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17ピッチ目 巣


大ルンゼの登攀はこれまでの固い岩のクライミングから一転して、ゴロゴロした浮石の多い不安定なクライミングを余儀なくされた。


傾斜が緩くなったために強度は下がっているが、今掴んでいる石、踏んでいる石がいまにも崩れるかもしれない。


そんな精神衛生上良くない状態が続いた。


大ルンゼの底にはほんの少しの水がちょろちょろと流れている。


水を調達して大ルンゼの先に進んだ。


相変わらず深い霧が視界を遮っているが、ルンゼ内であれば道迷いの心配はない。


足元に巨大な岩石がゴロゴロ転がっている大ルンゼ内はクライミングというよりは四つん這いになって進んでいくようなイメージだ。


チルナーダ山の山頂から見た時の記憶だと、だんだんとルンゼは傾斜を増して左稜線に出る辺りではほとんど垂直に近い角度になるはずだ。


今のうちは良いが、垂直に近づいたときにこのもろい岩でどれくらい進めるかは賭けだった。


正直、俺が想定していたよりも岩の状態は悪かった。


人の入っていない山でこれほど浮石が多いということはこのエリアの岩がそれだけもろく、ちょっとした自然の要因で岩が剥がれるということだ。


つまりそれだけ落石が多いということ…。


と思った次の瞬間だった。


ガラガラガラと音を立ててこぶし大から頭蓋ほどの大きさの岩がいくつもルンゼ内を転がり落ちてきた。


「クソっ、まずい!」


たまたま眼前にあった大岩の陰にとっさに身を隠した。


落石の群は俺の隠れている大岩にいくつもぶつかりながら眼下のルンゼ内を転がり落ちていった。


砂埃を上げ、時にほかの浮石を群れに加えながら落石は轟音と共にルンゼの出口から飛び出し、大地に降り注ぐのだろう。


「危なかった…まずいな、入った時から予感はしていたがこのルンゼ、恐らく落石の巣だ。急いで抜けないと命がいくつあっても足りないぞ」



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