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36ピッチ目 蜥蜴人の登山家


「なかなかいい店ね。料理も美味しいし、ワインも種類が豊富だし」


ポルトマルクの表通りに面したバー、オニックス。


ワインをメインとしたそれに合う料理を提供している。


と言っても、ワインの種類は数種類しかないし、前世のワインバーと比べると些か物足りない気もする。


ただし、肉料理は絶品だった。


外国から輸入される牛をポルトマルクでしめて提供しているのだそうだ。


「この牛肉はどこから輸入された牛なんだろう?」


「私も海外のことは全くわからないわ。ポルトマルクまでが私の世界ね」


(マスター、この牛はベロゼルスク地方から輸入された牛です。地域全体の標高が高く、寒暖差が激しいことで適度に肉の引き締まった牛が特徴です)


「ここの牛はベロゼルスクから輸入した牛だ」


俺たちの座るテーブルの右隣、一人で飲んでいる蜥蜴人が話しかけてきた。


「ベロゼルスクっていうのは、ここからは遠いんですか?」


「ここまで二週間くらいの船旅だな。ここよりもっと北の寒い地域だ。俺の故郷だよ」


正直、口にはしないが蜥蜴人がそんな寒い地域で暮らしているとは思っていなかった。


トカゲは変温動物だし寒い地域には向かないはずだ。


「蜥蜴人なのに寒い地域で平気なんですか?」


俺の質問に蜥蜴人はカラカラと笑って答えた。


「蜥蜴人の中にも種類があってな、俺たちは雪蜥蜴ってんだ。他には砂蜥蜴とか沼蜥蜴とかが一般的な種だな」


蜥蜴人と一言にいっても種類がいろいろあるんだな。


「蜥蜴人もみんなスキルを持っているんですか?」


「あぁ、持ってるよ。俺のスキルは氷柱。十リットルくらいまでなら瞬時に水を凍らせることができる能力だ」


なるほど、蜥蜴人と言えどスキルの能力は人間と同じ規模の能力なんだな。


「申し遅れました。俺はノボル、こっちはオリビアです」


「俺はアーガイルだ。君たちはこれから船でどこか旅に出るのかね?」


そうではないと言おうとした時にアーガイルさんの荷物に目がいった。


大きなザックに色々なものがぶら下げてある。


俺の見る限り登山道具のように見える。


「いえ、俺たちはこのポルトマルクに用があっただけでまた何日かしたら帰るつもりです。それよりアーガイルさん、ひょっとして登山をするんですか?」


「なぜわかった?あぁ、この鞄を見たのか。その通り、俺は世にも珍しい蜥蜴人の登山家なのさ。ベロゼルスクは高原地帯だからな、山がたくさんあって昔から登っていたんだ」


登山家。


この世界にも登山家と呼べるような実力者がいたのか。


いや待てよ、この世界にはクライミング道具の発展が全くないから、クライミングはやらないはずだ。


だがもしそうだったとしても山を登るという楽しみや苦しみを共有できるかもしれない相手と出会えたことが何より嬉しかった。



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