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魔導科寮の黒一点!  作者: 花宮リオ
始まりの1週間!
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第二十一話 無自覚?

「先生もどうですか?」


 上比奈知は先生にまで声をかける。


「私ですか? 美旗さんが良いなら参加しますよ」


 先生は多少の遠慮があったが、全然乗り気のようだった。


「僕は良いですよ。これだけ増えたら三人も四人も変わりませんし……」


「ふふ、では参加させて頂きますね」




♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎




 こうして僕たちは車に乗って数十分の所にあるショッピングモールへとやってきた。


「着いたー!」


「毎週来てるのに、何がそんなに楽しいんだか」


 はしゃぐ上比奈知の様子にアカリは呆れている。


「まずどこから回っていきましょうか」


「私、服見たいです」


 上比奈知がそう話すと、アリスもそれに賛同する。


「ハルのは最後だな」


 アカリもそれに頷いて、僕の方を指差す。


「こういうお楽しみは最後に取っておくのよ。覚悟しときなさい」


「楽しみにしとくのか覚悟しとくのかどっちなのさ」


「美旗くんは覚悟しといた方がいいんじゃないかな?」


 上比奈知はそうして笑っている。


「大丈夫ですよ。最悪私だけはしっかり服選んであげますから」


「サキのセンスで……?」


 一人でもまともなものを選んでくれたら、と思っていたので安心していたら、アカリから不穏な発言が飛び出す。本当に大丈夫なのだろうか……。


「それではまず上比奈知さんたちの服から見ていきましょうか」


「はーい!」


 店内に入ると、上比奈知は迷いなく歩き出した。


「何買うか決めてあるのかな」


「気になってる店全部見るつもりなんじゃない? 大体そうよ」


「そうなんだ……。それってすごい時間かかるんじゃ」


「それで帰る時間になるんじゃ……なんて期待してるなら無駄よ。アタシが止めるから」


「そんなぁ……」


 僕の淡い期待はアカリによって打ち砕かれてしまった。僕たちは上比奈知を見失わないように後を追う。


「まずはここ!」


 上比奈知が立ち止まった所はピンクを基調にした、明らかに女性向けの店だった。


「僕はここで待ってるよ」


「何よ、アタシたちといればいいでしょ」


「流石に入りずらいよここは……」


「私でもギリギリな気がします。中高生向けですね、ここは」


 同じく先生も躊躇っているようだった。


「なら私も待っていようか。ここにはあまり私に合うものはなさそうだしな」


「えーっ。アリスちゃんはこっち!」


「アリスの服も選んであげるわ」


「な、わ、私はこんな可愛いのは……」


 抵抗する姿勢を見せたアリスだったが、そのまま二人に引っ張られて店の中へと消えていった。


「……残されてしまいましたね」


 先生は苦笑いをして、三人が入って行った店を遠目で見ていた。


「すぐ戻ってきますかね?」


「ある程度はかかると思います。アカリちゃんに連絡して、カフェで待っていましょうか」


 僕がそれに頷くと、先生は携帯を少し触ってからカフェの方へ歩き出す。


「美旗さん、どうですか? 魔導科は」


「僕は好きです。この雰囲気」


「そうですか。寮にいる間のどこかで聞いておきたかったんです。正式に転科するかどうか」


「やっぱり僕は転科したいなって思ってます。今の雰囲気が好きだし、魔道具(クリード)使うのも面白いので」


「そう言ってもらえて良かったです。では週明けにでも正式に手続きを済ませましょうか」


「はい。ありがとうございます」


 そんな話をしながら歩いていると、間も無くしてカフェにたどり着いた。


「美旗さん、何頼みます?」


「ならカフェラテでお願いします」


「遠慮しなくても良いんですよ?」


 僕が首を横に振ると、先生は微笑みながら、注文の列へ向かう。


「フラペチーノとカフェラテを一つずつお願いします」


「かしこまりました。ではあちらでお待ちください」


 列に並んで注文を終えると、店員に促されて僕たちは脇で待つことになった。


「こちらがフラペチーノと、カフェラテですね」


 店員は僕にフラペチーノを、先生にカフェラテを渡していった。


「間違えられてしまいましたね。はい、これカフェラテです」


「ありがとうございます。これ、どうぞ」


「えぇ。どこか座れる場所は……あそこ、ちょうど空きましたね」


 店内を見渡してみると、休日ということもあって満席だったが、タイミングよく廊下側の席が空いた。


