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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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十三話 熾纏刀う不倶の大戴天

十三話 熾纏刀う不倶の大戴天


ノイとリンデが片目へ突入していくのをゼナイドが確認、そして旋回し赤龍を捉える。


「赤龍は……」


エヴァリストは赤龍の甲殻に、大剣に着いた分銅を叩き込んで、繋がった鎖を身体に巻き付け自身を安定させると、大剣を叩き込んで甲殻を破壊してまわっている。


「ったく、効いてる気がまったくしねぇ!さっきの吹っ飛んでく兵器だって、傷付けただけじゃねぇか。なぁんか効いてる感じ、あったのによぉ~!」


赤龍が飛行しながら海面に背を向け、回転しながら旋回し始める。エヴァリストは落下し、鎖と分銅で赤龍に繋がれる。


「あっぶねぇ~!!つかくっそ痛ぇ~!!」


遠心力で鎖が絞まっていき、エヴァリストの足が痛み始める。


「うあぁくっそ、だが……」


エヴァリストは鎖を掴んでひねり壊すと、遠心力で赤龍から投げ出された。


「テオ、頼むぜぇぇぇぇぇ!!」


ゼナイドが降下しながら加速していき、宙を舞うエヴァリストを複葉で受け止める。音を立てて盛大に転び落下しかけ、複葉を掴んで投げ出される体を押さえた。


「お前ぇ、さっきみたいにもっと丁寧にだなぁ!?」

「あなたに丁寧であれるほど、私は紳士ではないようです。しっかり掴まっていて下さい!!」


赤龍が追跡してくるなか、ゼナイドは舵を切って回避を繰り返す。至近距離で火球を溜めてくるのを見ると、ゼナイドは尾翼を若干左右に揺らして赤龍の照準を反らす。


発射と同時にゼナイドが急降下し加速、火球を回避すると赤龍は熱に被弾してしまい距離を取る。バビロンのそばで旋回し、待機を始めた。エヴァリストは後部座席に戻る。


「ひどい目にあったぜぇ、あっちぃ~」

「自身を縛られていたので、先ほどの動きは正しかったですが……鎖と分銅がない以上、赤龍に取り付いての攻撃がもうできません」

「この、ひこうき?を足場にすればいいじゃねぇか」

「先ほどもそうでしたが、操作が簡単ではないのです、そう何度も受け止められるかは怪しいです。それに、燃料もかなり少なくなっている……燃料の補給をレドゥビウスに頼みたいが、どこに……?」


レドゥビウスは全身血塗れになりながら、飛行機のそばに着いた。神が目に入り、驚く。


「親父……ついに取っ捕まえたか」

「レドゥビウス、補給を」

「それもいいが、ここで戦力強化だ」


レドゥビウスは背中に燃料を入れた容器を背負いながら、機関銃などではなく、両腕で人員を2名連れてきた。


「先生、来たぞ!!」

「やたらな大きさの龍じゃ、心臓の音が大きすぎる……」


テランスとナナミだった。エヴァリストは顎が外れそうなほどの顔で、ナナミを見る。


「なんじゃ?そこの爺や」

「えぇあぁええっとそのニ、ニンジャがなんでここにって……いやぁおったまげた」


エヴァリストの視界に入ろうとテランスが暴れる。


「先生、僕も来たぞ!?」

「えぇあっ、おぉお前もいたか……えぇぁお前もいたのか!?」

「気付いてなかったのですか!?」


片腕をレドゥビウスと繋ぎ、背中に片面ずつで色合いの違う大剣を背負っていた。ナナミは長い、鍔のない刀を握っている。複葉に下ろすと、レドゥビウスは飛びながら飛行機の給油をあけて、若干こぼしながら燃料を入れていく。


