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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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十五話 私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう

十五話 私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう


バビロンの片目が光り、4人の戦士が叩き出される。バビロンの片目から光と血が溢れ始め、赤い濁流が潮のように吹き出すと、そこから血管の幕が空に打ち出されるように、そして花を咲かせるように広がっていった。


その飛膜に太い血管が入り乱れ始め、その血管の上に瞳が精製されていく。空を覆い尽くす瞳と血管は、そして一点を見つめた。片目から、声が響き渡る。


「quo vadis domine!!!!!!!????? あぁ主よ、主よ!!そこにおいでですか!?今すぐ迎えに、私が参ります!!あぁ、主よ!!私は、私はあなたが、あなたこそがいなければならないのです!!」


涙を溢す天使は、やや笑顔だった。身体や顔の傷が癒えていく。アマデアは神を複製した眼で見つけ、そして触腕で腹部に刺さった戦棍を引き抜くと海へ投げ捨てた。急激に延びていく一本の腕は煮込まれるように腕を震わせ飛行機に突撃していく。


飛行機は加速し逃走を図るが、近接すると腫瘍になり爆発を繰り返す。ナナミは腹の痛みで踏ん張りが利かず落下し、エヴァリストが救護しに跳躍。飛行機は落下していくが、触腕の束が飛行機を包み込んだ。アマデアは自身の腕を何本も生やすと、骨を触腕に引き抜かせる。幾千もの腕と骨の剣が空に浮かび、根元はアマデアの背中に集約されている。


「私は全ての世界に歩を進めた、私は全ての世界を見てきた、私は故に、必ず勝つ……キサマらのような、傲慢に満ち、嫉妬に狂い、憤怒を噴き、怠惰に溺れ、強欲に縛られ、暴食を止めず、何より色欲に踊る。そのような大罪を孕んでもなお、猟奇的な知恵への傾倒により自らを誇り、群れを束ねる山羊と羊での蟻の巣に成り済ます。私はそのような矮小な存在どもから学んだのだ。叶えよ、ヒトのように。奪えよ、ヒトのように……!!!夢とはなんだ、叶えるとはなんだ?席を奪い合うように、夢とは強者が持つ現実であり、弱者が持つ理想である。強者の過去であり、弱者の奪われた未来である。


排他・廃絶・拒絶・圧政・支配・陵辱・淘汰!!!ヒトはなんら他生物と変わらない、眠りと飢餓と誘惑になど叶いやしない、矮小な弱者だ。そのような者によって作られた常識など、更なる弱者を支配するための言論・思想の統制に他ならない!!産まれるその循環ごと私はキサマらを拒絶する。私は叶えるのだ、ヒトのように。私は奪うのだ、ヒトのように!!」


アマデアは幾千の腕と剣で肉の大地を形成していく。分裂し、空には平面の、肉の列島が完成する。


「だが……ノイ・ライプニッツ、キサマやキサマらの仲間は、絶望の果てに悶え苦しませる!!非合理・非効率がキサマらの特権だと思うな!!死はたいがい1度しか積めない、その恐怖、その屈辱、たった1度で終わるというその贅沢。ならばその贅沢を私は余すとこなく使ってみせよう!!死者を羨むほどの耐え難い苦痛の果てに、キサマらは言葉を失うだろう!!だがそれは良いことだ、言論などキサマら山羊や羊にとっては、場違いな人工物に他ならないのだから!!」


落下していく戦士たちは各々まばらに肉の列島に上空から投げ出されるようにして上陸。ノイはたった1人でアマデアと対陣することになった。


「まずはキサマからだ!!」


ヴァルトとリンデ、ナナミとエヴァリストとフアンが各々揃って島に落下し、合流しながらアマデアを追っていく。


ノイは拳を握り、構えなどなしに踏み込んでアマデアに接近。拳を突きだ出す。ノイは拳がアマデアに当たる寸前アマデアの背部が視界に入る。生える肉の拳が大きく構えており、ノイは横に飛ぶように回避する。


回避後の落下をアマデアは狙い羽ばたいて距離をつめ腹部を蹴る。肉の地面に叩きつけられたノイは、追撃の蹴りを掴みと取るとアマデアを振り回し叩きつけ、脚を引きちぎって空中に投げる。アマデアは即座に肉体を創り出すと、ノイに向かって羽ばたいて風を送る。ノイは脚で風圧を耐えるが、アマデアは自身の触腕から骨の剣を受け取ると、手足を細かく切断し風にのせる。ノイはそれらが当たり地面をえぐるようにして踏ん張る。


(その体制、跳躍しての回避は困難なはず……!)


