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87ピッチ目 音楽の町、ガルガージョ


町の門が見えてくるとともに、どこからか陽気な音楽が聞こえだした。


その音楽は聴いているとどこか楽しくなって踊りだしたくなるような音楽だった。


近づくにつれてどんどんその音楽は大きくなってきたが、また別のところからは別の音楽が聞こえ始めた。


こっちは哀愁の漂う、故郷を一人離れ、どこへともなくさすらう旅人に似合うような曲だった。


ようやく門までたどり着くと門の上の看板にはこう書いてあった。


「音楽の町、ガルガージョへようこそ、か。通りでさっきから音楽が絶え間なく聞こえてくるわけだ」


「一つの音楽ならいいけれど、いくつも同時に聞こえてくるのはちょっと堪えるわね…」


確かにオリビアのいう通り、様々な音楽がいろんなところから聞こえてくるのはちょっとしんどかった。


宿を探しているとヘッドラップを巻いた女性が声をかけてきた。


「あなたたち、この辺の人じゃないね。初めて来るとうるさいだろう?この町は。宿屋を探してるんだったらあっちだよ。宿屋通りがあってその周りでは音楽を奏でるのは禁止なんだ。そこなら休めるから、行ってみると良いよ」


うるさいだろうといたずらっぽく言ったこの女性、おそらく旅人からはうるさいと言われ慣れているのだろう。


慣れていない旅人のために、宿屋通りでは音楽禁止というのはありがたかった。


お礼を言うと小さく手を挙げて女性はまた路地に消えていった。





女性に教えてもらった通り宿屋通りに来ると、確かに音楽は気にならなくなり静かな町になった。


いや、実際にはそれなりに雑音はあるのだろうがさっきまで音楽ががちゃがちゃなっていたのと比べると静かだった。


適当な宿屋に宿泊の手続きをして、馬と馬車を置いて街に出る。


それなりに人は出ている。


ここが宿屋通りだからだろうが、旅人風の風体の人が多かった。


せっかく音楽の町に来たわけだし、どうせならこの町の酒場通りに行きたかった。


メリセナを出てから数日、旅籠で酒は飲んだが町の居酒屋とはやはりちょっと雰囲気が違っていて、あくまで宿屋がメインといった感じだった。


だから久しぶりに町の居酒屋に行けることに少々胸が躍っていた。


酒場通りは宿屋通りの雰囲気とは打って変わって、カラフルな建物や派手な装飾の店がならぶ通りだった。


どこの店もそれなりにお客さんが入っていそうで、みんなが酒好きな陽気な人たちであることが分かる。


「兄さんたち、よかったらうちで飲んでかない?旅人には安くしとくよ!」


メキシコのソンブレロのような帽子の男が声をかけてきた。


見るからに陽気そのもの、といった雰囲気の男だったし、特にはいる店も決めていなかったからこの男の店で飲むことに決めた。


店の中でも陽気な音楽が流れ続けている。


一種類の音楽なら心地よく聞くことが出来た。


おもえばこの世界に来てから音楽というものをほとんど聞いていない。


そもそも当然のことながらこの世界にはCDもないし、音楽を流せるような機材も何もない。


のにもかかわらず、演奏している風でもないのに音楽が流れている。


不思議そうにしていると男が解説してくれた。


「これはね、音玉って呼ばれるものでね、音を保存するスキルの力が込められてるんだ。このたまに向かって音楽を演奏するとそれを保存してくれて、好きな時に音を出して聞けるってわけさ。この音玉を壺に入れて音を出すといい具合に反響してよく聞こえるってわけ」


全く、スキルってのは何でもありだな…


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