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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第六章 蒼之肉叢

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八話 時計塔の学舎

八話 時計塔の学舎


エリオットと、砲台を準備したであろう兵士と共に、エペソ学院を通っていく。キングは、シャノンから事情を伺った。シャノンは、リンデたちが情報を求めていることは伏せた。


「ロードの話から、西陸から来た方々というのは分かりました。随分と腕がたつようで、ロードを守って下さり、ありがとうございます」


フアンが視線を合わせる。


「簡単に信じますね……」

「ロードの言うことですから」

「西陸とミルワードは政治的、宗教的には敵対ですが……」

「政治も宗教も何も、この惨状ですからねぇ……人も食べ物も、鉄も火薬も足りませんし、それに僕個人としては、顔を合わせてもいない人を嫌う理由なんてないですからね、ロードもそうお考えでは?」


シャノンは首を縦に振った。


時計台のような外観を備えた建物、窓ガラスは全て鉄や木材で塞がれていた。ノイがその外観を見ている。


「でっか……」


エリオットはノイがに視線を向けながら歩く。


「王立エペソ学院、あるいは王立エペソ研究所。史学、哲学、科学、化学……ありとあらゆる高等研究機関を一括管理、専攻させる機関でした。学者は教員免許という資格を有する限り、学院での教育者としての給金を保障。研究成果ではなく、研究することに意義のある場所。極めて緩~い認可を得れば、研究費を全て税金で賄える学者の天国」

「へぇ~~……」

「お嬢さんは、何にご興味が?機関内部には、遺された論文が山のように積まれております。よかったら中で案内でも」

「えぇ、えっと~……」


リンデが少し笑う。


「ノイとは程遠いわね」

「なっ!?」

「私、軍事関係でちょっと気になるのがあるの」


キングはリンデを見た。


「西館のはずです」


シャノンはリンデの隣に来る。


「サルディス工廠に向かうのは、少し時間を空けます。その間は自由にしててください。時間になれば、信号弾で全体に知らせます」

「分かったわ」


敷設された巨大な扉を空ける。幾重にも敷かれた土嚢に針金と鉄のバリケードを、敷設された梯子を登るなどして通った。ノイがその鉄の糸たちを見る。木の簡素な立て掛けなどに、針金がグルグルに巻かれている。


「なんでグルグル巻き?」

「電気を通しています。電圧は極めて少量ですが、死神も引っ掛かれば音が出ます。そうすれば付近の兵士がそれを駆除する。ネズミやイヌネコの対策の役割もあり、感染防止には最適です」

「デン……」

「……触らない方がいいってことです」


段々とエリオットがノイの扱いを理解しながら、中央棟へたどり着く。肌の白い人々がそこでは、元気なく生活をしていた。兵士たちの目もどこか暗い。エリオットが一階中央へ走っていく。


「みんな聞いてくれ、我らがロード、シャノン様が生きておいでだったぞ!!」


白人たちの目に、光が灯った。壁や柱にもたれ掛かった人も立ち上がり、シャノンに向かう。


「シャノン様!?」

「すげぇ、写真の通りじゃねぇか!!」


シャノンは嬉しそうに、若干誇らしげに困り顔をしながら対応に追われる。駐屯の兵士たちがエリオットに向かってきた。


「さきほどの汽笛に砲撃……まさか、軍隊が生きていたのですか?」

「あれはうちの野戦砲だよ。でも汽笛はロード一向のものだ。生きている機関車があるのは幸いだよ」


リンデが、その言葉を聞きつけた。


「生きて、いる……?」

「そう、私たちが籠城を強いられている理由だ。サルディス工廠製造だから壊れてはいないが、石炭も液体燃料も不足……それに、ここに機関車が来るときに大量の死神を引き殺したから、部品に肉が挟まりまくって、機能していない。何より設計士がいても技士がいない」

「それ、なんて名前の機関車?」

「名前?あぁえっと、型番がC5とかなんとか……」

「ならなんとかなるかも」

「えぇ、でも仮にできるとして君1人で……いや、もしかして」

「誰がさっきの汽笛鳴らしたデカブツ走らせたって思った?」

「……Oh my.自信のある女性は好きだ。いいだろう、君に頼む。あぁでも、南館にはいかなくていいのかい?」


リンデがフアンを見る。


「了解です。ノイはどうします?」


ノイは幼い子供数人に囲まれている。武器をいつの間にか立てかけ、しゃがんで頭を撫でていた。


「よく頑張ったね~。もうちょっとだからねぇ~」

「When? When can I get out of here?【いつ?いつ出られる?】」

「必ずなんとかするよ、だからちゃんと生きるんだよ~」


軽やかな口調に対して、重みのある雰囲気をノイは醸し出した。子供は、首を縦に振った。リンデはノイに声掛けのみを行い校舎を出る。フアンはエリオットと、南館へ向かった。


