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55ピッチ目 クライミングジム


土地が決まってからは早かった。


建物の手配も商会がやってくれるとのことで、ガマさんとともに俺の構想をさらに現実的なものに煮詰めていく作業が始まった。


ここはこうした方が良いのでは?あそこのこれはちょっと改善した方が良さそうだ、と、時折ガルバンさんも意見を言いに来ながら建物の大まかな構想は二週間ほどで出来上がった。


大枠が決まればあとは建築を依頼するのみ。


商会主導で上物の建築が始まった。


それにしても商会は本当にこの町で行われるあらゆる商取引に介入しているといまさらながら驚いている。


それだけ影響力を持っている商会が味方についてくれているのは俺的には最高に心強かった。


俺は商会に今回のことをはじめとしたいろいろな便宜を図ってもらえるし、商会は俺とガルバンさんの作ったカラビナで儲けている。


Win-Winな関係だ。


そんな影響力の商会が推し進める工事だ、あっという間に建物が形になり始めたその頃、ようやくドーバークラブがフローデンに届き始めた。


「ノボル様、ご依頼頂いていたドーバークラブ、到着致しましたよ。これをどう加工したらいいんでしょう?」


「ガルバンさんに詳しく聞いてみましょう。工房の方に運んで頂けますか?」


こうしてガルバンさんの工房に大量のカニが運び込まれた。


うずたかく積まれたそのままのカニの死体はなかなかの異臭を放っている。


「おいノボル、臭いぞこれ…俺の工房にこんなもん持ってくるなよ…」


「まあまあ、さっさと加工作業やってしまいましょうよ。それで、これをどうしたらいいんですか?」


「必要になるのはこいつらの殻だ。粉末状にしてそれを材料として使う。でだが、見ての通りこいつらは体長十センチにも満たない小さなカニだから可食部がほとんどないんだ。そのまますりつぶして乾かせば粉末状に出来る。あの石臼使っていいから、お前それで挽いてみろ」


とは言われたものの、まだ俺の体はがっつり力を入れると背中や腰が痛むから石臼を使っての作業なんかできるわけがない。


それに気付いて悪いと思ったのか、結局ガルバンさんがごりごり石臼でカニをすりつぶしてくれることになった。


「まったく、なんだって俺がカニを潰さなきゃいけねえんだ」


と言いつつ、さすがのガルバンさんだ。


手際よくカニをごりごり潰していくとなんだかネチョッとしたものが出来上がった。


「気持ち悪いですねこれ…これをほっぽって乾かしておくと粉末になるんですか?」


「いや、こいつに熱を入れてこげない程度に乾かすんだ。見てな」


火の扱いには鍛冶屋ガルバンの本領発揮だ。


焦げないいい具合の火加減でカニのペーストを乾かしていく。


「そういえばガルバンさんのスキルって何なんです?やっぱり鍛冶屋関係のスキルなんですか?」


「俺のスキルは熱探知だ。物体の温度が今どれくらいか事細かにわかる。表面温度とか、深部温度とかもわかるから鍛冶屋向きだな」


なるほど、それでやたらと熱を入れるのが上手なのか。


鍛冶屋にとっては確かに熱入れの行程を数値化してみることが出来るのはものすごい強みになる。


金属は熱によってその組成を変えてしまうから、温度が高すぎても低すぎてもいけない。


それがガルバンさんの鍛冶屋が繁盛する所以だろう。


あっという間にペーストはからからになって水分がとんだ塊が出来上がった。


「こいつをもう一回ほぐして乾かしておくんだ。そうしたら最後はぽろぽろ崩れる粉末になるってわけよ」


これでホールド問題も無事解決しそうだ。


着々とクライミングジムの立ち上げに向かって進んでいる。


フローデンにこの世界初となるクライミングジムが出来上がるのもそう遠くないだろう。


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