二十二話 Rest in peace
二十二話 Rest in peace
雨の降るなか、ヴァルトたちはイェレミアス方面へ光を放つ弾を発射する。その伝達は斥候を伝ってイェレミアスへ、そしてヴァルヴァラやユリウスの元へたどり着く。
「……成功、か」
「やくやってねぇ、ヴァルトくんたち」
「あの戦列はどうする?ユリウス」
「成功ってことは、事前の移動手段が保証できているってこと。後方から道筋を辿って包囲、無血で行動停止までいけるはずだ」
「……そうか」
「戦争は終わった、でも……海岸線にとんでもない化け物がいると報告を受けている。ミルワードの方々の話も統合すれば、正体はバビロンという怪物だそうだ」
「……どう勝つかを考えなくてはな」
「ミルワードの総人口をそのまま兵器として投入しているようものじゃないか、でもやるしかないね」
「それだけではない、肉を吸収するような能力がある以上、ミルワードからここまでの海洋生物全ても敵になる」
「最後の敵はニンゲンとサカナの混成部隊とか、どうなってだか」
「最後かもわからないのが、より恐ろしいところだ」
「どうやってベストリアンを奮い立たせたのか、そもそも誰が武器を持ち込んだか……いや、全部後回しだな」
ユリウスの邸宅、図書室。レノーは、机に向かって頭をかいているなかに、ミルワードから来客の二人が現れる。
「レノーさん、何かお手伝いできることは?」
「あぁ、えっと……シャノン様と、ムタリカ様とですね?」
レノーは立ち上がると、たち眩んで壁に手を当てる。ムタリカが駆け寄る。
「大丈夫ですか……!?」
「いえ、その……」
机には、一冊の書籍と無数の書き損じがあった。ムタリカはその1つを手に取る。
「……暗号?」
「分かりません。ただ、現状これは残された最後の手がかりなんです」
「どのような暗号なのですか?」
レノーは、ヴァルヴァラから渡された一冊のイェレミアスの歴史書を渡した。所々二重線が引かれたそれと、一つの書き残しがあった。
【安らかなる眠りこそ、企みを露にする。海を越えた先、朧気なる言葉は、後天を嗣ぐ】
ムタリカが顎に手を当てそれを復唱していると、シャノンが席に座る。
「言葉を整理していくと、重要そうなのじゃ安らかなつ眠りと、一対を嗣ぐじゃないかな。他の言葉は答えにたどり着くまでの道筋……君のメモ、読んでもいいかい?」
「……えぇ、どうぞ」
シャノンは全ての書き残しに目を通していく。
「おそらく、これは至って単純な暗号な可能性がある」
「ちょうどそれに関してお聞きしたかったのです。海を越えた先、朧気なる言葉、これはおそらく、ミルワードの言葉を意味しますよね?」
「うん、そうだね。しかしそうなると、気になるのは朧気なるという点だ、朧気とはなんだろう……いや、君のメモにあったな、朧気の意味……形状の不安定さかも……待ってくれ、少し」
シャノンはイェレミアスの歴史書を持つと、指差しで言葉を繋げていく。
「……いや、そうなのか?だが……」
「何か分かりましたか?」
「……なんとなく」
「本当ですか……!?」
レノーは立ち上がりまた倒れそうになる、目のクマが酷い。
「……どんな?」
「いえ、でも何も分かりません……まず、僕の知る限りの方法で当たってみた感じだと、おそらくミルワードにある暗号の1つに類似点がありました。方法は、多表式の換字式暗号で、鍵の周期性を利用して、逆向きに解読していきます。問題は鍵だったのですが、安らかなる眠りこそという文章から転じて、ある言葉を当てはめてみたんです。ミルワードにはこんな言葉を墓石に刻むことがあります。Rest in peace.その単語を暗号鍵に使いやすくしていくと、R.I.P……RとIとPを鍵として使って解読していくと……あぁ、やっぱり分からない。それかもしれない文章が出来上がりますが、おそらく言語が違います。誰か、この言語を知る人が必要です」
出来上がっていく文章は、レノーを輝かせると同時に倒れさせた。
「一瞬で、先を……越された」
「いや、学術で覚えただけですのでなんとも……」
「……悔しい、なんて久しぶりに感じましたよ」
「えへへ……でも、やはり出来上がる文章の意味は分かりません。ひょっとして、古典の言葉では?アドリエンヌ語やイェレミアス語には、言語の元はありませんか?」
「いえ、そのようなものは」
「誰か、言語に詳しい方は……」
邸宅の庭で、衝撃音が鳴り響いた。ユリウスや兵士が現場に駆けつける。斧槍をかかえ、腹から血を流す天使がいる。
「君は……!」
2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。




