居ても立っても居られない~ルディ~
本当、アンジーには驚かされてしまうな。
リアリストなのかと思ったら、夢を信じてしまうなんて。
しかもただの夢ではない。予知夢だと思ったと。
つまり近い未来、それが現実になると思ってしまったわけだ。
でも……。
可愛いな。
聡明で、しっかり者なのに。
そんな可愛らしい一面があったなんて。
……参ってしまう。完全に白旗で降参だ。
増々、アンジーのことが好きになってしまった。
「アンジー、現実の僕を見て。僕は、ハウエル男爵令嬢のことを何とも思っていない。僕が大好きなのはアンジー、君だけだよ。君と婚約できて心底嬉しかった。ちゃんと大切にして、幸せにしたいと思っている」
緊張しちゃうな。だけどここで止めるわけにはいかない。
ちゃんと僕の言いたかったことを伝えないと。
「……学校も卒業したし、僕も一人の騎士として君の横に立つに相応しい立場になれたと思う。それに今日、20歳になりお酒も飲めるようになった。アンジーは、僕より先に20歳になっていたけどね、やっと追いつけた」
そう。たった数カ月の違い。それでもアンジーの方が僕より先に18歳になって成人していた。20歳になって、お酒も解禁されていた。いつも僕はそのアンジーの後を、追いかけていたわけだ。
「今日、アンジーと乾杯したら、改めてプロポーズするつもりだった。『僕と結婚してください。結婚式を挙げよう』って。それなのにまさかアンジーから婚約を破棄されるなんて……。まさに青天の霹靂。驚いてしまったよ」
あの時を思い出すと、今も頭が真っ白になりそうだ。
予想外過ぎて、現実のこととは思えなかった。
まさに夢ならさめてほしい!そんな感じだ。
「つまりアンジー、僕は君が大好きだ。そして結婚したいと思っている。だから……婚約破棄するなんて、言わないで」
うん。
これで言い切ったかな。
もう心臓が破裂してしまいそうだ。
騎士団の入団テスト。副団長昇進試験。そのどちらも、ものすごく緊張したが。
今が一番緊張している。
緊張……なのかな。
緊張とも違う気がする。
これはなんというか……アンジーがどんな答えをするか、それを聞くのが怖い……。
「ルディ……」
なんともか細い声が、頭上からしてくる。
驚いて見上げると、アメシストのようなアンジーの瞳は、涙が溢れ、決壊寸前だ。
「アンジー!」
居ても立っても居られないとは、まさに今の状態。
気づけば全力で、木を登っていた。
「……驚いたわ、ルディ。あなた……木登りはあまり得意ではなかったわよね?」
アンジーの瞳は、今度は驚愕で大きく見開かれている。
涙が収まってくれたのは良かったが……。
「そう、だね……。僕は……アンジーと違い、高いところはあまり得意じゃないから」
言っているそばから下を見て、思わず身震いしてしまう。
アンジーはさっきからずっとこの高さにいたのか!?
こ、怖くはないのだろうか……。
……。
下を見るのは……止めよう。
「ア、アンジー。僕はもう長く持たないと思う。だから……へ、返事を良かったら、き、聞かせてもらえる?」
下を見るのを止めたが、もう下りたくなっていた。
「もう、ルディったら、どうして登って来たの?……って私のためよね。ありがとう」
アンジーがニコリと優しい笑顔になる。
それはまるで女神様のようで、その一瞬、僕はここが木の上であることを忘れてしまう。
「ルディ。私ね、子供の頃からずーーーーーっと。あなたのことが大好きだった。世界で一番愛しているわ。それなのに変な予知夢に惑わされて。あなたの気持ちを疑ってしまったのね。……しっかりしている、聡明なんて言ってくれるけど。全然そんなことないわ」
「違うよ、アンジー。君は聡明でしっかりしている。でも可愛い一面もあるっていうことだよ。愛嬌。僕はそんなアンジーを、増々好きになってしまったよ」
これは本当。
いつも凛としている女性が見せる弱さ。
それはもう全力で守りたくなってしまう。
僕の言葉を聞いたアンジーは……。
分かりやすくその顔が赤くなる。
僕はもう、アンジーを抱きしめたい気持ちでいっぱいになってしまう。
「……ありがとう、ルディ。今日は……本当に沢山、私のことを好きだって言ってくれたわね。安心できたわ。もうルディの気持ちを疑ったりしない」
「本当に!?」
「本当よ」
安心した瞬間、力が抜け……。
「ルディ!?」






















































