いた。


「1回だって会話しちゃいねぇが……まぁいいよな?」


ゼナイドの機関銃での射撃が止み、肉塊の一部が盛り上がり、そこを基点として植物の根のように身体が飛び出し再生されていく。頭部から徐々に出来上がっていき、上半身が出来上がった時点でアマデアは触腕を束ねて攻撃を仕掛ける。


怒りを吐露するような叫び声をあげてヴァルトに迫ったが、ヴァルトは首後ろに刃先を着けると、力を入れ、振り下ろす。


肉を裂き脊髄を砕き、皮膚を越えて、ヴァルトの刀剣は神の首を跳ねる。首は落ち着、服は大量の血が覆っていく。アマデアは言葉を、勢いをなくした。下半身の再生が止まり、片足ですり寄っていく、速度は歩くよりも断然遅い。


「主よ、主よ……」


アマデアの中で、神の言葉が響き渡った。そしてそれらは、徐々に消えていく。


(私の勝手で君を作り出してから、丁度千年くらいだろうか?そろそろ、君も他の子らのように自立しても良いと思うんだが……、……、そうか、まだ着いてくるんだね?いいよ、私は親としての責任を、ヒトから、あぁ勿論、あの獣のようなヒトビトからも教わった。……、……一人は不安なものじゃない、私は幾億年もの間一人だったんだ……よく考えれば、私が君を始めに天使を作り出したのも、不安や孤独から来ていたな。……、今?あぁ、とても充実している。だが何だろうな、この、心にポッカリと空いたもの……これもヒトから教わった。どこまでも悪どく、不埒と不自由に自ら進んでいく彼らだが、やはり、学ぶならジンルイだ。……、今は寂しくないよ?いっぱいの子が、いま世界中にいるんだ。……、奥さん?あぁ、そういえば生き物はツガイになるということで共通しているね。でも私にとってそれは意味のないことだ。私に雌雄を決定付けるモノは存在していないよ。まぁ、だからこそ君らには父として振る舞うことで、自分の性別を決定させている。……、そうだね、1人もそうした関係は持ってないね。寂しいと一緒にいたいは別段繋がるものじゃないだろう……、……なんだか目が開いたようだね。まぁ、元気が出たのならそれでいい。じゃあ、旅の続きといこう。あぁ、だがカエルムの一度返るのも一興、さて、君ならどうする?いつものように、意見を聞かせてくれないか?……、名前を呼んで欲しい?あぁ、そういえば君は、自分で名前を決めたいと言っていたね。決まったのかい?……、アマデアか、良い響きだ。どんな意味があるかは、個人のことだから聞かないよ。でも頑張ったんだね、偉いよ、アマデア)


アマデアはずっと、ほんの僅かの永遠に記憶を呼び起こす。


その思い出が悲しみに乗算されていく。アマデアは涙を流し、息を詰まらせていた。息のしかたを忘れたように、思い出すように呼吸をしながら、また黙り、呼吸しを繰り返す。ヴァルトがそこに近寄り、剣を構えた。


(再生が止まってやがる、いや、単純にやってないだけの可能性も……だが、効果はキマッてるみてぇだな)


ヴァルトは手をアマデアにかざし、雷を纏う。


(落雷で火力は十分だな。だが雲の形成と実際に落ちるまで時間差がある。誰にも相談そてねぇが、もう撃っとくしかねぇ。仕舞いだ……!)


アマデアは目から光が失われていく。ヴァルトが纏った雷を上空に放つ。アマデアはその光景に見る。


「……死は、全てを終わらせるわけではない」

「はぁ?」

「……主は、終わってなどいない」


アマデアの横たわった翼が徐々に高くなっていく。


「主を、終わらせるわけにはいかない。主は終わってはいけない……私もまたしかり、私は私に名付けたのだ、アマデアと、神に愛されし女と。私が終われば主はどうなる?私以外でもうだれが主を見て下さると……私は終わらない、私は終わってはいけない、わたしは私に約束した、愛されると、愛すると。愛されないのならばもうそんな夢は捨てよう。だが私は主を愛する、それだけは捨てない……捨てては、ならない!!!」


