十七話 子
十七話 子
(……ヴァルト)
(なんだ)
(……私ね、あなたのこと)
(……)
(ヴァルト……あれ、ヴァルト?どこいったの?あれ、あれ……)
ノイは、光となって消えていくヴァルトを追いかけるように走ると、寝台から転げ落ちて目を覚ました。
「……あっ、えっ?」
足音が響き、1人の赤毛の少女が抱きついてくる。涙を流していた。
「ノイお姉ちゃん……生きてた!!!!」
「……ノンナ、ちゃん?」
「良かった……良かった!!!」
ノイは、記憶を呼び起こした。
「……私、潰れて、脚が」
感覚があり、すんなりと直立できた。脚は元に戻っていた。
「脚……えぇ?私、腰くらいから下、ぜんぶ……あれ、あれ?」
ノンナの顔が、曇っていた。
「お姉ちゃん」
「……みんなは……フアン、ナナミ、ヴァルヴァ……あぁ!!ヴァルト、ヴァルトは!?大丈夫!?無事!?」
ノンナの肩を揺らすノイは、連れられて部屋を出る。一室へ入ろうとする、フアンがいた。
「……ノイ!!!」
フアンが駆け寄る。
「……その」
「無事だったんだ、フアン。良かった」
「……あの」
「ヴァルト、一緒じゃないの?」
フアンは、頭を下げながら扉を開ける。部屋の奥には、寝台が一つある。寒い風が窓を叩く。その寝台の上に1人、人が寝かされていた。長い髪を持つ、やや白い髪色をした。
「ヴァ……ん?」
ノイ手を伸ばした瞬間、違和感に気付いた。その髪は長く、そして胸部は膨らんでおり、肩は撫で下ろされていた。
「……えっ、あれ?」
フアンが、部屋に入っていく。ノイとノンナも連れられる。
「オフェロスさんから戻って、ヴァルトが、目覚めると思っていました。いつもそう……でしたから」
「待って……えぇ?」
「今は寝ていますが、心の中で、オフェロスさんとの会話はできるそうです」
「……ヴァルト、ヴァルト無事なの!?」
「オフェロスさん、そして彼女の持つ記憶・その証言を照し合せた結果……一つの答えが、導き出されました。ヴァルトの……正体は……ジークリンデ・シュナイダー。オフェロスさん、そしてその妻マリアの娘。天使の……子供です」
ノイは力が抜けるように姿勢を崩して、地面に膝から下を開くように座る。
「ヴァルトは、ヴァルトは??」
「分かりません、どこへ……どこへいったのでしょうか」
口が震えていた。その微かな音で目を覚ましたジークリンデは、起き上がり、ノイと目が合う。
ノイは走って部屋から出ていった。一言、言葉を残して。
「ごめんなさい」
2025年6月3日時点で、997,634字、完結まで書きあげてあります。添削・推考含めてまだまだ完成には程遠いですが、出来上がり次第順次投稿していきます。何卒お付き合い下さい。




