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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

犬の散歩

作者: 砂坂よつば

  冬也は10歳の誕生日念願だった子犬を両親からプレゼントして貰い、嬉しくてはしゃいでいた。そして子犬をじっと見つめ……


「まろすけ!今日からお前はまろ助や。よろしくな!!」


と名付けた。


「わぁん!」


子犬の高い声が店内に響く。まろ助は気に入ったのか短いくるんと内巻きになった尻尾を振っている。名前の由来は黒毛の体毛に、目の上にある白い毛が平安貴族の眉毛に見えたからだ。そして2年の月日が流れた。とある金曜日の夕方、冬也はまろ助といつものコースを散歩していた。近所の公園目指し近道しようと、高架下に入った瞬間、まろ助が立ち止まり全く動こうとしないまろ助に冬也は声を掛けた。


「どうしたん?まろ。早よ行こうや!」


ぐいっとリードを引いても1ミリも動かない。それどころか来た道を戻ろうと反対方向に向いてしまった。


「くう〜ん。くぅ〜。くわぁん。」


まろ助の尻尾と耳は下がり、怯えた声を出し抵抗している。こんな事をするのは初めてだ。よほど高架下を通りたくないのだろう。冬也は高架下を諦めいつものコースに戻ると、まろ助の尻尾と耳はピンっと上に向きなり機嫌良く歩いている。公園に着くとまろ助は同じ犬種に出会うとお互いのお尻の匂いを嗅ぎ合い、犬達のコミニケーションが始まった。それが終わると再び公園内を散歩する。するとゴールデンレトリーバーを連れた大学生の燿子ようこお姉さんに出会った。


「こんにちは」

「お姉さん、こんにちわぁ。」

「冬也君、帰り道絶っ対高架下通っちゃダメよ!」


高架下……まろ助がさっき嫌がった場所だ。どうやら一昨日高架下で殺人事件があって被害者は顔が判別出来ない程切り刻まれ鼻は折れ曲がり、目玉が飛び出しているらしい。現在犯人は捕まっておらず逃走中。近所の住民はまだ高架下に潜んでいるだろうと噂している。


「気をつけて、帰ってね」

「はい!お姉さんも」


近所でそんな殺人事件が起きていてなんて知らなかった。お姉さんと別れた後冬也は途端に怖くなり足がすくむ。

まろ助が冬也に向かって軽く吠えた。


「わん!」


と吠えて冬也を引っ張る。


「!?……い、家に帰ろう」


冬也は早歩きで帰路に向かう。まろ助のいつもと違う行動、それはきっと飼い主を守る行動だったに違いない。

そう思った冬也は家に着くなり、まろ助の頭をこれでもかと撫で回したのである。


  終

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― 新着の感想 ―
野生の勘というやつでしょうか。 まろ助には感じるものがあったのでしょうね。
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