アマデアの声と共に空間が揺れる。アマデアは小刻みに震え始める。


「己を磨り減らしてでも、己を使い果たしてでも、私は主の為私のため、悲願を果たす。ヒトよ、ヒトに類する獣たちよ、これは撃滅である、これこそが絶望である!!!」


アマデアは心臓を基点に赤く光り始める。周囲の温度が上昇していき、肉の大地は焼けていき、白くなっていく。そうして、アマデアは更に赤熱していく。


「怒りよ!!世界を焼き尽くせぇぇぇ!!!!!!」


ヴァルトとリンデはお互いほぼ同時に雷を纏った。ヴァルトのなかで絶望が沸き起こる。

(くっそ何だ、クソアチいどうなってやがる、熱か?コイツのどこにそんな熱が、機械のエンジンかなんかかよ!!ダメだ、仮にコイツを殺したところで、熱が消えるわけじゃねぇ。殺しても熱が溢れて俺らは死ぬ、殺さなくても、コイツ世界を焼き尽くすとか言ってたな、殺らなきゃそうなる……どう転んでも俺ら死ぬじゃねぇかくっそ……!誰が熱で焼き切ってくるなんて思うんだよ!!最後まで被害者みてぇな面しやがって!!!)


ヴァルトは歯を軋ませ食いしばる。


(全滅、全滅する……何とか、何とか……!!!)


ヴァルトの左側から、ほんのりのした花の香りが沸いてでた。香りで気付いたヴァルトは横を向く。ノイがヴァルトの胸に飛び込んだ。優しく強い包容、ノイは泣いていた。


「最後の最後にやらかしちゃった。やっぱダメだったんだ、復讐なんて……」

「俺はお前に背負わせただけになっちまった……すまん」

ヴァルトがアマデアを見て立っている。ノイはヴァルトの顔を、若干強い力で引っ張る。

「さようならヴァルト……」

その溜めにも似た一瞬で、長い間。ノイは胸に埋めた顔を、ヴァルトに見せる。涙を見せる眼光は、アマデアの照らしにより一層輝いてみえる。

「……大好きだよ!!」


ヴァルトの中で、電流とか違う何かが流れる。痛みのない打撃のような感覚を貰い、心臓の鼓動が耳で聞こえるようになる。


「……お前、こっから先どうしたい?」

「……一緒にいたい!!」

「じゃあ、どうすればいい?」

「……生きていたい!!」

「……そうか」

ノイがもう1度顔を埋めようとする。ヴァルトがノイを強く引っ張り、顔を近付ける。

「……生きるには、まず世界が必要だ。お前は世界を望め……その後だ、応えてくれるなら……俺を望んでくれ」

「……うん!!!」


ヴァルトは雷に包まれ、激烈なほどに発光していく。ヴァルトとノイはお互いゆっくりとさらに近寄り、その場の状態など頭にないような、2人だけの世界を見つめ合う。


そして接吻ののち、ヴァルトたちのいる海域から一筋の光が浮かぶ。ヴァルトの容貌が変わっていた。服の上から光の軸を基点に生える左翼と大きな右腕。すべて鉄や木にバネやネジなどで構成されている。


翼には飛行機に積んでいたロケットを複数装備し、手根骨から生える円筒状の機械から後方へ向かって噴流がある。右腕に備わる銃火器は城や聖堂を支えるかのような柱ほどの太大きさがある。複数の砲身が環状に並べられていた。ヴァルトはリンデの方にノイを突き飛ばす、周囲に鉄の障壁を展開、円柱形の機械内部の回転機構を最大まで上げ、噴流の反動で一瞬でアマデアに飛びかかり、バビロンを海底深く座したような肉の足を引く抜くようにして、そのまま水平線へ消えていった。


ヴァルトは翼を傾け急上昇し雲を貫き、晴らした。遥か上空の彼方、雲で地平線がある場所までアマデアとバビロンを丸い大地の外へ連れ出す。ヴァルトは日の向きに合わせて飛んでいくと、日に向かってアマデアを噴流で突き放した。


アマデアは浮遊し、その日の近くでもう1つ日を作り出すかのように爆発した。


(当たりだったか……こんだけ散々日差し当てておいて、どんだけ熱量持ってるんだって話だ。だいたいあのくらいの距離までアマデアを吹っ飛ばせば、こっちに被害はない……つか、なんだこの状況……ここはどこだ?)


