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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第六章 蒼之肉叢

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五話 武装

五話 武装


リンデたち一行は、とある小屋の前に集められていた。シャノンが現れる。

「皆さんのお召し物を、少しミルワード風にいたしましょう。とくに、武装です。中に入ったら、テキトーに武器を手にとってみて下さい。中にいる人が、良し悪しを判断してくれます」


リンデが恐る恐る扉を空けて中に入ろうとする。中はタバコの臭いで充満していた。ノイは急いで呼吸缶のある仮面を装備する。シャノンが少し笑った。


「ガスマスクをされるほど嫌いですか……?」

「がすま……えぇ、何、そういう名前があるの?」

「逆に、そちらでは呼び名はないのですか?」

「しらない」


リンデに続いてノイとフアンが入っていく。扉は軋む音と共に閉じられる。タバコを貫いて、火薬の臭いが鼻にツく。


「ここ、まともに換気してないんじゃ……」

「港って、湿気の塊だしね。案外利にかなってるのかも」


ノイが会話をよそに、手前にある縦長の箱を開けた。中には、明らかに人間が扱ってはいけないような、しかし携帯用の綱などが繋がった、大砲があった。


「ナニコレ、ホントに鉄砲??」


ノイが手を伸ばした瞬間、小さな剣がノイの足元の板に刺さる。ノイは慌てて転んでしまい、リンデの足元に転がった。


「えぇ、な、何!?」

「奥よ!」


そこには老人が1人、椅子に座って足を机にかけて、椅子を尻に引っかけるようにして揺らし、タバコをふかしている。


「……んん、嬢ちゃん。そいつはさすがに重すぎると思うなぁ。もっと小柄で、あぁあと、しっかりしたやつがいい。お前さん、不器用なところあんだろ、転び方で分かる。雑に扱っても平気な、その腰に装備したメイスくらいじゃねぇとなぁ」


フアンが2つの剣を袖から出して構える。


「そこの黒フードは、両利きだな?なら小型の銃を二丁、アキンボで……いや、剣が強いのは、3人のなかじゃお前か?抜剣も早い、危機管理もいい。中折れ式の散弾銃、あぁソードオフのが良さげだな。ショットシェルが入るベルトも持ってけ」


ノイは目の前の大砲を担ぎ上げると、片手で老人に向けた。


「あぁぁ、アンタ誰!?」

「……おい、マジかよ嬢ちゃん」


老人はやたら元気になって椅子から飛び起きると、目を輝かせながらノイに近寄る。


「その大砲、47ポンド(21.3kg)あんだぞ、砲弾除いてだ。そこにある砲弾、テキトーにぶちこんで見ろ。超簡単に砲身がロックされてる、嬢ちゃんでもカンでやれるはずだ」


ノイは何となくで取っ手を持って引くと、砲身が開閉する。


「列車砲とあんまり変わらない感じ……?」

「なんだぁ?西陸には機関車に大砲付けるのかよ……」


ノイに歩みより、段々と冷静になる老人の懐には、腰に二丁の銃が装備されていた。タバコを咥えながら、服の空きに手を突っ込んで歩く。


「そいつぁ、Racy Frocks Diver 対物ロケットガン。塹壕とか機関銃のある建物をぶっ壊すための代物さ。口径は1.59インチ(40mm)、重さはさっき言った、47ポンド……弾丸込みで50~60ポンドはいくだろうな。


油圧式の最先端な、反動を軽減する装着が組み込まれてるが、肩付け頬付けしっかりやっても、ムキムキ兄ちゃんですら肩が外れる代物だ……だが嬢ちゃんは片手で、正しい持ち方もせず手ブレ無しときた。ひょっとしたら、運命の相手かもしんねぇぜ。弾種は3種類あるが、死神対策で、焼夷弾といこう」


老人が部屋の奥に元気よく、肩を上げて歩き、箱を蹴って開けて内容物をフアンに投げる。フアンは受けとると、さらに腰に巻くようなものを渡された。


「MidGand M1859水平二連中折れ式散弾銃、そのソードオフ。両引き、つまり銃身ごとに単発で分けて発射できる、浅く引けば一発、ガッツリとトリガーを引けば同時に発射できる。対応する弾丸は基本的には12ゲージのショットシェルだが、同様に死神対策で、渡す弾丸は焼夷弾だ。


