71ピッチ目 ガルバンさん大繁盛
「それで次はクムジュンガって山に挑戦しようと思うんだ。冬が終わるまではしばらく動けないだろうけどね」
俺はシーカから自宅に帰って来ていた。
ギデオンさんとオリビアの家の近くに新しく家を建てた。
以前ジムの建築をお願いした業者に今度は自宅を建ててもらった。
今回もガマさんが間に入って交渉してくれて、普通に依頼するよりも安い値段で建ててもらうことが出来た。
「冬の間はやっぱり登れないものなの?」
「冬の間は無理だね。氷河の状況も分からないし、春になって雪と氷の量が減ってこないと恐らくアクセスは難しいと思う。それでも氷河を超えるのにそれなりの人手と装備が必要になるから、今のうちからガルバンさんにお願いしておかないといけないな…」
ふぅん。とオリビアはなんとなく聞き流したような感じで返事をした。
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「ガルバンさん、お久しぶりです。繁盛してそうですね」
ガルバンさんの工房に久々に訪れたが、前よりもさらに規模が大きくなっていた。
従業員も以前の十倍くらいまで人数が増えている。
ワイバーン合金が世界的大ヒットで生産が全く追いついていないらしい。
「おうノボル、久しぶりだな。おかげさまで大繁盛だぜ。商会通して発注がガンガン来るんだが、ワイバーンの骨の入荷が間に合わなくてな。まあワイバーン自体は大量に繁殖しちまってて狩っても狩ってもキリがない状態らしいから底をつくことはなさそうだが、いかんせん狩りのスピードが間に合ってないみたいでな」
それはそうだろう、かつてはブラスハイムの部隊が出張っていってワイバーンを狩っていたが、今ではワイバーンが襲ってくるのを迎え撃つ形でしか狩りをしていないのだ。
「昔みたいにワイバーン狩りに出張っていって狩ってくれればある程度在庫も確保できそうですけどね…」
「どうやら復活したみたいだぜ。私兵で狩猟部隊を編成してワイバーンを狩って金を稼いでるんだとよ。確かその隊長、ジークって言ってたな」
まさかフローデンでジークの名を聞くことになるとは思わなかった。
探検隊の仕事を続けているのか分からないが、相変わらずワイバーン狩りで生計を立てているみたいだ。
ワイバーンの骨の需要が激増しているからジークにとっては願ったり叶ったりだろう。
ただ、骨ばっかり需要が増えているとなるとほかの部位がどうなっているのか気になるところだ。
ワイバーンからは骨のほかにも鱗や翼膜や爪など様々な素材が採れる。
肉は食用になるから市場に流せば売れていくが、鱗や翼膜はそれほど大きな需要が無いのが現状だ。
今までは全体の需要がある程度バランスが取れていてどちらかと言えば骨が余り気味というような状態だったが、その骨の需要が激増したから相対的に鱗や翼膜は余ってしまっているんじゃないだろうか。
何か使い道が見つけられると良いんだけど…




