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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天 二幕

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八話 揚力式回収装置

八話 揚力式回収装置


エヴァリストが火事場に訪れる。大きな音を出して扉を開けると、ヴァルトは白紙の設計図の前で立ち尽くす。ノンナが羽根筆を持ったまま椅子に座り込んでいる。


「……あんま進んでねぇみてぇだな」

「そう柔いモンは作れねぇからな、そばにはアマデアがいる。いるかも分かんなぇ神をどうこうしようって話な訳だが……やりよう、択が多すぎてなぁ。それにまず、あのバビロンっつうヤツに向かっていかねぇといけねぇ。船にしたって遅すぎるし、あのベストロどもを耐えられるとは思えない。あるとすりゃ空だ。俺たちは飛ばなきゃならねぇ」

「……飛べるってなったら、どうする?」

「……おぉ?どういうことだ」

「テオ、いや……ゼナイドがミルワードからここまで来るために使った、飛行機っつうモンがある……本人のじゃねぇ、姉貴の……テオフィルの減刑があれば、飛行機の場所を教えるってことだ」

「……減刑に関しちゃ俺がどう言えるわけねぇだろ」

「ボウズの口から……なんだ、話を通した方が、通りやすいと思ってよ」

「本当にお前が思ったことか?ゼナイドじゃなくて?」

「……あぁ、えっと」

「……いや、まて?」

「なんだ、いいのか!?」

「そうじゃねぇ、飛行機の性能を聞きたい。飛行速度、搭乗可能な人数だ」

「人数は……二人だけだ」

「少ねぇ、話にならねぇな」

「だが速度はある。鳥くらいは早ぇ」

「速度はある、か」

「……ダメそうか?」


ノンナが羽根の設計図を描き始める。エヴァリストがノンナの隣へやってきた。


「どうやって飛んでるんだろ?」

「聞いた感じでいえば、なんかプロペラっつうのがあるらしいぞ」

「何それ?」

「先端?に着いてる、羽をこうグルグルさせるみてぇだ」

「どうやってグルグルさせてるの?」

「あぁ~どうやってんだろうな……話にあった、エンジンっつうのが関係してんじゃねえか?」

「エンジン?ボイラーみたいなものかな……そうか、動力源ってことだ!じゃあじゃあ、エンジンでプロペラに運動を伝えて、推進力を得てるんだ!!翼で空気を掴んで滑空する感じなのかなぁ~??」

「……嬢ちゃん、楽しそうだな」


ヴァルトは設計図を考え始める。考えながら、フラフラろ歩くと、羽根筆を持って投げてみた。


「……だが2人ってのは少なすぎるな。分隊一個は乗せたい、操縦士以外で4人だ。俺、ノイ、フアン。リンデは座席として、神様を奪おうってなら5人になるか?だが人数を増やそうったって、そもそもいじっちまったら、無作為性の原則で性能が落ちる可能性も……それに今からいじるのも時間がねぇ、なんか他の方法で人数を……」


ヴァルトは外を見る。馬車が通っていた。


「……後ろに貨車?いや無理だ、場所は空」


エヴァリストが思い出す。


「……空っていやぁなんだっけな、飛行船っつうのもあったぞ?」

「なんだそりゃ」

「揚力っつうので空に浮かぶ、クソデカイ船だ。ガス、だったけ?そういうので浮いてるって……俺が聞いてきてやろうか?」

「ガス?」

「あぁ」

「……つまりあれか、軽い空気ってことになるか?」

「空気が軽いなんてことあるのか?」

「水の中に油入ったら浮かんでくるだろ?空気だってどうせそうだ、色んなものには重さがある。つまり揚力っつうのは、空気より軽い空気で浮かぶってことだ」

「お前すげぇこと考えるんだな」

「……いや、ありだな」

「どうした突然」

「……そうか、それでいける。人員を飛行機で浮かせればいいじゃねぇか」

「お前何言ってんだ……?」

「神を回収するのは揚力ガス、それでいける!現地でガスと携行品でクソ小さい飛行船作って、軽い空気で浮かべられれば、浮かんだその飛行船ごと飛行機で回収!これでいける!」

「……あぁ?」

「エヴァリスト、野郎に話つけろ、俺がヴァルヴァラに言って、死刑から終身刑にへ減刑させる」

「マジか!?」

「揚力式回収装置……開発開始だ」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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