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93ピッチ目 神


どうやら俺が崖を登って憤る信者たちに説教をたれている時にみんなには俺の背後に神が見えていたらしい。


レオノールに帰る間、ずっと信者たちがついてきた。


信者たちは口々にありがたいありがたいと言いながら恭しく後ろをついてくるだけで俺に声をかけることはしなかった。


しかしその信者たちもレオノールに着くと態度が一変して、あの崖で神の降臨を見た、このお方の仰ることに同調するように神が現れたんだと触れ回った。


これですっかり俺は担ぎ上げられてしまって金や食べ物を持ってくる者であふれる始末だった。


旅の途中でこんなにもらってもしょうがないし俺はこれを固辞した。


信者たちはそれを謙虚さ故と受け取ったらしく、ますます信心を深めるばかりのようだった。


「妙なことに巻き込まれちゃったわね。やめとけばよかったのに聖地の壁を登るなんて」


「マルセロがかわいそうだろ。それに俺は崖を登るのはだれにとっても自由だって言いたかったんだ」


ともかく、レオノールにこれ以上滞在するのはいささか気分が悪い。


なかにはついて来ようとする者たちもあったが、俺たちは惜しむ信者たちをなだめて町を出た。





「ノボル、お前神の代弁者だってよ。まあ、俺たちも見ていたがお前の後ろには確かに神がいたかもなありゃ。霧の中にデーンっと巨大な影が映っていて、不思議とノボルの言っていることに同調している感じがしたんだ」


ブロッケン現象みたいなものじゃないかとも考えたが、高山でかつ太陽を背負って霧に向かった時に出る現象だからブロッケンではない。


だとすると本当に…


俺は神の存在は信じている。


神、というと大げさだが、人智を超えた何かが働きかけることがあるとは思っている。


俺は日本人だから、なにかとお祈りをすることが習慣づいているし、俺がフィールドとしている山にはかならずそういった超現実的な何かがあると信じている。


「神の代弁者って、俺は俺の考えを話しただけだよ。レオノールの信者たちが狂信的すぎるだけだって」


マルセロは一緒についてきていた。


今は馬車の荷台で寝ている。


ともかく、無事にレオノールを出発することができて本当に良かった。


信者に詰め寄られたあの時、俺は怒りに任せてあの場で自分の考えをぶちまけたけど、もしあのまま信者たちに襲われていたらと思うとぞっとする。


俺たちのラッツァーニアでの旅は、いまだ目的地まで半分を過ぎたところなのだから。


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