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38ピッチ目 商会の蛇


「ノボル様、どうもどうもいつもお世話になっております。ポルトマルクから戻られたところでしょうか?」


さすが商会の蛇と呼ばれる敏腕商人、ガマだ。


耐食性試験から戻ってくるのを今か今かと待っていたような雰囲気だ。


この男がフローデンにやってきたおかげで町全体が大きく発展したとさえ言われている。


感じのいい男だし、俺やガルバンさんには親切にしてくれる。


しかしたまに目にするほかの取引先の人間に対する冷たい対応は、なるほどこれは一流の商人だと思わせる。


俺やガルバンさんを抱えることで金属製品に関しては世界を牛耳ることが出来るだろう。


それだけの大発明だ。


まあ俺じゃなくてアイギスの知識なんだけど…


「どうもガマさん。そう、ちょうど昨日ポルトマルクから戻ってきたところです。そして見てくださいこのカラビナ。十日間、潮風と波にさらされたカラビナです。揺られたから表面に少し傷がついてはいるけど、錆が全く発生していない。最高の結果です。錆びやすい環境での使用に十分に耐えることができるでしょう」


カラビナを手渡すとガマさんは恭しくそれを受け取り、素晴らしい…と声を漏らした。


「ノボル様、これは…本当に依然申し上げた通り世界に革命が起きますよ。あなたにもとてつもない大金が舞い込むでしょう。そうなれば、あなたの人生も大きく変わる。それだけの大金を手にしてどうなさるおつもりですか?」


「俺は別に大金に興味はないですよ。ただ山に登ってクライミングをして、誰も登ったことの無い高峰に登りたいだけです。とはいえ、生きていくための金も必要だし、山に登るのは金がかかります。だから金が要る。俺とガルバンさんはあなたにこの金属製品を提供します。あなたはそれを売りさばいて俺たちに金をもたらしてくれる。ウィンウィンの関係です。信用していますよ、ガマさん」


ガマさんは目線を合わせたまま小さく頭を下げた。


口ではそう言ったが、正直この男のことを盲目的に信用することは到底できない。


そもそも商人との取引はギャンブルだ。


もちろん商人がいなければ俺たちが製品を売りさばくことはできない。


できても小さな規模でちょっとした金を得られる程度だろう。


だが商人とは、謀略、裏切り、自分の利益のためなら何でもする連中だ。


絶対にワイバーン合金の製法は漏らしてはいけない。


ワイバーン合金を作れるのが俺とガルバンさんだけだから今は俺たちを抱えていなければならないが、もし自社で製造できるようになれば俺たちから買うよりも低コストで調達できるようになる。


そうなれば俺たちは不要になる。


今は注意深く、上手く商人と付き合っていかなければならない時だ。


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