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32ピッチ目 リーゼホルン


「それで、あのリーゼホルンのふもとまで行くのは大変なのか?例えば俺が行きたいって言ったら行けるものかな?」


俺が聞くとヨルハはのけぞって笑った。


そんなに変なこと聞いたか?


ちょっと嫌な感じだ。


「そらあんた、金と時間さえありゃどうにかなるかもしれないが、そもそもあんなところ行ったってなにもないよ?あるのは氷と岩と山だけさね」


「俺は登山家だ。リーゼホルンが未踏峰ならどうしても登りたい。だめか?」


ヨルハの表情が見るからに変わった。


それまでのバカにしたような顔から真剣なまなざしに。


「あんた、それ本気で言ってるのかい?」


「本気だ」


「悪いことは言わないから、あの山はやめておいた方がいい。私もふもとまでは行ったが、とてもじゃないが登れるとは思えない。ツルっとした岩壁に、ところどころに氷が張り付いている。しかもその氷がいつ剥がれて落ちてくるか分からないと来てる。命が惜しいならやめておいた方がいい」


なるほど、なんとなくリーゼホルンがどんな山かイメージが付いた。


前世ならパタゴニアのフィッツロイ岩峰群のような岩質なはずだ。


もしくは映画にもなっていたメルーのシャークスフィンルートか。


つるつるした白い岩壁がどこまでも果てしなく続き、その極寒の環境下のために手袋を外すこともままならない。


つまり、アイスアックスを両手に持ってそれを時に岩に引っ掛けながら、時に氷に突き刺しながら登っていくミックスクライミングが求められるということだ。


マシカラのように登攀しやすいルートが引かれていることもなく、段違いにレベルの高いクライミング技術と類稀なる精神力が必要だ。


「それなら尚更登りたい。俺は絶対に登れないと言われれば言われるほど燃えるんだよ」


俺のこの発言にヨルハは呆れ返っていた。


「どうしてもって言うなら止めはしないけどさ…まあいいよ。私たちも来月、北西への探検に出発するんだ。リーゼホルンの麓にキャンプを張るから連れてってやるよ。ただしどうなっても私たちは責任は取らないからね」


望むところだ。


俺にとっては挑戦する機会を得られただけで大きな一歩だ。


前世でもそうだった。


世界の名だたる高峰は、挑戦することすら簡単には許してくれない。


最も大きな障害は資金面、次いで天候などの条件だろうか。


リーゼホルン。


挑戦権を手に入れたからには絶対に登ってやる。


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