94ピッチ目 なんてことはなく
金銀街道三つ目の町、アルコレアはなんてことはない町だった。
ガルガージョ、レアノールがそれぞれ町の特色があったのに比べて、アルコレアは特段見るところもない、可もなく不可もない町だった。
ただ、風景はこれまでの草原地帯が進むにつれて急激に乾燥していき、アルコレアに着くころにはすっかり荒涼とした大地となった。
枯草と時折吹くつむじ風が砂を巻き上げて渦を巻いていた。
乾燥地帯に入ってからは顔に布を巻いて進んだ。
「アルコレア、悪くない町だったわね。私は割と好きよ、あの何とも言えない、見どころは無いけれどのんびりと時間が流れている雰囲気は」
確かにアルコレアはどこか田舎町の懐かしい雰囲気を感じさせる町だった。
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四つ目の町までは荒野が続いた。
四つ目の町、メディロスは金銀街道と十字に交わる低地街道との接続で交通の要衝となっている。
ここまでの町の中ではガルガージョもにぎわっていたが、メディロスが最もよくにぎわっている。
交通の要衝ということもあり、いろいろな人種の人々が街路を行き交っていた。
蜥蜴人もそれなりの人数見かけた。
「俺は自分の国以外でこんなに蜥蜴人を見るのは初めてだよ。でもやっぱり、ちょっと俺たち雪蜥蜴とは肌の色が違うんだな。彼らは俺たちと違って緑色の肌をしている」
アーガイルさんの肌は雪のように白い色をしている。
それでも彼は雪蜥蜴の中でも雪のない地域に出向いている方だから、国の人と比べるとくすんだ白さなんだそうだ。
沼蜥蜴の町に行く道を探すのは簡単だった。
町の中心で金銀街道と低地街道が十字に交差していて、各方面の行先の看板が立てられていた。
ここから金銀街道はさらに西南西の方角へ折れていき、最後はニエベス山脈鉱山都市、ガラヨアへ至る。
低地街道は南北に走る街道でほとんど垂直に金銀街道と交差しており、北は沿岸の町、サリア、南は沼蜥蜴のクルメイロスを通り遥か大陸南岸の港町、ベガラガルへと続いている。
「この町では一泊だけ泊まってさっさとクルメイロスに行こうぜ。俺は早く連中の技術を身につけたいんだ」
ガルバンさんは彼らの技術が気になって仕方ないらしい、根っからの職人気質だ。
「沼蜥蜴って、ほんとに沼地に住んでいるのかしらね。人間が行っても快適に過ごせるのかちょっと心配だわ…」
実は俺もそれは考えていた。
蜥蜴人が人間の世界に来たら違和感を感じるように、人間が蜥蜴人の世界に行ったら同じように違和感を感じて過ごしにくいのではないか…
不安を胸に、とりあえずメディロスでの今日の宿を探すことにした。




