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22ピッチ目 クラック講習会


「それじゃあ、今からこの割れ目の登り方、ジャミングを教える。実際に俺がやってみるから、みんな見てて」


思っていた三倍人が集まってしまった。


結局三十人くらいは集まっている。


「まずは割れ目、クラックに手を入れる。この時、手の力は出来る限り抜いている状態にすること。そして出来るだけ引っかかるところを探して、親指を手の内側に曲げるんだ。親指の先で小指の付け根を触るようなイメージだね。そうすると今度は親指の付け根の筋肉が盛り上がるのがわかると思う。その盛り上がった筋肉が割れ目に引っかかって抜けなくなるんだ。実際に登ってみるよ」


これはいわゆるハンドジャム、手全体がクラックに入る時に使える最もポピュラーなジャミングだ。


体を保持する力(保持力)もあらゆるジャミングの中で最も強く、これが使えるクラックなら熟練クライマーは全く苦も無く登ることが出来る。


俺はあんまり登ってもしょうがないからと三、四手進めたところで降りた。


「すごいな…こんなこと思いつきもしなかったよ。ノボルは簡単そうに登るけど、あっさりできるものなのかい?」


昨日やたら食いついてきていた男、ラズが真っ先に質問してきた。


見るからに俺より年下で人懐こい感じだ。


「ラズ、やってみるか?最初はなかなか引っかからずに体を持ち上げるのは難しかったりするが、まあ一日あれば簡単なところなら登れるようになるさ」


恐る恐るラズはクラックに手を入れて、俺の見様見真似で手を膨らませた。


ぐいぐい引っ張って効きを確認している。


「ノボル、すごいよこれ!力を入れていればちゃんと抜けずに引っかかってる!これなら体を持ち上げることが出来そうだ!」


ハンドジャムが効いたラズは目を輝かせている。


「ちゃんと聞いてるみたいだね。そのまま何手かすすめてごらん。けど調子にのって登り過ぎると降りれなくなるから気をつけろよ」


ラズは相変わらず笑顔のまま、一手、二手とクラックを登り始めた。


教えてないのに、足も上手く使ってる。センスのいいやつだな。


そもそもマシカラに挑もうという男だ、全くセンスがないやつなら生きて戻ってこれないだろう。


それにあのクラックのところまでは登っているわけで、クラックの起点までで百メートルはある。


ラズはすいすいと高度を上げていった。


「おい、その辺にしておけ、降りてこられなくなるぞ」


「うん!もう少しだけ、あの岩棚のところまで登ってみるよ!」


そう言ってラズはまた登りだした。


天才。


その二文字が俺の頭に浮かんだ。


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