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第7話 異世界の料理と酒


「お兄ちゃん、食事の用意ができたよ」


「ありがとう、すぐ行くよ」


 しばらくすると晩ご飯の準備ができたようなので、下の階に降りる。すでに晩ご飯を食べているお客さんがちらほらいるが、俺以外の他のお客さんは若い男性が多い。会話を聞いているとやはり冒険者のお客さんが大半だ。さすがに始まりの街と呼ばれるだけあって、宿屋も駆け出し冒険者が多いのだろう。


「ほらよ、ワイルドボアの煮込みだ。熱いから気をつけな。それと別料金のエールだ」


「ありがとうございます」


 料理を持ってきてくれたのはマッチョなおっさんだった。まったく似ていないけれど、アルベラちゃんの父親かもしれないな。


 出てきた料理は熱々の煮込み料理だった。たっぷりの野菜とゴロゴロとした肉の塊が皿の中に転がっている。エールのほうは晩ご飯とは別料金で銅貨5枚、せっかくの異世界だからな、しっかりと酒の味もチェックしなければ!


 まずは煮込み料理をゆっくりと口に運ぶ。じっくりと煮込まれて柔らかくなった肉がホロホロと口の中で溶けていく。ワイルドボアと言っていたからイノシシなのか、それにしては臭みもなくて本当にうまいじゃないか!


 口の中が肉の旨みでいっぱいになったところへ、すかさずエールを流し込む。


「ぷはあ!」


 正直に言ってエールという酒は、ぬるくてそれほどうまくはなかった。しかし、それでも酒は酒だ。朝起きたらいきなり異世界の森の中に転移していて、森の中を歩き回ってゴブリンに出会った。幸いロイヤ達に助けてもらったが、肉体的にも精神的にも疲れ切っていた身体に酒が染み渡る。これがうまくないはずがあろうか、いやない!


「お、兄ちゃんいい飲みっぷりっだな」


「いやあ、このワイルドボアとかいう肉はめっちゃうまいっすよ。とても柔らかくなるまで煮込まれているし、いい仕事してますね!」


「おうよ、この肉はじっくりと臭みを取るのがコツだ。なかなかいけるだろ」


 やはりこのマッチョなおっさんが作った料理らしい。実際のところ、この煮込み料理はなかなかの味だった。あとは酒が冷えていて、もう少し味が濃ければ完璧だったのだが、この値段でこの味なら文句はない。


「今日この街にきたばかりですけれど、みんな優しくて本当にいい街ですよね」


「おっ、今日この街にやって来たのか。この街にはいろんな場所から冒険者志望のやつらが毎日やってくるからな。みんな駆け出し冒険者には優しいんだよ。ま、金のないやつらが多いから、商人とかはそれほど儲からんらしいがな。兄ちゃんも冒険者志望か?」


「……いえ、たぶん冒険者にはならないかな。あんまり戦いとかは得意じゃないんで」


 なにせゴブリン相手にもビビりまくっているからな。それに元の世界では喧嘩なんてしたことがない。


「確かに兄ちゃんはヒョロいから冒険者には向いてねえかもな。ま、自分の力がないことを自覚しているのはいいことだ。自分の力を過信し過ぎた冒険者は、すぐに無茶をして死に急ぐからな」


「………………」


 そうだよな、ここは日本とは違って安全な世界ではない。一瞬の油断で命を落とす。俺だってロイヤ達が助けてくれなかったら死んでいたかもしれない。うん……やっぱり俺には冒険者なんて無理だな。何か冒険者以外のお金の稼ぎ方を探すとしよう。


「そうですね、俺も気をつけます」


「それと今日この街に来たばかりの兄ちゃんにひとつ忠告だ。この街は駆け出し冒険者に優しいやつらが多いが、全員が善人ってわけじゃねえ。逆に駆け出し冒険者をカモにするクソみてえな悪人もいるから気をつけるんだな」


「……なるほど、ご忠告ありがとうございます」


 確かに今日出会った人達は、このマッチョなおっさんを含めて全員良い人そうだが、やはりどんな場所にも悪人はいるんだろうな。俺も気をつけるとしよう。


 晩ご飯を食べ終わったあとは自分の部屋に戻り、いよいよ俺の能力を確認だ。この能力が俺の今後の生活を左右すると言っても過言ではない。頼むからチート能力であってくれよ。




「……なるほどな。一応これで大体は把握できたか」


 俺の能力、これからはアウトドアショップと言うことにするが、なかなか便利な能力のようだ。


 まずお金のチャージについてだが、基本的には出し入れが自由になっている。一度チャージしたお金を元のお金として出すことができる。つまり、使っていないお金をチャージしておけば、財布代わりに使えるということだ。


 この街は治安がいいと聞いているが、それもこの異世界基準だ。強盗やスリなどもいるだろうし、日本の治安とは比べるまでもない。そんな中で、お金を安全な場所に預けておけるということはとてもありがたい。


 ちなみにお金を取り出す場所は俺の周囲だけで、手の中やポケットの中だけということがわかった。机の中とか机自体に重ねながらお金を取り出して、攻撃に使えないかと思ったのだが駄目だった。


 次に試したことは一度買ったものを返品できるかだ。今日購入した折りたたみスプーンを元の銅貨4枚に戻せないかと、スプーンをウインドウに入れたり、返品と念じてみたが、返品や買ったものを収納することはできないようだ。


 そして商品の種類についてだが、アウトドアショップと書いてあるだけあって、元の世界のアウトドアショップに売っているようなキャンプギアが購入できる。しかし問題なのが、買える種類がほとんどないということだ。


 普通アウトドアショップと聞くとテントや寝袋、バーナーにチェアなど、多くのキャンプギアが売っているが、このアウトドアショップにはコップや皿、小さめのスキレットにシェラカップなどと、小さめの物しかない。


 これではとてもではないが、アウトドアショップということなどできない。しかし、その答えはウインドウに書かれているこれだろう。


 【アウトドアショップLV1 次のレベルまで金貨4.96枚】


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

(上をクリックで挿絵やキャラ紹介のある作品ページへ)


― 新着の感想 ―
取引量増えてくと金属貨幣数減少して価格上がっていきそう
[良い点] 銀行代わりになるのは便利だな [一言] 皿やコップは高値で売れるんじゃないか?
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