96ピッチ目 蜥蜴人の町、クルメイロス
あの後ディエゴは仲間を連れてくると言って南に去っていった。
翌朝、ディエゴが仲間と見慣れない動物を連れてやってきた。
「やあ、よく眠れたかい?夜になると静かでいいだろう。あ、紹介するよ、クルメイロスの仲間たちだ。町まで馬車を運ぶよ。クルメイロスから南は道が整備されてるから、今みたいにぬかるみにつかまることもないはずだよ」
「ありがとう、でも俺たちが用があるのはクルメイロスなんだ。詳しくはまた後で話すけど…」
「俺たちの町に来てくれるのかい!?嬉しいなあ、そうと決まれば善は急げだ、みんな、サクッと運んじゃおう」
なんだかそこらの人間よりもずっといい人たちだ。
ここからディエゴたちの手際は素晴らしかった。
あっという間にぬかるみに埋もれた馬車を引き摺り出すとその動物にも引かせて馬車を引いて行った。
残った人間と蜥蜴人たちはその馬車に続いて徒歩でクルメイロスに歩いていった。
「クルメイロスまではここからあと何日歩くんだ??明かりが見えないから数日はあるんだろうけど…」
「んーとね、町まではあと三時間くらいだよ。僕たちはあまり火を使わないんだ。だから夜になっても暗い。街道沿いだからそれでも迷うことはないんだけどね」
俺たちはそれを聞いてすっかり安心した。
まだあと数日、このぬかるみの道を歩いて進まなければならないのかと思うと気が重かったが、三時間で着くというならあっという間だ。
やがてぽつぽつと建物が見えてきた。
木製に藁葺きの家がたくさん並んでいる。
「ついたよ。ここがクルメイロス、僕たちの町だ」
家の一つ一つは小さいながらもかなりの数の家が立っている。
当たり前だがあたりを見回しても蜥蜴人ばかりだ。
逆に彼らは俺たちの方を物珍しい目で見ていた。
こういう目は俺は慣れている。
ヨーロッパの山に行くと必ずこういった珍しいものを見るような目を向けられた。
もちろん親切にしてくれる者もいたが、それに対して心無い言葉を投げかけてくる者もあった。
その心無い言葉がないだけ、このクルメイロスはだいぶマシだった。
「ようこそクルメイロスへ!それで、この町に用事がって言ってたけど、どんな用事なんだい??」
ディエゴは相変わらず感じの良い雰囲気だった。
「実は、君たちが持っている技術を教えて欲しくてここまできたんだ。ギバランって動物がこの辺りにいるだろう??その翼膜加工技術を教えて欲しいんだ」
「あぁ、それなら加工屋がいるよ!案内するね!」
ディエゴ、この世界でオリビアの次にいい人かも…




