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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第7章 世々後天

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五話 撃滅

五話 撃滅


ハーデンベルギア南部の森を通過し時計回りにレルヒェンフェルトを目指す一行は、道中に見かけた敵補給地点や駐屯地を、あくまで小規模なもののみに限定して強襲をしかけ続ける。


軽度に負傷する者もでてきはしたがそれでも、戦果としては上々だった。兵士たちに疲労が見えたころ、狼煙の上がる敵の中規模な駐屯地を発見する。


アル=ライスが双眼鏡でそこを除くと、黒を基調とした荘厳な軍服を着こなす兵士が何人もおり、1人はギムレーのある方角を覗いていた。周囲の亜人・獣人の兵士は生き絶えており、それらの小銃を回収しては、不馴れな手付きと驚愕の視線でそれらを見ている。ヴァルトとフアンはそれらを確認すると、先行して近寄っていった。


「フアン、あれってよ」

「えぇ、ナハトイェーガーの方たちですね」

「何だっけ、名前」

「イグナーツさん、ドルニエさん、メッサーシュミットさん。ナハトイェーガーは現在、事実上はユリウスさんの私兵です」

「どれが誰だったか……」

「イグナーツさんとメッサーシュミットさんは兄弟です。ドルニエさんは、たぶんお酒が好きですよ」

「……とりあえず声かけてみっか」


後背の兵士たちに事情を説明し、ヴァルト、フアン、ノイ、シャノンでそれらイェレミアスの兵士に接近した。懐かしい姿に、イグナーツが手を振る。


「アンタたち生きてたのか……!!」


嬉々として走るイグナーツに、メッサーシュミットが合流した。


「紹介するぜイグナーツ、コイツらは」

「協力者、ですよね?でも……彼らはバックハウス邸の襲撃で消息が」

「消息不明となってもう1ヶ月くらいか……で、そこの嬢ちゃんは?いや、えっと、どっちだ?」


シャノンはミルワードの形式に沿ってお辞儀をする。イグナーツは驚いた。


「ミルワードの第一王子、シャノン・プレイステッドです」

「アンタ……マジかよ」


ドルニエが、鹵獲した物資から酒を引っ張り出して向かってくる。呑みながら歩いている。


「おいおい、とんだ大物引っ提げれ帰ってきたなぁ……うっわ何だこれ、全然味無いじゃん、水かよ」


ドルニエは透明な酒を呑みながら、ドルニエに会釈した。フアンと目線を合わせる。


「随分と麗しい仲間が増えてるみたいじゃないか。で、ミルワードの王子がどんな用件でここに?道中危なかっただろうに」


シャノンはドルニエの前に立つ。


「小規模な駐屯地や補給地点は、そこにいるアル=ライス様とフアン様、リンデ様を筆頭とした部隊で強襲してきた。後方にはそこで回収した物資を持っている、ミルワードとギムレーの避難民がいる」

「入れろってことだな?だがギムレーってのはどこの国だ?あんたらの、何だっけ植民地?の連中か?」

「それについては……僕より、そうだね、フアン様に説明してもらおう」


フアンは、ギムレーという国家についての説明、そしてイェレミアス周辺の敵の正体が、亜獣第一党という勢力であることを教える。


「これで情報の裏が取れたって訳だ」

「裏?」

「とりあえず、全員をミルワードからの避難民としてバックハウス邸へ移送する。亜人・獣人についてだが……そうだ、ユリウスさんから聞いた、お前らがハーデンベルギアから帰ったときの方法そのまま使うか……鹵獲品の箱のなかに、ギムレーから来たやつ全員を収容する。馬車で何度か往復すればいいだろう。それでいいか?」


シャノンはギムレーの兵士たちから了承を得ると、すぐにレルヒェンフェルトへ向かった。フアンと、シャノンが会話する。


「これ以上は兵士の疲労が蓄積するところでした、ちょうど彼らがいて助かったと言えますね」

「戦果は上々、ハーデンベルギアからここまでの距離の行軍は完遂、犠牲者はゼロ」

ドルニエはその言葉を聞いて、振り向く。

「待て、あんたらギムレー方面から来た訳だじゃないのか?」


シャノンががうなずいた。


「待て、じゃあここにナナミはいないってことだよな」


フアンはドルニエに詰めた。


「ナナミさんがどうか……?」

「いや、アイツだけ昨日バックハウス邸に来たんだ。ギムレーのこと、亜獣第一党のこと、お前らの生存のこと……ハーデンベルギアから来たってことは、ナナミと合流してるわけじゃないんだよな?」

「合流って……」

「アイツはもうここにはいない、やることがあるって、さっき駐屯地の占拠を手伝ったきり、そのギムレーがある方角に走ってったぞ?」

「まさか」

「さすがに1人でどうこうしようなんて思ってはないだろう。算段がない限り、ああいう手合いは動かんさ」

「……」

「心配か?」

「……別に」

「いの一番に聞きやがって、大人を騙そうなんて思うな。お前、アイツと二人で俺をシめたの、本人が覚えてねぇとでも?あの嬢ちゃんを追えるのはたぶんお前だけだ」


ドルニエは糧食を集め、麻袋につめる。フアンに投げた。


「お前は嬢ちゃんを追うんだ、仲間がいれば、アイツも動きやすいだろうに。コイツらの生存もついでで報告しろ」


フアンはヴァルトとリンデを見る。


「いいんじゃない?」

「俺はアリだと思うぜ」


フアンは弾薬と、刀剣の鋭さを確かめる。


「……行ってきます」

フアンは別れギムレーに、たったひとりで走っていった。そして他の一行は、レルヒェンフェルトへ向かう。


揺れる荷馬車は止まり、ギムレーの兵士たちは安堵する。木箱が1つ開閉される兵士が外を除くと、1人の青年がいた。


「亜人や獣人をまともに見たのは初めてだよ。僕はユリウス、宜しく」


手を伸ばす男は、目が細い。


ヴァルト、リンデ、ノイ、シャノン、ムタリカ、アル=ライスは、ユリウスの書斎兼業寝室に通される。ノイが最後に部屋に入ろうとしたところ、後ろから大きく抱きつかれた。


「お帰りなさい、ノイ様……!」

「マルティナ、ただいま」

「先日は……申し訳ありません。ですが、正体は掴みました……ところで、そちらの、ヴァルト様々によく似た方については……」

「大丈夫、なかよくできると思うよ」


ユリウスにより閉ざされた書斎。革の長椅子に腰掛け、しかし手元には書類の束を持っていた。ヴァルトが反対側の長椅子に座る。


「随分と仕事があるみてぇだな」

「まぁねぇ、お陰で自分の時間はほとんどないよ。で、とりあえず生存おめでとうなんだけど、こっから生存、怪しくなってくよ」

「……西陸はいまどうなってやがる?」

「ざっくり話をまとめる。まず1つ、そのギムレーという国の兵士は、ここレルヒェンフェルトを包囲しつつある」

「あぁ、だが北東の補給線はたった。包囲自体はもう解決してあんだろ。とっととアドリエンヌと協力して」

「アドリエンヌは、もう落とされてる」

「……はぁ??」

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