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ブルートアウス ~意思と表象としての神話の世界~  作者: 雅号丸
第五章 冷土戦々 二幕

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一話 波動の先

一話 波動の先


振り降ろされた炎の剣の切っ先は峡谷を遠く貫き、雪が積もり凍える森が真っ直ぐにえぐれて燃えていた。隔たれたようなその森に、二名の白髪が存在する。付近には羽毛が散乱しており、片方は怒りを表し、もう一方は艶かしく、しかし佇んでいた。


「お聞かせ下さい、アマデア様。なぜここにおられるのですか……?」


アマデアは、黒い毛玉のような獣の死骸を持っていた。姿には、陶器のような模様があり、それらは西陸の様相はていしていない。こときれていてその頬は垂れ下がり、深い傷跡から血が吹き出ている。アマデアは、手に血液を多量に付けていた。


「閣議で決められていないドミニの使用は、主たる父に多大な負荷を与えるため厳禁である。そう決めたのは貴女だったはずです。だからこそ、ソル・フィリアは……あの子は貴女が手ずから!!」


その男は、拳を震えさせていた。


「ヴァーゴ・ピウス、次の命令です」

「アマデア様!!」

「至急イェレミアス帝国へ帰還し」

「そもそも、彼を殺せという指示も、我々の手で直に行えば済む話……しかし先程放たれ、シュエンウーを2体も撃破し、こうして森を貫いたあの炎……私の目が確かならば、あれは私に殺せと命じた、ヴァルト・ライプニッツではないでしょうか。アドリエンヌからの報告では、彼は雷を放てることに限定されていたはず。しかし現在、彼はもはや何ができるというのですか、いえ、何ができないというのでしょうか。あれでは、まるで……まるで主たる父と!!!」

「ヴァーゴ・ピウス?」

「シュエンウーが二体も存在すること自体、我々は聞かされていなかった!!!」

「ヴァーゴ……ピウス?」


アマデアの顔を見て、ヴァーゴ・ピウスが黙った。睨み付ける上からの視線、クマがあるようなほどに仰々しく末恐ろしい。アマデアは空を見上げ、手を広げた。


「イェレミアス帝国へ即時帰還し、外務省大臣として、早急に帝国内の混乱を抑えなさい。いつも通り、直接的ではなく」

「……間接的に……殺害の、対象は?」

「いま殺すべきではありません。ですが、もし何かあった場合……ユリウス・フォン・バックハウス、ならびにマルティナ・フォン・バックハウスは、始末しなさい」

「……彼らは、まだ」

「えぇ、あの襲撃を生き延びたようです。どうやら、解体されたナハトイェーガーの人員が、バックハウス家の守衛に残存しているとか」

「……了解、しました」


飛び立つアマデアの跡には羽毛が散見される。ヴァーゴ・ピウスは、少々うつろいた視線をアマデアに向けていた。


(ソル・フィリア、私はどうしたらいい?君の姉ぎみを、我々の長女を、私はどう思えばよい?彼女は本当に、君の命を助けたのか?だとして、ここのところの様子が気がかりすぎるぞ。今まで違和感こそあれ、アマデア様は我々の悲願のために奮闘してきたはず)


ヴァーゴ・ピウスは、えぐれて燃える森を見た。地面の中にある木々の根元から燃える炎が周囲に移り、また一本と灰を纏っていく。


(あるいは、最初から……我々の悲願など毛頭、眼中になどなかった、などがあり得る……というのか?)


ヴァーゴ・ピウスは、再び強く拳を握った。


(君の犠牲すら、最初から厭わなかったとうのか?あの者は、あるいは計画を邪魔立て……いや、この計画の首謀者は彼女だ。我々は騙されていたのか?)


ヴァーゴ・ピウスは握る拳から血を垂らす。


(点と点を、繋げる必要がある。全ては、主たる父のため……いや、申し訳ありません。きっと私は、ただ敵討ちをしたいのかもしれません。もっとも、敵が身内で、被害者こそもっとも彼女を身内としていますが)


両手を握り、空を仰ぎ見た。


(御許しを……我らが父、エノアウス様。しかし我らは、必ずや御身の悲願を成就させましょう)


ヴァーゴ・ピウスは、息をやや深く吸った。


「Exitus acta probat【結果は行為の良し悪しを証明する】」

2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。

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