ヴァルトは背に向いた。丸く青い世界がある。


(薄々思ってたが世界って……丸いんだな……)


ヴァルトは衝撃を食らって空に戻されていく。炎で焼ける翼を持った丸焦げのアマデアがヴァルトに掴みかかっている。


「うえぁぁぁぁぁぁぁうううぁぁえあああ!!!!!!!」


叫んでいるが、言語ではなかった。


「さすがに死んでろやこのクソボケカスがぁぁ!!!」


ヴァルトはアマデアの勢いより加速し、アマデアの持つ熱から逃げる。半分以上の頭皮が焼け爛れたアマデアは怒りの翼を展開し、さらに火球や火の雨をヴァルトに放つ。


「肉の次は火かよクソが!!」


ヴァルトは自身の腕に装備した機関銃の銃身を回転数させ、銃弾を連射しそれらを撃墜していく。海面ギリギリで上昇し、アマデアを海へ突っ込ませる。海が沸騰し初め魚が浮かぶと、炎が飛び出てヴァルトを襲った。


ヴァルトは急に転進し雲のなかに隠れると機関銃を放ってアマデアを被弾させた。アマデアは炎の剣を掲げ空を切り裂き、ヴァルトを露呈させ突貫、ヴァルトはまた海面へ逃げていく。アマデアは再度炎の剣を展開すると、ノイや戦士たちがいる方向へ向けて剣を振り下ろした。


ヴァルトはまたさらに転進し急加速してノイたちの元へ帰還すると、鉄の町を海面に形成してそれを止める。ヴァルトは息切れをお越し、極度の目眩に襲われ昏倒、そのまま倒れるところをノイが受け止めた。アマデアは鉄の町を溶かしきる。するとまた熱を溜め込み始めた。


アマデアの心臓部から徐々に赤く輝き始める。フアンはその鼓動に耳を傾ける。


「……弱ってるみたいです!!先程よりは、対処のやりようも……」

「……エヴァリストさん!!」


リンデがエヴァリストとノイに指示を出した。


ノイはエヴァリストによってアマデアに向かって投げられる。さらにリンデは、空に向かって銃を放つと、レドゥビウスを呼びつける。


ノイはアマデアを掴むと首を折って、海面へ姿を消した。ノイは海中深くまで出せる最大の速度で、列車が走るような速度で潜っていく。


水中でナナミに届くほどに声を上げ、ノイは海底にアマデアを叩きつけた。海面へ戻っていくノイは、しかし爆風で海面から吹き飛んでいく。レドゥビウスがそこを掴んだ。ノイの掴まれた反対で、エヴァリストが誰かを抱えたまま、レドゥビウスにぶら下がる。


「おっちゃんに掴まれよ、嬢ちゃん!」


「はい!!」


海表面から底へ向かって崖のように窪み底が見えるほどの爆発のあと、エヴァリストと抱えられた少女が投げられた。


「意趣返だ、ヘマするなよぉぁぁ!!!」


エヴァリストがさらに少女を投げた。その青色の髪の毛をした、そばかすの若干ある少女は、銃剣を突き立てて、ヴァルトが改造した連射できる小銃を構える、その弾倉には逆向きに弾倉が固定されていた。薬室内の弾丸1発と弾倉にある10発を発射し、弾倉に逆向きに再度装填し給弾すると薬室にも弾丸を込め、続けて発砲。22発の弾丸を撃ち込んだ。


(最後一発……!!!)


ハンナはフアンから受け取った次世代式の破壊城釘を左手に装備していた。鉄杭が爆発と共に打ち出され、アマデアの胸部に穴を開ける。


「1人は、特別だったんだから……!!!!!」


ハンナの心に、ピーターの笑顔や困り顔が浮かんだ。そしてその海底に、起き上がったヴァルト、ノイ、フアン、リンデが降りてくる。


ノイは右手で殴り、フアンは二刀を変形し槍にして突き刺し、リンデは銃を放った。アマデアは倒れ、爛れた腕を前に伸ばす。ヴァルトが鞘の引き金を引いて抜刀し、アマデアの首を跳ねて飛ばした。転がっていくアマデアの首。


そして、ヴァルトの中に言葉が溢れてきた。司会がボヤけ、意識は遠ざかっていき、目を瞑った。

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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