「で、あの龍はなんだ?」

「ヴァルト少年らの避難が完了していないため付近で待機しなければならないのですが、あれが邪魔です」

「俺は周囲のベストロを片付けるのに忙しい、コイツらでなんとかならねぇか?」

「どうでしょう……」


ナナミは耳飾りの鈴を鳴らした。


「テランスとやら、お主の得物は発破するんじゃよな?」

「そうだな!」

「なら、いけるんじゃないかのお。聞け、皆の衆」


ゼナイドが全容を聞くと、ナナミの指示ですぐに体制に入る。


「……了解」


エヴァリストが大剣を鎧で擦って磨いで、背中に背負う。拳を付き合わせた。


「おっしゃあ、いっちょかましてやろうぜ!!」


ゼナイドが飛行機を加速させると同時に、前方に備えた二門の機関銃を放つ。赤龍は滞空しながら火球を口膣内に溜め込んでいく。


エヴァリストはナナミを刀ごと抱えると、テランスの大剣に飛び込む。足に装備した鎧の鉄素材を大剣にぶつけて赤熱させる。テランスは柄を強く濁りひねる。赤龍が火球を放つと同時に大剣に火薬と油が装填され、発火し爆発する。


ナナミを抱えたエヴァリストを、火球の飛んでくる軌道から若干上、放物線を描いて飛んでいく。火球とすれ違い、エヴァリストはナナミの腕を握る。何度も回転しながら飛び込んでいき、エヴァリストはナナミを赤龍の口に向かって投げる。ナナミをは刀を構える。赤龍は、その速度を認識していない。


(飛び台代わりにテランスの大剣とあの爺の怪力……速度は十分、突き殺す!!)


ナナミは投げられるとほとんど同時に赤龍の頭部に到達する。ナナミは脇を閉めて腕を引いて体勢に入り、甲殻や鱗を貫通して赤龍の頭を突き刺した。深々と刺し、人2人ほどの刀身が脳に入り込んだ。赤龍は叫びながら、全身の挙動が狂い始める。


(脳の損傷は、少なからず生き物であれば致命であろう。過去、頭無しでも動いたヤツもおった話があるが、例え同じであっても一瞬、挙動は狂うはずじゃ)


エヴァリストとテランスがまた飛行機に乗って赤龍に飛び乗ると、それぞれ左右の翼に向かう。両名は翼の根元へ向かうと攻撃を始めた。


テランスは柄をひねって火薬を充填し、叩きつけて爆発を起こし鱗を剥がして肉を露呈させる。テランスは更にそこを斬って、右翼の関節を破壊した。ナナミは赤龍の脳をえぐる。


「……お主が例えどのような生命力であれ、落下した先の地獄には耐えられまい!!」


エヴァリストは大剣を突き刺すと拳で叩き込んで突き刺し、踏みつけてえぐり関節を破壊。そのまま左翼を断ち斬ると、左翼を掴んで持ち上げる。左翼を右翼に叩きつけて根元から翼を千切り飛ばした。エヴァリストが翼を投げ捨てると、大声を上げた。


「テオおぉぉぉ!!!!」


ゼナイドが赤龍の直下を通り過ぎ、全員を回収した。


赤龍は空中から海面へ落下していく。海面はすでに赤々とした肉どもに制圧されていた。赤龍はその大地に落下し、そして侵食が始まった。手が地面から伸びるようにして赤龍に絡み付いていく。半身から全身へ艶かしく纏わりつくそれら捕食者は赤龍を呑み込んでいった。飛行機の上で、各員が喜んでいる。


「おっしゃぁ、ニンジャ作戦セイコーだぜ!!これが忍術ってやつか!!」

「いや、そういう訳では」


テランスとエヴァリストが同時にナナミの背中を叩いた。


「凄いぞナナミさん!どうだ、僕の兄さんと結婚しないか!?」

「なんじゃ急に2人して、妾はそんな餓えておらんわ……」


バビロンの片目が光り、4人の戦士が叩き出される。バビロンの片目から光と血が溢れ始め、赤い濁流が潮のように吹き出すと、そこから血管の幕が空に打ち出されるように、そして花を咲かせるように広がっていった。


その飛膜に太い血管が入り乱れ始め、その血管の上に瞳が精製されていく。空を覆い尽くす瞳と血管は、そして一点を見つめた。片目から、声が響き渡る。


「主よ、主よ!!そこにおいでですか!?今すぐ迎えに、私が参ります!!あぁ、主よ!!私は、私はあなたが、あなたこそがいなければならないのです!!」


涙を溢す天使は、やや笑顔だった。身体や顔の傷が癒えていく。

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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