表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/121

81ピッチ目 次なる難関


テラスで大休憩をとろうと腰掛けると、はるか眼下に三人の姿が見えた。


これまですでに三時間ほどの時間が経過しているが、各々椅子を借りてくるなどしてうまいこと時間を過ごしているようだった。


オリビアが大きく手を振っている。


俺も手を振りかえした。


声は到底聞こえるはずがないが、俺がここまで問題なく登ってきていることは伝えることができる。


まだ下にいてくれていることが俺を勇気づけた。


上を見上げると、そこからはフィンガーとハンドが入り混じったサイズのクラックがどこまでも伸びていて、その突き当りに巨大なルーフが見える。


そのルーフを正面から乗り越すことは不可能だ、おそらく十メートル近く奥行きのあるルーフだし、下から見上げたところルーフの面はつるっとしていてクラックどころかホールドもそうは無さそうだ。


「あのルーフに突き当たって、そこからトラバースだな。ホールドがあると良いんだが…」


懸念していたのは突き当りのルーフまで行ってトラバースが不可能だった場合だ。


その場合、カム、もしくはピトンを支点に懸垂下降で降りてこなければならない。


とりあえずもう少し近くまで登ってみよう、よく見えるところまで登ってから検討すればいい。


俺はクラックに手を突っ込んだ。


さっきまでのワイドクラックとは打って変わって、快適なクラッククライミングが続く。


三十メートル、四十メートルとロープを伸ばしていくが、特に休めそうなテラスなどもない。


どこかでピッチを切らなければならないが、どうやらこのクラック上のどこかで一度無理に切る必要がありそうだ。


六十メートルいっぱいまでロープを伸ばしたところでピッチを切った。


フリーで登ってきたところも仮にロープを出したと仮定すると、ここまで六ピッチくらいになるだろうか。


ただしこの六ピッチのうち何ピッチかはロープをいっぱいに出してのピッチだから、長さにするとなかなかの登攀距離になる。


ルーフ部まではあと三ピッチはかかりそうだ。


だが幸いにもクラックはどうやらこの快適なまま突き当りまで続いているようだった。


このまま登って行って道が開けるのか、それともあの大ルーフに阻まれてどん詰まりになってしまうのか、それはわからない。


このクラックの途中で別のルートに分岐できそうな部分も無く、両サイドの壁は相変わらずのっぺりしてつかみどころがない。


でもここまで来たんだ、登るしかない、なんとかしてあのルーフ部を攻略してやる。


俺は次のピッチをスタートした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