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77ピッチ目 ラッツァーニア地方


船旅は特に嵐に遭うこともなく極めて順調に進んでいた。


今日の昼過ぎにはラッツアーニア地方の港湾都市、メリセナに到着する。


メリセナは石造りの建物をカラフルにペイントした美しい街並みが有名らしい。


もとは漁師の町で、この地方特有の深い霧の中でも自分の家をすぐに見つけられるように明るい色でペイントしたのが始まりだと言われているそうだ。


「ガルバンさんは前に南の大陸に来ているから、メリセナのカラフルな街並みも知ってるんでしょう?可愛らしい町だっていうから今から楽しみね」


オリビアは女の子らしい素直なリアクションでワクワクを隠せずにいる。


「俺が前に南に来た時はメリセナ行きの船じゃなかったんだ。そのころは連絡船がもう一本出ていて、俺が乗った船はエストルデって町に行く船だったんだ。エストルデはメリセナよりももっと東にある町でな、かなり乾燥している地域で町の外には砂漠と乾いた山岳地帯が広がっているんだ」


メリセナは湿潤な気候で、ガルバンさんが行ったエストルデとは同じ大陸だが全く様相の違う町だ。


ともかく、初めての一週間にも渡る航海で早く船を降りたかった。





ガラン、ガラン、ガランと港の鐘が俺たちの乗る連絡船の到着を迎えている。


ポルトマルクも大きな町だったが、メリセナはそれとは比べ物にならないほどに大きな町だった。


巨大な港の東側に巨大な岩壁がずっしりと構えている。


目算で五百メートルほどありそうなほど巨大な、クライミングできそうな岩壁だ。


オリビアがちょっとジト目でこっちを見ている気がしたが、俺はあえてそっちを見ることはしなかった。


「みなさま、一週間の船旅、お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしております。良い旅を!」


最初から最後まで船長は気分のいい人だった。


「さて、まずはどうする?とりあえず陸に上がった記念で酒場に行くか?」


当然、異論を唱える者はいなかった。





キャメロット、店の看板にはそう書いてあった。


中に入るとカウンターといくつかのテーブル席がある、バーのようだ。


「いらっしゃい、何にするね?」


初老の男がマスターらしく、グラスを拭きながら俺たち四人を出迎えた。


「エールはありますか?」


何も言わずに頷いたマスターはすぐに木製ジョッキになみなみ注がれたエールを持ってきた。


ポルトマルクで飲んだものよりもだいぶ色が黒い。


「この地方じゃ黒いエールが普通でね。ま、飲んでみな」


ぶっきらぼうだが俺が何も聞いていないのに教えてくれた。


それにバーカウンターの中からちらちらこっちを見て反応をうかがっている。


ちょっとかわいいおじいちゃんだ。


「それじゃ、まずはラッツァーニア到着に乾杯!」



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