アマデアは自身の手足をひねり螺旋の網のように引き伸ばすと、その身に足から引き抜いた骨の槍を装填、ノイに発射した。ノイは目視のみで槍を掴み取り投げ返すと、上昇していくアマデアの心臓を貫いた。


(お腹狙ったのに……もしかして、お腹を避けたってこと……!?そうか、上に飛んだのってそういう……弱点、もう狙わせてはくれないかも?)


アマデアは槍の射出器を上空にいくつも精製すると、何本もの槍をノイへ投射した。肉の地面に当たり折れて爆発し飛散する骨の槍。それら全てを脚力で回避していき跳躍、アマデアに掴みかかり、空中から地面に叩きつける。


上空から顔面に向かって落下し踏みつけ、後ろに飛びながらもう一度顔面を蹴り飛ばし、距離を取った。アマデアは立ち上がり飛び上がると、槍の両端をへし折って短くし、引き抜いてノイを睨み付ける。


「単独でここまでの戦闘能力……報告にあった、メイデントールの血縁であることの証明でしょうか……!?」


「知らないわよそんなの!!私はよく分からないことはよく分からない。分からないからあまり考えないようにしてる。その血だったら何よ、私は私よ!!」


アマデアは引き抜いた骨の槍を握り壊す。


「実に合理的、ですがヒトはそこまで合理的でしょうか?あなたなりに背負うもの、感じるものがあるのでは?」

「あるとすれば強い私、ありがとうかしら!?来ないならこっちから行くわよ、アンタをぶっ飛ばしてやるんだから!!」

「あなたが私を分かるように、私はあなたを分かるかもしれません」

「羨ましいでしょ、私まだ好きな人に嫌われたこと、たぶんないんだから!」

「どうでしょう?教会での捨てられていた装備の重量からして、装備していたのはあなたのはず。つまりあなたは数多くのニンゲンを、ベストリアンを殺した。それは障害をかけて少しずつではありません、極短期間のうちにですよね?そのような人格を経験を有するあなたを認めるニンゲンが、果たして本当にいるのでしょうか?今は肯定されるでしょう、ですが1度平和になれば、あなたは大罪に人としての烙印を押される可能性dsってありえます」

「そうしないとダメだった、理解しない人だってきっといる。武器を渡したのはヴァルト、私だけの罪じゃないし、それはみんな分かってくれる!」

「本当にわかっていると言えますか?あなたに殺させた全員が、あなたに罪を擦り付けるための可能性だってあり得ますよね?」

「そうしてて楽しいんだろうけど、話してるうちに私たち固まっちゃうわよ!!?」


ノイが踏み込んで接近する。アマデアはノイの足元から触腕を出して拘束を狙う。ノイは絡み付く触腕を速力で引きちぎって振り切る。アマデアはノイの直上を取って、肉の投射器で槍を発射し続ける。ノイは肉の地面に刺さって形を保つ槍を持ってアマデアに投げる。いくらか槍が突き刺さる。


アマデアは翼を大きく広げ、さらに槍を投射。ノイはアマデアの速度が遅くなったのを見るとアマデアに飛びかかる。腹部に殴打を繰り出すために直進でのが飛びかからせ掴ませると、翼でノイの視界の外にしたいくつかの投射器から槍を放ち、アマデアは自身肺と胸ごと貫く。掴みかかったノイは反応に遅れ、腕や腹筋に脚部などが貫かれる。


(この娘、これでも反応するか……)


致命傷を回避したノイはき流血しながら空中から落下し、肉の地面に転がる。アマデアは羽ばたいて近寄りながら触腕をちぎ骨を引き抜く。転がっていくノイに、引き抜いた骨の剣を構え突き出す。


骨の剣、翼、腹部、頭の順番にアマデアは狙撃され墜落。ノイはふらつきながら立ち上がると、正面にはほぼ同じ服装の男女がいた。


「ヴァルト、リンデ!」


ノイは後ろから抱えられる。抱えたのはフアンだった。


「大丈夫ですか……!?」

「フアン、ダメだって、フアンも怪我して」

「2人に任せるからですよ。怪我の手当てを、お互いすぐ戦えるようにしましょう!ヴァルト、リンデ、お願いします!!」


アマデアは身体を震え上がらせ涙を流しながら、叫んで触腕を凝固させ肉の地面に激突させ破壊。


(もう登ってきたか、なら……!!)


