十六話 母として
十六話 母として
いくつもの死体の搬送や指示をクロッカスの住人とドルニエに任せ、ノイとリンデは負傷者がいると話され、酒場の二階へ上がっていく。階下に降りていく橙色の亜人とすれ違う。
「ノイ!それにあなたは……いや、とにかくお願い。パメラの側にいてあげて、撃たれたんだけど、いま1人にしちゃってるの。倒れたりしたら危なくて……!」
すれ違いながら話している亜人は、階段の途中で転んで階下に落ちた。
「……分かった!」
ノイとリンデは二階へ上がる。
「……さっきのって、メロディさん?なんか、記憶の中でもやらかしてたような」
「剣咥えながら喋ってたよ、面白いよね」
廊下をほんの少し歩いたところで、大きな音がなった。唯一空いていない部屋の扉は、リンデが開けようとしても動かない。扉の奥からは、女性の荒い呼吸が聞こえる。
「パメラさん、大丈夫!?」
リンデが声をかける。
「大丈夫です!!ええっと、その……」
声はそこで途切れた。
「ノイ、ここ開けて!!」
ノイが把手を握り、思いきり扉を強く押した。立て掛けてあったような棒きれが弾けるように壊れ、扉が開け放たれる。
真正面の寝台から横に、太ももから血を流す、ヒトの女性がいた。リンデは駆け寄り、止血を開始する。付近には短剣が転がっている。。リンデとノイで脚部の股関節あたりを強く締め上げ止血をし、寝台に寝かせて治療に入ろうとする。廊下から、慌ただしい足音がし、リンデはノイに扉を閉めるよう言った。
「えぇ、なんで!?」
「いいから!!」
ノイは硬く扉を閉じる。奥からメロディが声をかけ続けている。リンデは懐から道具を取り出しながら、女性と目を合わせる。
「……パメラさん、だよね?フアンのお母さん……ってことは、フアンの父が獣人だったりするのかしら?」
「えっと……」
「何かおかしい気がして……だから、ノイに扉を守らせてる」
「……ありがとう」
リンデは水を取り出して傷口にかける。血を流して傷口を確認する。傷口はえぐれていた。
「自分で取ろうとしたの?」
「……うん」
「……さっき、メロディって人が階段から落ちたわ」
「あらあら……」
「……部屋から出して、その間に怪我を……みたいな?」
「なんでそう思うの?」
「なんでだろうね、でも……そう記お、いや……聞いた話だと、一人称がお母さんって聞いたの」
「……」
「そりゃぁ自分の子供にだったらね?そうなるのも分かるの……でも、ノイとかヴァルトとかがいるときだって、同じように答えてる。なんだか、言い聞かせてるみたいな……」
「……言い聞かせ、か」
「あなたの姿を見て、メロディは怪我人を1人にして慌てて出ていって……ひょっとして外見とかに秘密?があるのかなって、だから、何か理由付けてメロディを部屋から出した?で、その……本当に一瞬だけね?思ったの……」
リンデは鑷子を使って、弾頭が斜めに骨に食い込んでいる、鋭い弾丸を引き抜いた。
「……本当に、お母さんなの?って」
「若い子って、すごいのねぇ」
パメラはリンデの耳元で、若干息切れした状態で声を出した。
「……じゃあ、フアンの母親って……!!」
「……そう、マリー。マリーおばあさんよ」
「……じゃあ、あなたは」
「生んではいないわ。でも……育てたわ。一生懸命」
「フアンには、言ったほうがいい?」
「いいえ、ダメよ。あの子はとても繊細だからきっと……」
「……えぇ、でもきっと、もっとあなたを親として尊敬すると思うわよ」
「でもあの子は」
「子供扱いしないでよね、フアンはちゃんと」
「そうじゃないの……えっと……その……」
「……??」
「……あの、えっと」
階段を慌ただしく上がる足音。そして聞き覚えのある声が響く。
「ノイ、リンデ!!お主ら、マリーを知らんか!!」




