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61ピッチ目 青年


パラレルが開店して三か月が経った。


客足は順調に推移しているし、一定数の常連客も出来てきた。


常連客の中にはそれなりに上達してきて三級、四級を登るようになってきた人もいる。


「あ、ノボルさん、お疲れ様です。この間あそこの緑色のホールドの二級が登れたんですよ!それが嬉しくてノボルさんに話したくて!」


「それはすごい!あの二級は、俺の自信作なんです。考えさせられる面白い課題だよね」


意気揚々と声をかけてきたのは通りの反対に住んでいる青年、イシタスだった。


彼は毎日のようにジムに来ては何時間か登って帰る生活を続けている。


前にそんなに体を酷使して大丈夫かと聞いたが、クライミングが楽しくてしょうがない、空き時間があるなら登りたいと言っていい笑顔を見せてくれた。


三か月ほぼ毎日通っていたら確かに二級くらいは登れるようになるが、それにしても身のこなしにセンスがある。


バランス感覚が良いというか、ボルダリングの基本であるカウンターウェイトが意識せずすんなりできたり、腕に掛かる負担が最小限になるような足さばきも上手い。


運動神経が良いのだろう。


こういう子が意外と将来この世界のクライミング界を牽引するようなクライマーに成長していくのかもな。


「イシタス、君は本物の岩に登ってみたいとは思ったことないか?」


「本物の岩か…ちょっと怖いけど、登ってみたいという気持ちは少しありますね。でもここみたいにクッションはないんでしょう?」


「もちろんジムみたいな本格的なクッションは無いが、外の岩を登る時は簡易的な持ち運びできるクッションを持って行くんだ。どうかな、一緒に行ってみないか?」


確かに外岩初心者が外岩のボルダリングをやることを敬遠する理由として一番多いのが落ちた時にどうするんだろう、という恐怖感だ。


俺も初めて外岩を登った時はそうだった。


落ちたらどうしよう、クッションもない、もちろん地面は平坦とは限らない、怪我をするリスクはどうしても高くなる。


イシタスは悩んだ様子で言った。


「正直、怖いです。でも、ノボルさんが引率してくれるのなら行ってみてもいいかなって思います」


簡単そうなところでまずは彼の怖さを解消したい。


ラズの村の方へ行けば岩がゴロゴロした平野があったはずだ。


あのあたりでそれほど高さもなくて、かつそこそこ登りごたえのある岩を探して登りに行ってみよう。


クッションはまぁ、ガルバンさんに頼めばどうにかなるだろ…。


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