下に、ある別の列島へ落下していく。落下中にリンデが狙撃を繰り返し着地の隙を作る。

全員が着地するとフアンは発煙筒で煙幕を作り出す。少しノイを移動させると、フアンは救急用の包帯と、針の突き出た円柱状の容器を取り出す。


「ノイ、少し痛いですよ?」

「何それ?」


フアンはノイの服の上から針を突き刺した。


「ミルワードの兵士が持っていた、興奮剤です。一時的に痛みを忘れさせますが、忘れさせるだけです。激しく動けば出血は避けられません……ですが、誰かを守ることはできます。僕も一本打ってますから、少し早口かもです、自覚ないですけど!しばらくしたら効いてきます、それまでは待機を!!」


フアンが煙から外へ出る。ヴァルトがアマデアの骨の剣を受け流し、リンデが腕を狙撃し命中させる。ヴァルトは右で構えた刀剣を納刀すると、前に踏み込んで抜刀の構えに入る。アマデアが視界を塞ぐような大きな肉を盾のようの構えたところを、腰後ろに構えなおし逆手で抜刀し、相手の正面にいながら側面から肩を突き刺す。


引き抜くようにして納刀すると、崩れたところに、鞘の引き金を引いて抜刀し、刀剣を射出しながら抜刀。熱で断面を燃焼させながらアマデアを上半身と下半身に分けて抜刀した。リンデが飛び込みながら頭をさらに撃ち抜いて、さらに頭を蹴り飛ばす。


アマデアの首は空に投げ出された。落下していく首から身体が生えると同時に、アマデアは骨の剣を正面腕から引き抜いて全体を見渡す。列島の1つから爆発が起こり、テランスが燃える大剣を両手に飛んでくる。


「よいしょーーー!!!」


テランスがアマデアに向かって爆発して飛び込む。アマデアの剣を打ち払った衝撃でもう一度大剣を爆発させるとアマデアは全身が燃え盛る。


燃えた腕や脚をアマデアはテランスに投げると、脚を生やしながら旋回し風で炎を消す。テランスが後ろに爆発で吹っ飛んで着地すると、隣にナナミが立った。


「隙を作れ、妾が切り伏せよう」

「任せたぞニンジャさん!」

「ヤツの動き、不死にかまけておって雑多じゃな」

「そうなのか……!?」

「命を感じぬ敵など恐るるに足らん、妾に合わせてヤツを吹き飛ばせ。時間さえあれば妾たちは勝ちじゃ」

「勝てる算段があるんだな!?」

「あの罪人曰くじゃがな!」


アマデアが首から身体を生やすと、投射器を成形し槍を投射してくる。テランスが大剣を盾に槍を弾いていく。アマデアが羽ばたいて突っ込んでくる。アマデアから見てテランスのそばにいたはずのナナミが消える。


(……どこに!?)


アマデアが極めて低空で突撃してくる、その直下にナナミが滑り込んで視界から消えていた。ナナミはアマデアの直下から胸を突いて動きを封じると、テランスがそこに踏み込む。アマデアは側面に羽ばたいて自分を刀で切りながら回避する。


ナナミは正面から刀で切り込み牽制、大きく振り上げる。アマデアは触腕で刀を掴むと、いっきにナナミとの距離を詰めた。


(……かかった)


