表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第二章 社会捕食寄生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/191

七話 扱い

七話 扱い


「フアン、フアン??」

パメラに肩を叩かれ、フアンは椅子から飛び起きた。

「朝だよ?」

「僕、寝たんですか?」

「ええ?寝てないと思うけど……分かんないなぁ、お母さんと一緒で顔隠してるから。でもフアンはそんなことしないと思うよ?」

ヴァルトはすでに起きていた。

「よぉフアン」

「ヴァルト……おはようございます」

「すまん……寝ちまった」

やけに暗い表情を見せるヴァルトに、パメラは困惑した。

「えぇ!?そんなに罪悪感あるの!?」

「あぁ~……んまぁ……」

「ヴァルト、また悪い夢を?」

「……ん~、まぁそうだな」

「そうですか……あれですよね?知らない誰かが、ずっと叫んでるっていう」

「ああ、なんか分からねぇけど、すげぇ不快だ……意味分からん」

「……ノイはどこです?」

ヴァルトは自分が寝ていた椅子と反対側にある椅子を指差すと、そこでノイは寝ていた。

「俺が起きた途端にこうだ、なぁんだ……3人のうち夜更かししたのコイツだけか」

パメラがノイに毛布をかけた。

「いまさっき、ちょうど日が出たから、厳密に言えば3人ともよ。子供なのに無茶苦しないの、大きくなれないよ?」

「知るか、つかセヴランとシャルリーヌは?」

「セヴラン君が起きているはずではありますが……すみません」

「どした?」

「何かあった場合は……僕の落ち度です」

パメラがフアンの肩を叩いた。

「とりあえず私が見に行ったときは、全然大丈夫そうだったよ?」

「最後に見に行ったのはいつですか?」

「日の出前くらいかしら?でも頻繁に出入りしても何だかって思って……何か問題あるとか?」

「……様子を見に行きます。音はとくに」

「えっ、あぁ、うん」

フアンは階段を上がり、シャルリーヌとセヴランのいる部屋へ向かった。近付いて近付いて……フアンは物音の一切しないのに恐怖を覚え、がたついた勢いよく扉を開ける。窓が開いており、しかし怪しさの裏腹に血痕などはなかった。

「そんな……可能性は彼らだけではなかった……身近に……くっそ!最悪の事態を引いてしまった……!!」

ヴァルトが部屋に入る。

「レノー君の推測は当たりです!もう一体は、二人のどちらかの可能性があ……」

「痕跡でも何か探せ!」

フアンは急ぎ窓から外を覗く。直下に何か痕跡はないが、正面に路地が見える。

(メロディさんら巡回の方々から報告なんてなかった。推測では路地を回って隠密、では別段モルモーンになった訳でもない?セヴラン君が連れ出した?だとしたら、眠っているシャルリーヌさんを連れ出すのは、不可能ではなくなる。でも物音無しでここから飛び降りる方法なんて……?そもそもここを出る理由も)

フアンは窓を飛び出し、前転で着地しながら路地に向かった。

パメラとノイが出てきた、フアンが路地に入っていくのを見かける。

「今、フアンいたよね?」

「うん、今そこ入っていった」

「目星を付けたってことよね、路地の形は私詳しいから、迂回して挟むように動くわよ!着いてきて!」

「分かった!」

ノイとパメラが走り出した。

「こんな時に家出なんて、しっかりお説教しなきゃ!」

「なんで今なんだろう?」

「私達が見回ってたら、やりたいことやれないでしょ?だから外に出たのよ、若いって大変よね!」

「そういう訳!?」

「私だったらそうするわ。女はそういうのに弱いし、男なんて女の何倍も弱いんだから。きっとシャルリーヌから言い出したのよ、外いこうって」

「曲がるわよ!」

パメラに先導され路地に入っていく。

「フアン、クロッカスの路地分かってるのかな?」

「あの子なら感でやってのけるわ、うちの子よ?次を曲がったら直進して、フアンと合流できると思う!私はその辺り探すから!」

ノイは指示の元に曲がり、フアンを正面に一瞬見かけた。

(いた、ちょ!あぁ曲がっちゃった、そっちにいるのかな?)