ソードオフ、銃身とストックを切り詰めて取り回しを強化した代物だ。ヴィンテージ物だが、状態は悪くない。エングレーブはあらかた削った、鉄を溶接して張り付けて、いい感じに銃身の強度は保ってある。


なめした革でグリップを巻き上げた、握り心地は保障できるぜ。アイアンサイトは至近距離専用だからぶった斬った、その方が視やすい。


指を引っかけて中折れさせれば、装填可能。発射してすぐは熱いから気を付けろ。ベルトには横並びにショットシェルを保管しておける、外して込めろ。その腕に着けたデカブツを使いたきゃ右袖にでもしまっておけ」


リンデが老人に近寄る。


「……アンタ、何者?」

「ブラッド・ギブソン。武器・麻薬の密輸で稼いでた。今は生き残るのに必死でな、身銭ぶん投げる勢いで、ここの連中に協力してる。嬢ちゃんは?」

「……リンデ。ジークリンデ・シュナイダー、あとライプニッツでもある、かな?」

「ライプニッツ……はっ、おもしれぇ」

「何が?」

「俺のマジの名前、ライランズってんだ。ちょっと似てるな。海軍関係の家系でね、アニキが家を継ぐって話だったんだが、あの野郎……家を飛び出していきやがった。


お陰で俺にオハチが回りそうになって、俺も家を飛び出した。ミルワードの植民地で偽名でガキ作って、気付いたら飯食わせるためにこんなさ。さっさと嫁さんとこ帰りてぇよ」


フアンが聞き覚えのあることに気付いた。


「……ひょっとして、そのアニキというのって」

「ハートマン・ライランズ。聞いたことないか?」

「そういう、家を出てきた、軍関係の人がいます。僕らの故郷を作った人で、名前は……ハルトヴィン・ライプニッツ」

「へぇ、アニキと名前似てんじゃねぇか。こりゃおもしれぇ」


老人は奥へ向かうと、長い箱と、小さな箱を持ってきた。長い箱から単発式の小銃を取り出すと、弾丸を丁寧に10発装填する。小さな箱から単眼鏡を取り出すと、固定具を使って銃に固定した。


「嬢ちゃんにはコイツをプレゼントだ。Bliee・Endfield、ボルトアクション小銃。10発装填。優生を引いた代物で、俺の手札の中でもとりわけ良い精度のブツさ。


100ヤードあたり0.8インチの集弾精度、最新式のスコープを取り付けてやる、普通の視界を1として拡大倍率は6倍、十字のレティクルに何個か切り込みてぇのがあるが、100ヤードごとに弾道がその軌道になると思ってくれ。


離れた位置の敵には、それで合わせればズドンだ。太陽光の反射に気を付けろよ?つっても死神にゃ気にする必要はねぇがな、アイツらは足音クソ小させぇくせに音にも光にも匂いにも寄ってくるが、如何せんどんくせぇ。


ただ羽化したバケモン、【蒼騎士】どもには気を付けろ、奴らは素早い。弾は303ミルワードのフルメタルジャケット弾を渡す。貫徹力は凄まじい、死神なら、狙った部位を骨ごと破壊できるくらいだろうな、爪野郎にも効果はあるだろう。ボルト後退から装填まで、手首をあんまり捻らずに行えるから、プロフェッショナルならリボルバーくらいには素早く撃てる。


視界の中央と銃口の向きを一致させるよう意識すれば、近距離でも連射性能でどうにかなるさ。相手が微妙な距離感だったら、思いきってスコープを外すのも手だ。アイアンサイトはピープサイト、馴れはいるが、お前の視力関係なしに、標的をしっかり捉えてくれる。


中指で引き金を引いて、親指と人差し指でボルトを操作できるし、ボルトが短いからスコープを覗きながらボルト後退が可能。スコープを付けてる間はクリップでの5発連続装填はできないからな。分かってると思うが、ボルトに泥とか入ったら終わりだぞ?」

「……えっと、説明終わった?」

「あぁ……すまん、こだわりの逸品だからよ」

「……いや、いいわ、全部覚えた。重要なのは、303ミルワード、12ゲージ、1.59インチ弾。その弾丸を道中集めれば、戦闘には困らないってことね」

「そうだな、施設の内部だったら、警備兵の死体とか漁れば303ミルワードと12ゲージはあるだろう。だが黒髪の嬢ちゃんの弾丸はまったくねぇだろうな。使い時に気を付けろよ」

「ありがとう、ブラッド」

「礼の言えるガキは嫌いじゃねぇぜ」

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