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53ピッチ目 なんでも屋”ガルバン”


「ガルバンさん、お久しぶりです」


「ノボルじゃねぇか!どうしたんだお前、杖なんかついて!」


「いやぁ、実はリーゼホルンの登攀、失敗しちゃって…落下してこのざまですよ」


そいつぁ…とガルバンは言葉を詰まらせた。


「まあでも、数カ月あれば良くなるってことらしいのでとりあえずしばらくはおとなしくしていますよ。最近忙しく駆け回っていましたから」


「そうだな…とりあえず座れや」


ガルバンさんが用意してくれた椅子に腰かける。


松葉杖みたいな杖をついての生活だったが、ずっと松葉杖ってのがこれがなかなか大変だ。


どこに行くにも松葉杖で体を支えていないと腰回り、背中回りに激痛が走る。


言うことを聞かない体に少々のいら立ちも覚えていたが、とりあえず今はおとなしくしていようと思っている。


「実は考えていることがあって今日はまたガルバンさんにお願いしに来ました」


「お前が来るってことはそうだろうと思ったが、今度はいったい何しようってんだ?」


さすがガルバンさん、だんだん俺の考えていることが分かってきたみたいだ。


「実は、クライミングが出来る施設をこの町に作りたいと思っているんです。もっとクライミングの楽しさをみんなに知ってもらいたいと思いましてね」


これにはガルバンさんも驚きを隠せない様子だった。


俺にとってはクライミングジムは決して珍しいものではないけど、街中でクライミングってなるとこの世界の人はきっと岩を運んできて設置して…と考えるのだろう。


無理もない、そもそもクライミングの文化がないこと世界で、人口的に岩に模したものを作ろうなどと考えが及ぶはずがない。


「ガルバンさんには表面がザラザラしたこぶし大ほどの石みたいなものを作ってほしいんです。それを壁に固定して、それを掴んで壁の上まで登る、これが俺の構想です」


「それは、どういう素材で作ったらいいんだ?」


「そこが難しいところで、木製の壁に固定する以上、金属は使えません。重量的にね。木製も考えましたが、ある程度の大きさが無いと強度が心配ですよね。何か思いつく素材はありませんか?」


正直、この素材の問題が一番の難点だと思っている。


前世ではホールドの材料にはポリウレタン樹脂が使われることが一般的だった。


型に流し込んで硬化させたあと、表面が発泡、ザラザラの表面の出来上がりだ。


しかしポリウレタン樹脂を作るとなるとまた相当な手間がかかるだろうし、そもそも簡単に手に入る素材で作れるかどうかも分からない。


それにポリウレタン樹脂がどういうものか上手く説明できないから、アイギスに聞くのも難しい。


もちろん先に聞いてはみたんだが、そういったご要望に対応できる素材は私のデータベースにはありません、と言われてしまった。


「おいおい、俺は鍛冶屋だぞ…まぁいい。今じゃお前のせいでなんでも屋みたいになりつつあるしな。でだ、金属みたいな重量もなく、人がぶら下がれる強度が確保出来りゃいいんだよな?あるぜ。そういう素材」


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