99ピッチ目 翼膜加工技術
「ガルバンさん、どうですか?加工、できそうですか?」
翌日、俺はファブリシオさんの工房を訪れていた。
急かすつもりはなかったが、全く望みがなさそうなのか、出来そうなのかが早く知りたかった。
「おうノボル!なんとかできそうだぜ!まだもう少しかかりそうだがな!」
よかった、うまく行きそうだ。
ファブリシオさんが言うには、翼膜はある種のゴムのような加工特性を持っており、熱を加えるとドロドロに伸びるようになるそうだ。
そうなってしまえばロープに巻きつけて冷ませば翼膜が巻かれたロープが完成すると言うわけだ。
加工が容易になる温度はおよそ800℃、鉄の融点のおおよそ半分だ。
ただしこの800℃、温度管理が難しいらしく、850℃を超えると融解してしまうらしい。
そうなってしまうと性質が変わってしまい、冷まして固めても元の翼膜の状態に戻すことは不可能になってしまう。
そうならないギリギリの温度感を肌で覚えるためにガルバンさんは奮闘していた。
「じゃあ俺はもう少し時間潰してますよ。急いでるわけじゃないから、ゆっくりで大丈夫です」
おう、と手を挙げて応えたガルバンさんだった。
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久しぶりの米に感動した俺は、ディエゴにお願いして田んぼを見せてもらうことになった。
「ノボル、この先に田んぼが広がってるよ」
周りと比べるといくらかぬかるみがマシな、踏み跡がある道を森の中進んでいく。
木々の向こう側に明るく開けた土地があるのが見える。
そして視界が開けた時、その光景に俺は息を呑んだ。
かつて子供の頃に見た田園風景がそこには広がっていた。
ずっと先まで田んぼが続いており、ところどころにポツポツと何軒かの家がまとまった小さな集落があった。
「あれは田んぼを管理している人の家だね。その家族の人たちがまとまってああやって田んぼの中に住んでるんだ。滅多にたんぼから離れないから、彼らにはなかなか会えないんだ」
日本の田舎とよく似ていた。
「ディエゴ、ありがとう。ここは俺が昔いたところとすごくよく似ているんだ。久しぶりにこの景色が見れて感動したよ。ありがとう…」
最後は言葉になっていなかったかもしれないが、久しぶりに見るこの美しい景色を前に俺は涙を流していた。




