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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第六章 蒼之肉叢

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十二話 サルディス工廠へ

十二話 サルディス工廠へ


リンデの指示で清掃まで終わらせ、機関車の駆動が確認された。炉に火が入れられ、ボイラーに熱が入る状態になる。シャノンたちと来た兵士たちの一部はすでに帰還の命令により資源を持って離脱した。


そして、残された兵士とアル=ライスの部隊、リンデ、ノイ、フアン、シャノン、エリオットが車列に乗車していく。エリオットとアル=ライスは共に貨車に乗り込み、リンデたちは機関部に乗車していった。リンデがフアンに声をかける。


「あの偉い感じの人、本当に来るの?」

「一応戦闘はできるらしいです。アル=ライスさんも認めてはいましたし」


シャノンが話に、話に入る。


「そうだね、彼を……アル=ライスを信じよう」

「あの、キリングマシーンって何です?」

「彼の異名だよ。いったい誰が付けたんだか……ヒトなのにマシーン、まるで彼がヒトをヒトと思っていないような、そうあって欲しいような感じのするネーミングだ。一方的で無責任、違って、実に人間らしいじゃないか、彼は。やはり我々ミルワードの人間と植民地の人間との間では、大きな乖離があった……我々にとって戦争は代理戦争でしかなかった。兵士のことなど微塵も考えず、脱走兵は増え、督戦隊を設営することにもなっていった……」

「彼は、暗号に関してはあまり知らなかった。キリングマシーンと呼ばれるほどになっても、そうした技術に関しては教えられていはいなかった……」

「結局、解読にはサルディス工廠に向かって、そうした情報のあるものを探すしかないかもしれませんね。正直、学院に軍事関連の情報があるとも思えない。人の出入りの激しい場所に、国家機密なんて置かないでしょう。王都も視野に入れるしかない……先は長いね」


機関車はエペソ学院を出発し、煙の若干晴れたなか、撤回されていくバリケードのなかを進んで、死神を引き殺しながら駅を出ていった。


学院のそばの街を抜けて平原へ出る。リンデは操縦しながら、シャノンに声をかける。


「ねぇ、そういやさっき話してたやつ。あれ、解決してるの?」

「何の話です?」

「……えぇっとその、アレよアレ、キモい事件。娼婦がどうとか、王都で最初はうんたらってやつ」

「……いえ、ジャック・ザ・イーターはまだ捕まってはいません」

「ジャック……えぇ?」

「ジャック・ザ・イーター。ジャックはミルワードでは平凡な男性の名義です。イーター、捕食者、死体の臀部が食いちぎられ」

「あぁいい、そんへんはいいの。そっかぁ……じゃあ最悪の場合、その犯人が生きてる場合もあるのね」

「どうでしょう」

「だって、食べちゃってるんでしょ?よっぽどの限り模倣犯なんて無理よ。そんな変態、なんか逆に生きてそうじゃない?」

「そうですね、ヤードも苦労していたみたいです」

「えぇ?ヤードさん?」

「えっ?あぁえっと、ケイサツのことです」

「あぁ、呼び方ね」

「それよりも、サルディス工廠が気になりますね。陸軍ということはミルワード人が多数を占めますので、警戒せずとも良い……ですが……」

「何か気になるの?」

「単純に、野盗化している可能性だって捨てきれないというか……野戦砲を使って、機関車を問答無用に破壊してくる場合もあります。サルディス工廠はほとんど要塞化された工廠、試作品の兵器でも出されれば、対応は不可能……」


機関車は街に入っていった。


「自軍すら信頼できないの?でも行くには機関車しかないんでしょ?」

「各政治党の派閥争い……そうしたものに荷担している軍人もいました」

「ホントにどうしようもないね、ミルワード」

「魔天党が設立する前から、他国に対する意識改革が王都の貴族階級から発生しました。当初はただのお遊びだったそうですが、いつからかミルワード人全体にその機運が広まりました。その結果、自国を優先する党、植民地を優先する党に二極化……お恥ずかしい限り……国民は、政治家はいったい何を考えていたのでしょう?分裂、闘争、それでどうやって幸せを掴むのですか?」

「まぁでも、そんなもんなんじゃない人って。分かってる側を気取って自分に酔いたい……みんなで幸せになる、でもそのみんなっていうのを決めるのも人間だもの。イェレミアスの貴族とか、そんな感じだったわ」

「枠組みを定めるのも人……ならば、人は何の為に、いや、何を持って幸せに……」

「んなもん個人の勝手じゃない?」

「誰もが勝手に幸せを求めることを肯定すれば、世界は無法になります」

「そういうのは分からないわ。でもみんな揃って幸せになれるかは分からないじゃない。好きな人すら共有できないんだよ人間は。幸せにしたい人ですら、自分じゃない誰かとは幸せになってほしくない」

「それは……ごめんなさい、恋愛は疎く」

「ううん……私には分からないわ」

「……ありがとうございます、話に付き合っ」


機関車のそばで、大きな爆発があった。機関車は若干、片輪を浮かせながら元に戻る。フアンが外を確認する。山のように築かれた、おそらくサルディス工廠に、黒煙が広がっていた。


「爆……いや、砲撃!?」


要塞方面から点滅する光が見える。シャノンがそれを見る。


「R.I.P……レスト・イン・ピース……!?」


シャノンはリンデの横から手を伸ばし、急激に機関車を幻想させる。貨車の乗員もろとも全員が倒れる。要塞方面から巨大な砲撃音が響き渡り、上から降ってきた巨大な砲弾によって正面の線路が破壊される。貨車のなかで、アル=ライスが叫んだ。


「対ショック姿勢ぃ!!!!」


ない線路を走ろうとし、多数の死神を引き潰しながら横転する機関車は石炭を撒き散らす。黒煙と蒸気で煙幕を作り、ボロボロの工場に突っ込んだ。


―サルディス工廠内部―


「……そうだ、それでいい」

「ですが、エペソ学院方面ということは、ロードがいらっしゃった可能性も……」

「まったく構わない、外部の人間を受け入れるリスクなんて、魔天教どもでいやと知っている……それに、我々に有利な線路上にきたんだ。地図から距離を割り出して砲弾で仕留める。線路に命中させればいいだけの話」

「一発、外れました」

「リヴァイアサンを討伐するための試作品、数年前の大口径自走砲だ。精度はよくない」

「……宜しかったんですね?」

「この国は変わるべきだ、君もそう思うだろう?変わる機転はできた。この感染症は、この国を仕切り直した……まさに天恵、神からの導きなのだよ。勝手に戦争を仕掛けて勝手に奪って、その恩恵を受けておいて、次は可哀想だからソイツらを優遇しろだ?国民は、頭の中に大麻の花畑でも作ったのかと思う。あるいは紅茶の茶葉に含まれる、植民地人の手垢を煎じて飲んだ結果だろうか?」

「冗談が過ぎませんか、議員殿」

「ははっ、最近頭がよく回る。成功体験こそ、人間を成長させるのだな」

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