89ピッチ目 二つ目の町
翌日、二日酔いの俺たち一行はガルガージョを発ってまた街道を進んでいた。
「気持ち悪い…飲みすぎたな昨日…」
街道はメリセナからガルガージョへの道と同じような雰囲気だった。
「ダメね…パリッサは調子に乗って飲んじゃいけないお酒だったわ…」
全員がきっちり二日酔いになっていた。
ガタゴト揺れる馬車がまたその二日酔いの気持ち悪さを助長していた。
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出た日こそ調子が悪かったが、二日酔いがなくなってからは順調に旅がすすんで、幾日か経って次の町が見えてきた。
「あれが二つ目の町、レオノールだ」
話に聞くところによるとレオノールには宗教的に重要な巡礼地が近くあるらしい。
なんでも牛飼いだった男が荷運び中に牛ごと崖から転落してそのまま三日三晩苦しみ続け、いよいよという時に天啓を受けて心身は癒え、無事に帰ることができたらしい。
その男が帰ってきてその話をしてからというもの、その崖で神を一目拝もうと人が殺到して聖地となったそうだ。
この出来事が千二百年ほど前の話だ。
崖と言われるとちょっと見てみたくなるが、さすがに聖地の岩壁を登るわけにもいかないし別にそこまでの興味はなかった。
巡礼者らしい格好の人とも何人かすれ違った。
黒衣に身を包んだ彼らは質素な姿でみな一様に首から見たことのないペンダントを下げていた。
宗教には詳しくなかったが、前世のキリスト教と仏教の僧を足して二で割ったような雰囲気だと感じた。
レオノールの町の入り口が近づいてきた。
「これはなかなか見事な町じゃねぇか」
ガルバンさんは城壁を首が痛くなりそうなくらい見上げていた。
門をくぐるとちょうど真正面に教会のようなものが見えた。
石造りの街並みは人でにぎわっているが、どこか厳かさを感じさせるような雰囲気があった。
教会は俺がこれまで見た建物の中で最も美しく、そして荘厳な建物だった。
「すごいなこの町は…俺の故郷にはこんな立派な町はないよ。教会だけじゃなくて町の建物すべて整然としていて美しい」
アーガイルさんもこの町には感動していた。
実際俺もこの町の美しさには感動している。
見物をして回っていると、修道士の一団が教会から整列して出てきた。
あたりの人々は手をすり合わせて彼らを拝んでいる。
なんだかますますキリスト教と仏教を合わせたような宗教だとおもえてしまった。
「とりあえず宿を探そう。特に見て回ることもないし、明日の午後には出発しよう。」
馬車を引いて俺たちは宿屋を探して路地に入った。