フアンが消えていった道に入ると、フアンが止まっていた。背中が徐々に大きく見えてきて、少しだけ後ろに下がった。

「フアン、見つけた!?」

「来てはいけません!!」

狭い路地にひどく反響したそれがノイに届き、地面を抉るようにしてノイは止まった。鼻に振れた微かな、嗅いだことのある絶望的な、鉄と命を想起させる匂いが、その場にあることに気付く。

「えっ??」

ノイは足を少し震わせながら、そして屋敷のことを思い出しながら、フアンの背中に近寄っていき……見た。奥には建物の組み上げが重なったようにした、路地の行き止まりが見える。視点を下げたくないのを、強引に下げたノイ。

人の身体があった、首元から血が吹き出、四肢の欠損や眼球があるはずの箇所からの出血が確認できた。奇っ怪な歯形の捕食跡からの血の出でるが、彼の生存と、その命の残り少ないことを表している。

「……ごめん、なさい」

フアンが声を出すそれに近寄った。

「セヴラン君……」

「俺が、間違ってた……これは罰みたいなものだ、ほだされて挙げ句こんな……ありゃいったい、誰だったんだ?」

「誰に……?いや、何に?」

「寝てると思ったら、シャルリーヌが急に外へ行こうって言い出して……俺なんで、妙に可愛くてそれが……何期待してたんだ俺は。何もあいつのこと分かってやれなかったのに……」

「シャルリーヌさん……ですね?」

涙を流すセヴランを、フアンは見ているしかできなかった。

「あの後俺……あいつに言われた。シャルリーヌは1度だけ、兄に会ってる。自分に自信が持てる薬だとか言われて、何かを飲んだらしい」

「薬……!?」

「フアンさんが出ていった後です。俺、それ黙っていようって……黙っていれば大丈夫だって……!んであいつが寝て、また起きたと思ったらこれだ。俺の不甲斐なさで……情けなくて、襲われてるのに声も出なかった……ごめんなさい、シャルリーヌはここを登っていった。どうやったかは分からない、妙に静かで……」

「……ありがとうございます」

「セヴラン君!!」

ノイが駆け寄ると、血の飛沫が足音共に飛ぶ。

「……俺は大したこと言えないけど、でも」

目の光が消えていく。

「……お願いします」

パメラが合流し、セヴランの消える瞬間を見た。パメラが駆け寄るが、息はなかった。

「あの子なの?これやったの……」

「彼女も被害者のようです……これで確定しました。ジャン=ポールは何らかの目的で、モルモーンを寄生させている。後はもう本人に聞くしかないでしょう」

「……パメラさん、私達がなんとかするから。だからセヴラン君をお願い」

フアンはノイに指示を出すと壁を登っていく、ノイは路地を戻るように走っていった。

「凄いね2人とも、動けるんだ……そうよね、もう失っているんだもの……私がなんかよりよっぽどよね……こんな」

パメラは悲しみと落胆に苛まれていた。セヴランの死体を抱き上げた。

(慣れちゃいけないわよこんなの……)

フアンとノイは酒場に戻ると、ヴァルトはレノーと会話をしていた。

「どっちだった?」

「シャルリーヌちゃん……だった」

レノーは下を向いた。

「ではセヴランさんはもう……」

「とりあえず装備を整えろ。どうであれ、もうやらねぇといけなくなってきてんだ」

「シャルリーヌは」

「悪くねぇ訳、ねぇだろうが……」

フアンが酒場に、メロディを連れて入ってきた。メロディの体は若干血で汚れている。

「事情は既に説明してありますが……えっと」

「私はさっき……シャルリーヌと会った」

「どういうことだ?」

「様子がおかしかった……まず身体が血でまみれていたんだ、それに足音も全然ない。すぐに駆け寄って応援を呼んだ。でもなんだろう、うわごとのような……離れなきゃ、離れなきゃって。とんでもない力で私を引き剥がして、門番を殴り飛ばして……防壁の外にいった」