ナナミはアマデアの懐に飛び込んで下から顎を腕で打ち払って頭を強打し揺らし、昏倒させる。アマデアが落下し上向きになったところを、地面に腹部ご刀でと貫通させ固定。


「今じゃ!!渾身でかませ!!」


テランスが大剣の側面をアマデアの顔に向けて振り込み、肩を回して首を打ち放った。空に飛んでいった首はナナミの攻撃により意識を飛ばしていた。


(……いくら不死といえど、脳があるなら気絶は免れんはずじゃ。これで時間を稼いで……じゃが、あとはあの爺やども次第じゃの)


列島のどこか、肉に拘束される飛行機に向かって、エヴァリストが首の骨を鳴らす。


「俺を止めたきゃ、鉄以上のなんか持ってこいや、おらぁぁ!!!」


殴打、殴打、殴打を繰り返す。脆くなった肉を掴む取ると引きちぎっていく。いくつもの筋の障壁を越えて、エヴァリストは内部からゼナイドと、神を取り出した。


「テオ、大丈夫か!?」


エヴァリストがゼナイドを叩くと、ゼナイドは起き上がり腰に備えたリボルバーを取り出す。その視線の先にはアマデアの首があった。アマデアは朦朧としたなか、それでも神を知覚し、叫び散らす。


「主よ、今お迎えに上がります!!!」


アマデアは肉体を作り出すと、羽ばたき1つで神まで距離をつめる。エヴァリストが側面から殴り付け吹っ飛ばし、アマデアはそして硬直した。ゼナイドは神のこめかみにリボルバーを突きつけていた。


「あなたをこちらの本陣へ引きずり出すための奪取作戦です。当然、手中にあるならこうしますよね?力に力、命には命、大切なモノを奪うならば、失う覚悟があってこそです」


アマデアは顔を真っ青にする。


「やめろ、やめろぉぉぉ!!!!」

「アマデア、あなたは命を奪う算段を考えるのは、きっとどの者より優れていたのでしぃう。ですが残念なことに、命を守る算段を立てるのは下手なようです。我々を苦しめることを主目的とし、大切な者を後回しにした……非合理は愚者と聖者の特権であり、それは欠点でしかあり得ません。あなたは優先順位を間違える愚者だった……さて、今度こそ冷静に考えましょう、ここからどうすれば、この者が助かるのか……」


ゼナイドの腹部が神の腹部ごと貫かれた。


(不覚、そもそもこの者は自らの幸せを願い、自らが大切とする神の計画すら破綻させた者。先行……彼女の執着という印象に囚われていた。なんと愚かなのだ私は、彼女はまったくといっていいほどに、自分本意なのだ!!)


ゼナイドを貫いた触腕は、その部分だけ引き抜かれる。神を貫いたまま触腕ごと回収していく。


(……あの者、意識がないというより、意識を保っていなかった。腕の部位にある噛み跡のようなものは、あるいは注射器の類いのだったか?明らかに異常だった唾液の分泌量とあえぎ声、あれは……中毒症状……??)


ゼナイドは腹部を押さえながら、アマデアに銃を向けて発砲。胸部を何発も貫くが、アマデアは気にしていなかった。神に銃口を向けた瞬間、アマデアは神を抱き締めた。


「……あぁ、主よ、主よ!!!」


明らかに興奮を示す声色と挙動をするアマデア。眼をみ開いて、胸元の深く沈みこませるようにするアマデアは、より強く興奮していき、瞳孔は定まっていなかった。アマデアは腹に穴の空いた神を背負うと、にやけ顔が止まらなくなっていき、必死に堪えながら笑い始める。


「Amor omnibus idem, Nihil difficile amanti,Omnia vincit Amor……Ad astra per asperais【愛は全てに等しく、恋する者には難事なし、愛は全てに勝つ……困難を経て栄光へ】


アマデアは神の手を胸元の前で組ませると、自身の髪の毛をちぎって、紐のようにして強く縛り、さらに触腕で握り、強く自身と固定した。


「Aut viam inveniam aut faciam.」【私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう】


アマデアは背負った神に押し潰される翼を強引に羽ばたかせ、高く飛んでいく。大きく翼を広げると、触腕から骨の剣を引き抜いて、顔を半分隠すように剣を構える。アマデアは、眼球が浮き上がるほど目を開き、笑っていた。


「レトゥム・ノン・クワド・フィニット。アンフォラム・インプレオ・アクアェ・プアレ!!!」


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