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三題噺もどき3

記憶―文化祭

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくごじゅうはち。

 


 自動ドアをくぐると、陽気な音楽が流れてきた。


 外に比べるとまだましだが、冷房が効いているのか店内は少し寒い。

 まぁ、昼間太陽が上にいる間は外もまだ暑いと言う人も居るのだろう。それに店員は客と違って品出しをしたり案内をしたりで忙しくて暑いんだろうし、仕方ないのか。

「……」

 上着を着てこればよかったと少し後悔しながら、店内を回る。

 家の近くにある百円ショップに来ていた。この辺りではそれなりに大きいところなので、平日だろうとそれなりに人はいる。あふれかえるほどではないけど、タイミングを間違えるとレジを余計に並ぶことになる。

「……」

 それなりに色々売っているからなぁ。お菓子も飲み物も。缶詰とかもあるのがすごいよな。

 そういえば、ちらりと飲み物を見たが、あのカラフルな飲み物は美味しいんだろうか。どうせ炭酸だろうから飲まないんだけど。緑とか黄色は分かる。あと紫。メロンソーダとかパイナップルとかぶどうだろう。しかしあの水色は……何味なんだ。あぁ、ハワイアンブルーとかだったりするのか。そうか……そうかもしれないな。

「……」

 生憎飲み物を買う予定はないので、確認はしなかったが。

 ……カゴを持つほどの買い物をする予定はないので、さっさと目的の場所へと向かう。

 鞄の中に入っているスマホを取り出し、メモアプリを開く。

 昨夜、突然買い物を頼まれたのでこうして外出している次第だ。

「……」

 何もしないで家にいるつもりなら、買い物をしてきてくれと頼まれた。

 別に何もしないのではなくて何もしたくないのであって、何も出来ないのであって。

 そういうと何を言っているのだと言われるのが目に見えているので何も言わずに引き受けたけれど。なんというか、自分の事を話すのってホントに苦手なんだよなぁ。まぁ、自分の中ですら綺麗にまとまっていない思考を、急かされながら話すのが出来ないだけなのかもしれないけど。泣きたくなる。

「……」

 まぁ、そんな昨日のことは置いておこう。

 とりあえず、頼まれた買い物をさっさと済ませて家に帰るとしよう。

 もう少し早い時間に行きたかったのだが、気づけば昼も過ぎていて、慌ててここに来たのだ。できれば、他の家族が帰ってくる前に買い物を済ませておきたい。

「……」

 何度かここには来ているので、場所は把握している。

 買うものも母の仕事で使う物だったり、家で掃除に使う物だったりでしかないのですぐに終わる。妹にもついでにと頼まれたが、これはまぁ、あればでいいだろう。

「……」

 とりあえずと、掃除用品の置いてあるコーナーに向かう。

 その近くに行楽用の紙皿とかが置いてあるコーナーもあるのだけど、そこに学生服を着た学生が集まっていた。なんとなく珍しいと思い、聞こえる会話を拾ってみる。

「……」

 はぁ、なるほど。そんな時期なのか。少し遅くないか?

 文化祭の準備にしては。何か事情があってのこの時期なのかな。もう少し早い時期にあった気がするんだけど……だって三年生とか受験の時期じゃないのか?

「……」

 しかし、文化祭か。たいしていい記憶がないな。

 一年生のときは何したかすら覚えていない。なにしたんだろう。三年生は舞台って決まっていたからクラス全員で何か踊った記憶がある。たいして楽しくもなかった。

 二年生の時は……まぁ、飲食店的なものをしていたが、私は部活にかまかけてほとんど参加しなかった。

「……」

 それでなくても、高校二年生の時はクラスそのものがあまり好きではなかったもので。

 部活の展示もしていたので、そちらにずっといた気がする。あとは、舞台の写真撮影。写真部だったから。なんなら、写真撮影があるからと言って当日は全く自分のクラスには寄り付きもしなかった気がしてきた。どうだったかな。

「……」

 正直言うと、片づけも手伝った記憶がない。

 部活の片づけはしたんだけど、それはそれで色々と時間がかかったり、撮影のデータの移行だったりをしていたら、クラスのその辺のことは終わっていたのだ。

 確か、別クラスにいた同じ部活の同級生に呼ばれて、クラスに戻ったはずだ。そういえば忘れていた見たいな感覚になった気がする。大方集合写真を撮りたいんだろうなとしか思っていなかったかもしれない。

「……」

 それでまぁ、クラスに戻ればきれいに戻された机に各自が着席してアイスを食べていた。担任が人数分買ってきたのだろう。しかもカップアイスという豪勢さ。こういうのって大抵棒アイスとかじゃないのかと思ってしまった。

 発泡スチロールの中に入ったあまりのアイスは、ストロベリーのアイスだった。一個だけ置いてあったのが何だか滑稽だったな。

「……」

 私なんぞがもらっていいのかという感じもあったが、アイスに罪はないのでありがたく頂いた。誰も私の事なんて気にしていないからな。いなかったことすら気づいていないかもしれないし。とにかくアイスを大人しく食べた。なんとなく会話をしながら。

「……」

 その後に、教壇に並んで集合写真を撮った。カメラは私を呼びに来てくれた他クラスの写真部に頼んだ。私でもよかったんだけど、タイマーをつけて撮ると最短で入れる真ん中に入ることになりそうだったのでやめた。私は端でいいのだ。

「……」

 その集合写真はどこかに行った。現像はした気がするけれど……はて。データもないかもしれないな。まぁ、なくたっていいのだけど。高校の知り合いなんて、中学からの知り合いである彼女しかいないもの。成人式にもいかなかったから、誰も私のことは覚えているまい。こんな文化祭の記憶を覚えているやつなんて、誰も覚えているわけない。

 どれもこれも自業自得でしかないけどな。自分で避けていたんだから。

「……」

 しかし、文化祭かぁ。

 君らは楽しそうでいいな。












 お題:メロンソーダ・ストロベリー・教壇

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