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101ピッチ目 再現


フローデンまで戻ってきたころには晩冬に差し掛かっていた。


俺たちはクルメイロスから、来た時と同じように低地街道、金銀街道を通って海を渡りフローデンまで戻ってきた。


マルセロは初めて見る景色に目をくるくるさせていた。


フローデンの西に広がる大森林、そして北に広がる美しい山々、そのすべてがマルセロにとっては初めて見るものだった。


ガルバンさんはさっさと自分の工房に戻ってすぐに翼膜加工を試し始めた。


俺とオリビアは家に帰ったが、アーガイルさんとマルセロにはとりあえず、パラレルの隣の家に入ってもらった。


アーガイルさんは国に帰ると言ったのだが、マルセロに引き留められて仕方なくフローデンまで来たのだった。


「マルセロ、クライミングやってみるか?」


カラフルなホールドが取り付けられた壁を見てマルセロは登りたそうにしていたから、ボルダリングに誘ってみた。


キラキラした目をしてマルセロは大きくうなずいた。


あの聖壁は決して難しいわけではないが、子供がロープも無しに登るのにはちょっと勇気がいるし、大人とはリーチの差もある。


あれを登ったとなるとマルセロには心身ともにクライミングのセンスがあるのではないかと思っていた。


案の定、マルセロははじめこそぎこちなかったが教えたことをすんなり飲み込んで実践できるセンスの良さがあった。


彼も将来は一緒に登れるクライミング仲間に成長するかもしれない。





「ガルバンさん、どうですか?」


二日後、俺はガルバンさんの工房に様子を見に来た。


「お、来たな。見ろこれ」


ドサッと渡されたロープには、驚くべきことに表面に綺麗に翼膜がまかれていた。


ある程度の伸縮性も確保されているし、巻いた時の厚さの違いによる表面の引っかかりもない。


「ガルバンさん、完璧じゃないですか!これならかなり強度アップになりますよ!それに軽い!中のコア部が透けて見えるくらい薄いからかなり薄く巻くことに成功したんですね。いやぁ、流石ガルバンさんですよ。世界一の技術者ですね」


ほめまくった。


ガルバンさんもまんざらでもなさそうだった。


そうこうしているとひょっこりガマがやってきた。


まるでこのロープが今日出来上がることを知っていたかのようなタイミングだ。


「どうもどうもお二人さん、おや、それは新しいロープですか?あまり見かけない色、というか表面になにか巻いてあるんですね」


この男は全く、とぼけているが本当は全て知っているんだろう。


「ワイバーンの翼膜が巻いてあるんですよ。ずっと不在にしていた間この方法を教えてもらいに旅に出ていたんです」


「そうでしたかそうでしたか、いやはや、ワイバーンの翼膜と言えば高強度で知られていますからね。さぞ強度の高いロープが出来上がったことでしょう。で、それを販売する予定はおありですか?」


害があるわけじゃないからいいけど、全くこの男は…


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