第270話 リリアとキャンプ
【お知らせ & 注意】
こちらの作品は次話にて完結となります。ここまでお付き合いいただきまして、本当に感謝しております!
書籍版最終巻の第3巻は6/13(金)に発売となりまして、最終話はその翌日の14日に更新予定です。特設ページにて表紙と口絵の一部が公開されておりますので、ぜひ見てみてください∩^ω^∩
また最終話はWEB版とほとんど同じなので、書籍版をご購入予定の方はそちらを先にお読みいただくことをお勧めいたします!
相変わらず後日談が好きなので、書籍版の番外編とSSで少しだけ最終話のあとの未来のアウトドアショップの話を書いております。そちらもお楽しみいただけますと幸いです。
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「今日はいい天気だ。これなら楽しめるんじゃないか?」
「そうだね。いい一日になるといいなあ」
雲ひとつない青空。絶好のキャンプ日和というものだ。
アレフレアの門を出て、リリアと一緒に近くの川へと歩いていく。今日はリリアと一緒に以前バーベキューをした川沿いでキャンプをする。しかも今回は二人きりだ。
新規店舗のオープンから少し経って来週からはまた忙しくなることもあり、今日を逃せばまた時間がなくなってしまうため、なんとかリリアを誘うことに成功した。さすがに 女性と二人きりでキャンプをするのは初めてだ。キャンプデートとでも言っていいのかな?
「テツヤ、もう少し私が持つぞ」
「これくらい大丈夫だよ。それほど遠い距離でもないからね」
今日は収納魔法を使えるランジェさんやフェリーさんがいないため、荷物を自分で持たなければならない。正直なところ、力はリリアの方があるけれど、そこは男の意地ということで、俺の方が多く荷物を持っている。
この辺りに強い魔物とはいないとはいえ、ゴブリンなどの魔物は出るため、リリアはいつもの格好をしている。
「おっ、川に着いたみたいだ。それじゃあテントとチェアを設営しよう。そのあとは夜までは釣りをしてのんびりとすごそうか」
「ああ、そうだな」
目的地である川に着いた。
まずはテント、チェア、テーブルを設営する。そのあとはのんびりと釣りをしながら晩ご飯を作る予定だ。来週からはまた忙しくなることだし、まったりとキャンプをして英気を養うとしよう。
「おおっ、この魚は美味しいな! ふっくらとした魚の身と脂の乗った魚の旨みがたっぷりとスープへ染み出ているぞ! その香草の香りが加わったスープや野菜がいい味を出している」
「うん、思ったよりもうまくできたみたいだ。この料理はアクアパッツァっていうんだ」
確かイタリア語で『アクア』は水、『パッツァ』は暴れるという意味があり、食材を鍋に入れた際に水が油に跳ねる様子から名付けられた料理だ。
ソテーすることによって旨みを引き出した魚に水、ワイン、香辛料などを加えて煮込む料理である。魚の皮や骨ごと煮込むため、とてもいい味が出ている。
「リリアが大きな魚を釣ってくれたおかげだよ。俺の方は全然釣れなかったからなあ……」
「釣りは慣れもいるからな。私も駆け出し冒険者のころは食費を節約するため、よく釣りをしていたものだ」
「なるほど。俺はそんなに釣りの経験はないから助かったよ。小さな魚が釣れただけマシかな」
リリアは何匹か大きな魚を釣ることができたけれど、俺は小さな魚しか釣ることができなかった。釣れないなりにはのんびりと楽しめたからよしとしよう。
「こっちはチーズフォンデュだよ。溶かしたチーズをミルクで割ったんだ。焼いた食材にたっぷりとつけて食べるんだよ。熱いから気を付けてね」
「はふっ、確かに熱いけれど、こちらの料理も美味しいな!」
チーズフォンデュはスイスの料理だ。
熱々のチーズが食材によく絡み、とろっとろのチーズが食材と一緒に口いっぱいに広がっていく。パン、焼いた肉や魚や野菜となんにでもよく合う。
シンプルだけれど、奥深い味わいだ。ちなみにチーズをミルクではなくワインで割ってもいいのだが、リリアはお酒がまったく駄目だからな。今日は大切な話もあるし、俺もお酒は飲まないつもりだ。
「テツヤは本当に料理がうまいのだな」
「ありがとう。でも今日はリリアもたくさん手伝ってくれたからね」
「なるほど、一緒に作ったから、より美味しく感じるのかもしれないな」
いつものご飯は俺一人で作ることが多いけれど、今日はリリアと一緒に料理をした。キャンプではみんなで協力しながら一緒に料理を作った方がより美味しく感じられることは間違いない。
そしていつもの 肉を豪快に焼くような男飯もいいけれど、今日はお洒落でちょっと凝った料理を作ってみた。
たまにはこういった料理も悪くない。