「それじゃあ、いただきます」


「えぇ。どうぞ」


 先生に買ってもらったカフェラテを口にする。店で飲むものは普段飲んでいるコーヒーよりも味が濃い気がする。


「そういえばアリス、大丈夫かな……」


「アリスさんなら大丈夫でしょう。いつもあの二人を御してくれていますし」


 先生はにこやかな顔でそう話す。よく考えれば三人は既に一年生活を共にしているのだから、余計な心配は無用だったかもしれない。


「それにしても、メイさんたち遅いですね」


「確かに。僕たちも結構長く列並んでたはずですけどね」


「そうよね。まさかアタシたちもアンタたちがこんな所で呑気に過ごしているなんて思わなかったわ」


「「うわぁっ!?」」


 僕たちがのんびりと話していると、後ろから怒気を孕んだアカリの声がして、そっと後ろを振り返った。


「ア、ン、タ、た、ちーー! 探したわよ! 何してるのこんな所で!」


「あ、アカリちゃん? 連絡しましたよね? カフェでいると……」


「来てないわよ、そんなの」


 アカリはすごい顔で先生を睨んでいる。


「あら? …………送れていませんでした……」


「まっっったく。とりあえずメイとアリスに連絡するわよ」


 アカリは一人でここに来ていた。どうやら皆で手分けして探していたようだ。




♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎♡♦︎




「いたー!」


「全く、どこをほっつき歩いていたんだ」


 アカリが二人に連絡すると、すぐに二人が飛んできた。


「すみません、私が連絡したつもりだったのですが……」


 先生は申し訳なさそうに縮こまっている。それを見た二人は顔を見合わせて肩をすくめる。


「それじゃあ、そろそろ行こうか」


「それより先にアタシも飲み物欲しいわ。アンタたち探して喉乾いちゃった」


 アカリがそう言うと、先生は財布を出してアカリに手渡す。


「では皆さんこれで何か買ってきてください。お詫びです」


「それじゃ、お言葉に甘えていただきます!」


「私もいただきます」


 上比奈知たちは先生にお礼を言うと、注文の列へと並びにいった。


「三人が来ると一気に賑やかになりますね」


「そうですね。でも、こんなのも悪くないとは思いませんか?」


「はい。皆なんだかんだ良くしてくれますし」


 先生はそれを聞いて優しげな顔でいる。




「買ってきました!」


「メイさん、お帰りなさい」


 少し待っていると、上比奈知は真っ赤なフラペチーノを持って帰ってきた。


「隣、座るね?」


 上比奈知は僕の隣に座る。後から二人も戻ってくるから、僕は奥の方へ席を詰めた。


「それは何……?」


「苺のやつだよ? 全部真っ赤なの」


 上比奈知はそれを近づけて僕に見せてくれた。確かに苺の匂いがする。それにしても上に乗っている生クリームまで真っ赤だからか、かなり毒々しい見た目だ。


 上比奈知と話していると、どこからか電話が鳴る音がした。


「すみません、電話出てきますね」


「分かりました」


 こうして先生は電話を取り出して離席した。


「……先生、行っちゃったね?」


「うん。やっぱり財閥の代表って忙しいのかな」


「多分? たまに夜出かけたりしてるし……」


「そっか」


 よく考えれば先生はどうしてわざわざこんな所で働いているのだろうか。出資しているという話ではあったが、それなら理事長のような仕事でもいいはずだ。


「そんなことより。ね、美旗くん」


「どうしたの?」


「これ、一口食べない?」


「え!? いやいいよ」


 上比奈知は軽く笑いながらそう提案してくる。僕を揶揄っているのは明白だった。


「美旗くんが飲んでたの、カフェオレでしょ? 遠慮したのかなーって」


「いやいやそっちの一口もらう方が気遣うよ!?」


「ほらほら、遠慮しないの。……どうぞ?」


 上比奈知はフラペチーノをこちらに差し出す。上比奈知が口をつけたストローにそのまま口をつけるのは、いくらなんでも恥ずかしすぎる。


「いやでも……」


 僕がたじろいでいる間にも上比奈知はにじり寄ってくる。

 

「アンタたち、何してるのよ」


「ひゃあっ!?」


 アカリの声がすると、上比奈知は驚いた様子で後ろを振り返った。


「メイ、アンタ顔真っ赤よ? 大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ! なんにもないから」 


 アカリがそう話すのを聞いていると、確かに後ろからでも耳が真っ赤なのが見えた。

 ということは、あれは……。

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