9ピッチ目 ガルバンの力作
「ノボル、ついに完成したぜ。『カラビナ』だ」
俺の知っているカラビナと比べるとだいぶ不格好ではあるが、基本的な構造はシンプルなものだから機能的には問題なさそうだ。
「ガルバンさん、完璧です!あとは荷重テストをクリアできれば言うことなしですね!」
「おうよ!荷重テスト、早速やろうじゃねぇか!商人組合にはすでに話通してある。計量器を使わせてくれるとよ」
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「これはこれはガルバンさん、いつも素晴らしい武器防具の製造、ありがとうございます。あなたの装備はほかの町で高く売れるんですよ。で、今日は計量器を実験に使いたいとのことでしたね。どうぞどうぞ、お使いください」
計量器はまさに天秤だった。片側に計りたいものを乗せて、もう一方に重りを少しずつ載せていく。
ちょうど釣り合ったところで載っている重りの重さが、その計りたいものの重量というわけだ。
「じゃあ早速やらせてもらうぜ」
手際よくガルバンさんは計りたい側の皿を支えるロープをカラビナに掛けて計量器に固定した。
「お連れの方、お名前は…」
「あ、ノボルと申します。ガルバンさんに依頼してあれを作ってもらったのは俺なんです」
「ノボル様、私、商人組合の役員を務めております、ガマと申します。以後お見知りおきを。して、ガルバンさんが取り付けているあの道具はいったいどういったものなのですか?」
「あれは重量物をぶら下げることのできる輪のようなものです。ただし、輪のうちの一か所がゲートになっていて人の力で簡単に開け閉めすることが出来るんです。おかげで何かにとりつけることが簡単にできるんですよ」
などほど素晴らしいとガマさんが褒めたたえていたが、ガルバンさんが取付を終わらせたのを見て俺の気はそっちに取られた。
「よし、それじゃあ重りを載せていくぞ」
ガルバンさんは少しずつ重りを載せていった。カラビナ側には2.4トンの重りが載っている。
1トン、1.5トンと重りを載せていくにつれ、カラビナには強烈な荷重がかかる。
皿が少しずつ荷重が抜けてきている。
そしていよいよ、その皿は地面からふわりと浮き上がった。
カラビナは破断することなく耐えている。
ガルバンの製造したカラビナは、2.4トンの重量に耐えたのだ。
「ガルバンさん!成功だ!やりましたね!!」
「どうだノボル!見たか!これが俺の技術だ!」
ガルバンはこれまで見た中で一番いい笑顔をしていた。