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47ピッチ目 ダイヤモンドクラック


その後ラズも無事、二ピッチ目の終了点まで登ることができた。


さすがに一ピッチ目の終了点の時のような元気の良さは無くなっていた。


二ピッチ目から上、氷の道はしばらく続いてそうだが、おそらく三ピッチ目の途中で途切れていそうだ。


しかもその先は見上げた限りではほとんど支点を作れそうなクラックやフレークが見当たらない。


一ピッチ目、二ピッチ目と比べると格段に難易度が上がりそうだ。


「ラズ、大丈夫か?まだいけるか?」


「うん、まだいけるよ。ちょっと怖かったけど、これで落ちないことはわかったから」


強い心だ。


ロープがつながっているから地面まで落ちることはないと頭ではわかっていても、初心者は落ちることを怖がって萎縮するものだ。


だがラズはそれでもトライすることを選んだ。


なかなかできない選択だろう。


「次のピッチ、難易度が極端に上がると思う。無理だと思ったらすぐに言ってくれよ」


ラズが力強くうなずいたのを見て俺は三ピッチ目に登り始めた。


出だしは決して悪くない。


二ピッチ目と同じ氷の道だ。


だが登っていくにつれてその氷の道はだんだんと狭くなってくる。


太陽が氷を照らし、まるでダイヤモンドのようにキラキラと輝いていた。


ダイヤモンドクラック、俺はこの氷の道をそう名付けた。


しかしそのダイヤモンドクラックもあと一手で終わりを告げる。


その先はつるっとした岩、そして凹みに薄く張り付く氷しかない。


左右を見渡しても手の届く範囲に登れそうなルートは見当たらない。


この平らなフェースを登っていくしかなさそうだ。


幸いアイスバイルとアイゼンがあればほとんど凹凸の無い壁でも、本当に小さな突起や穴に歯をひっかけて登ることも可能だ。


もちろん相応の技術は求められるが…


十メートルくらい上になんとか支点のとれそうなフレークがある。


「十メートルのランナウトか…プアな支点でリスクはあるけど、仕方ないよな」


ランナウトというのは支点間の距離が長い等の理由で、支点を取っていない状態で登ることだ。


当然、最後の支点から登った距離が延びればその分落ちた時の落下距離も長くなる。


落下距離が長くなるということは、落下が止まった時にかかる荷重も大きくなり、人間にも支点にも強い力がかかる。


人間はおよそ十二キロニュートンで死亡、七キロニュートンで重大なダメージを負うと言われている。


支点はその種類や岩質、打ち方などでその耐久性は大きく変わり、場合によっては数キロニュートンで崩壊することもある。


そんな危険を冒すクライミングを強いられるわけだ。


「こんなクライミングいくらでもやってきたさ!見てろよ、ラズ!!これがクライマーだ!!」


絶対に登ってやる、このフェースを。


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