フアンとエリオットは、いくつもの仕切りをこえて、一つの部屋に入った。資料と本、筆記用具に謎の機械群。フアンは背後で、鉄が擦れる音を聞く。


「ここが軍関係……と言いたい所ですが、資料関係はまとめてここに押し込んだんです。部屋をできるだけ確保したかったですし、勝手に暖炉に入れられる心配もありましたから。分野ごとに区分けだけはしてある……はずで」


フアンはエリオットがまばたく間に散弾銃を構えた。


「いま、銃を握りましたね?」


フアンとエリオットに続いて、シャノンが部屋に走って入ってきた。


「あぁ、間に合った……良かった、ホントに良かった」

「マイロード……」

「フアン様、いきなり孤立なんて、大胆ですよ」


エリオットは腰後ろで握ったリボルバーから手を離し両手を挙げた。


「年季どころの話ではない、本物の実力者には叶いませんね……」


フアンは散弾銃を一瞬で片付けると、背中を向ける。


「……まぁ、あの二人に色々と任せている部分があるので、こういうのでは、負けてられないのもあって……気付いたら練習してます」

「なるほど……ロード、しかし疑問です。彼は本当に魔天教の連中の?」


シャノンが扉を開けたまま、杖を壁に立て掛けて、そばにある椅子へ向かう。


「そこは判断できないよ、だから聞きに来たっていうのが本音だね。もっとも、事実はどうでもいい。僕は単に、西陸の現状を知りたいんだ。そしてフアンくん、君はあの二人よりキレる人と見込んでの仮説だが、君は世界の現状を調べたんじゃないかい?君、ミルワードの言葉も少しくらいは分かるだろう?」


フアンが、軍事関係の資料の前で立つ。


「……まぁ、僕の故郷を作った人の言葉ですから」


エリオットが驚く。


「そんな街が?」

「あばら家だらけの村です。ベストロの被害にあった方々を集めて、村を作ったんです」

「……なるほど、その教育の賜物というワケですか。であれば、魔天教と関係してはいなさそうですね」


シャノンがフアンと共に、資料を漁る。


「事前の計画でのハッタリだったかい?」

「いえ、即興です」

「……満点だった、格好がとくに、でも近くで見れば分かる。様相が球凰【キュウファン】だ。キング様もそれで怪しんだでしょう?」


エリオットは、暗い部屋で壁にもたれる。


「だからその呼び方……まぁいいです。でもロードにハッタリをした以上、事実くらい話すのが筋では?代わりに、僕も資料を探すのを手伝いますし、世界のことを教えてもいいですよ?」

「逆に、僕から何を知りたいんですか?」

「魔天教関連……といいたい所だが、正直もっと気になることがある。ベストロだ」

「……」

「情報はない、と?」

「……簡潔にまとめられないんです。どこから、何を話せばいいか」


シャノンが指を鳴らす。


「なら、君の経験した順で話すといい」

「……そうですね、でも忠告します。嘘だと、思いますよ」

「構いません。現状は2対1、話に嘘、盛り込みは不可避でしょう」


時計台の短針が一周する時間、フアンはひたすらに自身の身に起きた出来事を語っていった。ベストロ、天使、聖典教、奈落、イェレミアス、ギムレー、雑凶、暗号。シャノンとエリオットはただ呆然と聞くだけになっていた。そしてやっと、エリオットが口を開いた。部屋に差し込む光の角度は若干変わっている。


「……天使?いや……ん?……はぁ?ん、待て……いや、いま、嘘を、まてまて、小一時間嘘を語るワケが……」


シャノンは、顎に手を当てている。


「……嘘に真実を混ぜる手法を展開される気で挑みましたが、これはどうにも、精細しがたい話です」


フアンは、引き続き資料を探している。そして、ある程度掘り起こして、読んでいった。


「どうです?少しは西陸のこと、分かりましたか?」


フアンは、暗号の話のある、イェレミアス帝国の歴史書を出した。


中身を見せて、確かに二重線があること、そして一枚の紙と、そこに記された言葉も見せた。エリオットは、首を傾げるしかできず、遂に傾げるからずれ落ちしりもちをついた。頭を抱えている。


「……いや、なんというか……エペソ学院の試験を解いている気分だ」


シャノンが、ハッと気付いてフアンの持つ本を受けと取る。


「……でも、この暗号とやらを解読できれば、それらが事実である可能性はグッと上がるんじゃないかい?唯一の現物での証拠だ」

「ははっ、お手伝いして下さるのですか?」

「いや、僕は僕で探し物があるんだ。エリオット様、すまないが手伝ってやって……」


エリオットは腕を組みながら、フアンたちに接近する。


「いや、次はフアンくんの欲しい……あるいは知るべきものを与えるべきだ。我々の知る限りの、世界の話を」

「世界は東を球凰【キュウファン】、西をミルワードとして対立しているみたいな話なら聞きました。でも、現状までは分かりません……」

「そこは知っているようだね。でもそこはベストロが現れる前までの話」

「……待って下さい、現れるって」

「……信じがたい話を僕からも君へ送ろう。世界は、怪物によって、ほとんど滅ぼされてるって話を」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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