ヴァルトとノイ、フアンとメロディは表に出ると、馬車が置いてあった。

「なんだぁおい都合良いな」

リカルドが乗っていた。

「良くないこと起こってるからな、とりあえずここに移動できるのを置いとけば良いかもってよ!」

リカルドは下車する。表に出ていた全員が乗り込む

「ジェリコちゃんは俺が見ておく!パメラさんはどこだ?」

馬車が軋む音がし、既にパメラは乗車していた。

「……私もいくわ」

血の着いた服に覚悟が見て取れる。

ヴァルトの操縦で馬車は酒場のを後にする。最短で向かえる防壁の門へ向かうと、自警団員が手を振っている。大声で何かを言っている。

「……皆さぁん!!あの娘がこの先に!!」

外へ飛び出ると同時にメロディが腕で合図を送り、門が閉められていく。

「んで、この先に何かあったりするのか?なんか目立つ建物とかよ」

「下水道施設」

「はぁ!?待て待て、なんでそんなもんがここにあんだよ。ここ辺境だろうが」

「100年以上前に、当時全盛期だったアドリエンヌが、住める地域を拡大しようとした時期がある。恐らくその残骸じゃないだろうか?」

「……施設っつうか、たぶん下水道そのものだよな?ぜってぇ臭ぇぞ」

メロディが遠くを覗いていると、フアンが急に血相を変えた。

「……何か、嫌な予感がします!」

「急にどうした?」

「いや、その……でもそ」

10の黒い影が空を舞っている。急降下でそれらは襲いかかった。メロディはとっさに小型の投石機を構え撃ち落としていった。接近したのをパメラは掴んで絞め殺す。人の半身ほどの大きさを持つコウモリのベストロが息絶えた。パメラは空を見上げ、数を数える。

「あと7……名無し、でも結構な量ね」

「それ、貸してくれ」

メロディはコウモリの名無しを受け取ると装備している直剣で爪や牙を素早く剥ぎ取り、装填して発射していった。

翼膜を数体貫いて落下し、馬車を引っ張る馬がそれを踏む潰していった。馬車の進行方向の遠くに、クマのベストロが現れた。

「またですか……」

「メロディちゃん、倒したみたいなこと言ってなかったっけ?」

「別の個体でしょう」

「どうする?」

「突然出てきた理由、あるいはシャルリーヌと関係性がルノーでしょう。私がひき付けます、皆さんはシャルリーヌを」

座っていたフアンが立ち上がった。

「そんな、死にますよあなた!?」

「でも、時間がないだろう?少しでもあの娘に追い付かねば、事件に収集がつかない」

「でも!」

パメラが立ち上がった。

「お母さんもいくわ」

「……じゃあ大丈夫ですね」

フアンは座った。

「ちょっとは心配してよ!?」

「あなたとメロディさんで、死ぬとは思えません」

「……よし、お母さん頑張っちゃお~!!」

ヴァルトが後ろを向く。

「ノイ!パメラをフロトルスの近く、できれば木の上とかに投げろ!ベストロも獣と同様、服に着いた血で注意を牽けるはずだ!」

ノイはパメラを持ち、馬車の中で回転し、遠心の力を筋肉に込めて放り投げた。

木の枝を掴んだパメラを凝視したフロトルスは、その木に突撃を仕掛け、馬車の通り道が開いた。

フロトルスと離れつつも横に並んだ瞬間にメロディは飛び降り、コウモリの名無しを落とし続ける。それを後ろにヴァルト達は進んでいったのを、フロトルスにより木の倒壊を避けながらパメラは見ていた。

「頑張っちゃうよぉ、私は、お母さんなんだから!!」

パメラはしゃがみ、少しだけ高めな靴底の、その側面を両足の分同時に押した。靴底の機構が起動し、爪先に伸びるような刃が飛び出るように現れる。すると、パメラの後ろに数体のベストロが現れる。小さめの犬などの名無しに、オオカミの名付き……アリグネルスが混じっている。

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